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漂流郵便局に、ハガキを送ってみたらどうかしら?

漂流郵便局

漂流郵便局とは?

香川県、瀬戸内海には粟島(あわしま)という島があります。島の人口は300人程度の小さな島です。ここは、過去、いろいろな物が流れ着いてきた島です。そしてこの島には、漂流郵便局という、少し変わった郵便局があります。「いつかの、どこかの、だれか」に宛てたハガキを送ることができる郵便局です。

この郵便局があるのは、もともと、正式な郵便局(旧粟島郵便局)のあった場所です。年月が経ち、正式な郵便局としての役目は終わりました(1991年閉局)。そうして使われなくなった郵便局の跡地を、現代美術家である久保田沙耶(くぼた・さや)氏が、アート作品として蘇らせました。

故人、未来の子供、自分へのはげまし、愛用していた物への感謝、もう会えなくなってしまった人への思い・・・様々なハガキが日本全国から届けられています(2016年1月時点で1万1,000通以上が届いている)。もともとは、瀬戸内国際芸術祭(2013年10〜11月)の1ヶ月間のみの開局予定だったのが、旧粟島郵便局の局長が続けたいということで、今現在も開局しています。

人間という生き物を構成しているのは「伝えたくても、伝えられなかった感情」なのかもしれません。

漂流郵便局とは、そうした感情を、ハガキに書き出して、送るというだけのことです。ですが、これを出してみようかと思い立ち、ハガキを買ってみて、そこに書く内容を考えて、字を書いて、ポストに投函するという行動のステップを進むごとに、自分の中で何かが変わる実感があります。

以下は、漂流郵便局のトレイラーになります。漂流郵便局に届けられた手紙は、ブリキでできた「漂流私書箱」に保管されます。この「漂流私書箱」は、手で回すことで、波の音が生まれるようにデザインされています。短い動画(1:13)ですので、この波の音だけでも聞いてみてください。

漂流郵便局にハガキを送る場合

漂流郵便局には、ハガキを送ることができます。それは「いつかの、どこかの、だれか」に宛てたもので、内容は自由です。ただし(1)封書はダメでハガキ限定であること(2)著作権は漂流郵便局に譲渡されること(3)ハガキの内容がメディアなどで公開される可能性があること(4)日本郵便株式会社とは全く関係がないこと(5)基本的にハガキの返却には応じてもらえないこと、には注意してください。

その上で、ハガキ(普通ハガキや切手を貼ったハガキ)に好きなことを書いて、以下の書式に従ってハガキを投函すれば、それにて完了です。◯◯◯◯◯様のところには「いつか、どこかの、だれか」を書きます。また、差出人の名前や住所を記入する必要はありません。

送ったハガキは、いつか直接、この漂流郵便局に行って、膨大なハガキの中から見つけることができれば、また自分で読むこともできる・・・かもしれません。その可能性があると思う場合は、差出人の名前、または自分にだけわかるペンネームくらいは、書いておくとよいでしょう。

〒769-1108
香川県三豊市詫間町粟島 1317-2
漂流郵便局留め
◯◯◯◯◯様

現代美術家、久保田沙耶氏について

久保田沙耶氏の特徴は、古い物へのこだわりにあります。こうした古い物や歴史への興味は、土器などを集めていたお母様の影響があると言います。そうして久保田沙耶氏氏は、すでに中学生のときには、自由研究で「古代瓦の研究(ルーツの研究)」をしています。

この中学生の時点ですでに、歴史的に「こうだ」と言われているものと、自分の歴史解釈の「ギャップ」を見出すことに喜びを感じたそうです。漂流郵便局も、使われなくなった郵便局に、全く新しい解釈を付け加えることでできていると考えると、その意味が少しだけわかる気がします。

漂流郵便局は、今年の1月19日〜2月22日の期間、イギリスのロンドンでも分局がオープンされています。なかなか理解がしにくい現代美術が多い中、これだけの共感を集めているのは(それをご本人が望んでいるかどうかは別にして)素晴らしいことだと思います。このイギリスでの開局を受けて、久保田沙耶氏がインタビューを受けている動画があります。やや長い(21:25)ですが、ファンは必見です。

日本でこれから増えていく、古い物とどう向き合うのか

久保田沙耶氏は、インタビューの中で「日本でもこれから増えていく、古い物とどう向き合うか」という視点を語っています。実は、この視点は、高齢者の介護という文脈にも通底します。久保田沙耶氏は「おじいさんとの縁がある」そうなので、これは本当に偶然ではないのかもしれません。

世間では「高齢者の時間とは、死ぬまでの消化試合」くらいに考えられているフシがあります。しかし当事者は、そのような考えは受け入れられず、ずっとモヤモヤしています。

であればこそ、私たちは、介護をする・介護をされるということの中に、こうした考えとは異なる自分なりの解釈を見つけることに誠実であるべきだと思うのです。これは、久保田沙耶氏の考えてきた、古い物に対する世間と自分の解釈の「ギャップ」に可能性を見つけていくという態度と同じです。

漂流郵便局、すぐにハガキを出すことはないかもしれませんが、記憶のどこかに入れておいてください。もしかしたらいつか、自分にとって、とても大切なものになるかもしれません。

漂流郵便局: 届け先のわからない手紙、預かります

◯久保田沙耶氏プロフィール(公式HPより)
アーティスト。1987年、茨城県生まれ。筑波大学芸術専門学群卒業。 現在、東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻油画研究領域在学中。日々の何気ない光景や人との出会いによって生まれる記憶と言葉、それらを組み合わせることで生まれる新しいイメージやかたちを作品の重要な要素としている。焦がしたトレーシングペーパーを何層も重ね合わせた平面作品や、遺物と装飾品を接合させた立体作品、さらには独自の装置を用いたインスタレーションなど、数種類のメディアを使い分け、ときに掛け合わせることで制作を続ける。プロジェクト「漂流郵便局」(瀬戸内国際芸術祭2013)など、グループ展多数参加。

※参考文献
・漂流郵便局公式HP(http://missing-post-office.com/)
・久保田沙耶公式HP(http://sayakubota.com/)
・NHKニュースおはよう日本, 『続々とハガキ届く“漂流郵便局”』, 2014年5月10日
・毎日新聞, 『英に開設 会えない人への思い、書簡で展示 「現地でどんな手紙届くか楽しみ」/香川』, 2016年1月19日

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