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在宅介護を支えている訪問介護・通所介護で、赤字が4割以上という現実。

訪問介護・通所介護が赤字という現実

日本政策金融公庫による訪問介護・通所介護の調査

日本政策金融公庫が、訪問介護・通所介護の事業を行っている事業者の調査結果を発表しています(2016年1月26日)。アンケートは2015年10月に実施され、回収できたサンプル数は2,886社(回収率23.4%)でした。

訪問介護・通所介護は、在宅介護を進める上で、絶対に必要な介護サービスです。これに対して、介護施設は、要介護の度合いが高くなった要介護者にとってなくてはならないものです。

ここで、介護業界では有名な話があります。それは「訪問介護・通所介護は儲からないが、介護施設であれば、なんとか経営できる」というものです。介護施設のほうが、介護サービスの提供に対する対価(点数でほぼ決まっている)が大きいことが、この原因です。

今回の、日本政策金融公庫による調査では、この実態が明らかにされました。訪問介護・通所介護では、実に、全体の4割にも当たる事業者が赤字だったのです。昨年は、介護事業者の倒産・廃業・休業が過去最高となってしまいましたが、今後も、特に訪問介護・通所介護の領域で、倒産が増えていくことが予想されます。

在宅介護を進めているのに、それを支える事業者が赤字という現実

日本では、在宅介護が進められています。実際に、在宅で介護されている要介護者の数は約374万人です。これに対して、介護施設で介護されている要介護者の数は約90万人です。在宅介護のほうが、ずっと多くの人に利用されているのです。

今後も止まらない高齢化によって、要介護者の数は増えていきます。このとき、在宅介護される高齢者のほうが、介護施設で介護される高齢者よりも、ずっと増えていくと考えられます。

こうした状況から考えれば明らかなとおり、日本では、在宅介護の介護サービスを提供する事業者が増えていかないとならないのです。それにも関わらず、こうした事業者は、現状ですでに4割以上が赤字という現実は、恐ろしい未来の到来を予感させます。以下は、KAIGO LAB による創作文です。

ある日、仕事中にも関わらず、遠く離れた実家にいる母親から電話がかかってきました。父親が転倒して骨折し、入院したという連絡でした。3ヶ月の入院を終えて、有給をとって退院の手伝いをしに実家に帰りました。そこで、母親から「介護が必要」ということを言われます。自分としては、東京での生活があり、実家に帰ってくることはできません。

母親による、父親の介護がはじまりました。そして1年も経たないうちに、今度は母親が脳梗塞で入院することになりました。母が入院している間の父親の介護は、ヘルパーが、契約範囲を超えてまでサポートをしてくれたおかげで、なんとか乗り切れました。

しかし、今後は、半身不随となった母親にも介護が必要です。さすがに2人の介護を、このヘルパーにだけお願いすることは不可能でしょう。とにかく、母親が退院に合わせて、また有給をとって実家に帰りました。その場で、ヘルパーに会いました。まず、色々としてくれていることへの感謝を伝えました。そして、今後のことを相談したいと申し出ました。

すると、そのヘルパーは、申し訳なさそうに、自分の所属する会社が近く倒産することを伝えてきました。ヘルパーに聞いたところ、実家のエリアをカバーしている訪問介護は、他にないとのことでした。そのヘルパーも、次の仕事のために、この地域を離れるとのことでした。

ケアマネに相談してみたところ、近隣の介護施設はどこも満員とのことでした。仮に、運良く2人で同じ介護施設に入所できたとしても、2人分の入所費用は、月額で50万円程度になるといいます。親の財産も厳しく、自分にもそんなお金はありません。今の仕事を辞めて実家に帰ってきても、このあたりには、就職先もありません。

「介護離職ゼロ」は、本当に可能なのか?

先の創作文のようなケースは、決して、特殊な事例ではありません。実際にこうした状態になって、東京に両親を呼び寄せた結果として、かえって大変なことになっている介護者も多いのです。

今後はさらに、ヘルパーのように在宅介護を支えてくれている存在が足りなくなっていく可能性が高いのです。そうなると、この創作文のような話は、もっと当たり前に聞くことになっていくでしょう。

ただでさえ、介護業界は人材不足です。そうした中、介護業界の一助となろうという志をもって事業を起こしても、在宅介護の分野(訪問介護・通所介護)では儲からないのです。儲からないということは、なんとか黒字の事業者であっても、新たに人を採用することはできません。

これから、要介護者の数は劇的に増えていきます。しかし、在宅介護を支えてくれる事業者は、減ることはあっても、増えることはないでしょう。そうなると、在宅介護をすること自体が、現在の職を辞めないと不可能なものになっていきます。このままでは、どう考えても、日本の介護はおかしくなります。

※参考文献
・日本政策金融公庫, 『訪問・通所介護事業者の4割超が赤字』, 2016年1月26日

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