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介護事業者の書類仕事を半分に!「善意」が介護現場の邪魔をする(ニュースを考える)

無駄な書類仕事

日本は無駄な書類仕事の多い国として有名です。そうした中、介護現場には、なんの役に立つのかわからないアンケート依頼などが殺到しています。特にイラっとさせられるのは、すでに過去の調査で結果が分かっているようなことを質問してくるケースです。介護現場に限らず、非生産的な書類仕事は、無意味というよりも、害悪です。ともに、それを減らす努力をしましょう。

介護現場の疲弊を減らすために、すぐにでもできること

昨年は、介護事業者の倒産件数が過去最多となった年でした。なんとか生き残っている介護事業者も、制度によって抑えられている売上に対して、人材確保のためのコスト増加(採用費、人件費など)に苦しんでいます。売上がほぼ決まっていて、コストが上がってきているのですから、経営危機になるのは当たり前です。

2025年には、約38万人の介護職が足りなくなると言います。にも関わらず、介護事業者の倒産が増えている現実は、どう考えてもまずいことです。抜本的には、増税や公務員の総人件費抑制などによって財源を確保し、介護職の待遇改善をすることが必要です。とはいえ、こうした抜本的な対策には時間がかかるのが普通です。その時間を待っていられない介護事業者も多いことから「すぐにやれること」についても議論して、進めないとなりません。

そうした背景があって、厚生労働省は、介護事業者の業務負担(業務コスト)を軽減するための施策を考える有識者会議を開きました(2016年1月12日)。この会議では、介護事業者の書類仕事(業務文書作成・提出)を半分に減らすことや、介護ロボットを活用した生産性向上が議題にあがり、この4月には安倍政権による「1億総活躍社会」の計画に反映させることになりました。

「善意」が介護現場の邪魔をしている

実際に現場を見ないとなかなか実感できないのですが、介護事業者は、本当に少ない人数で、多くの要介護者の相手をしています。イメージとしては、ドラマに出てくる救急病院の現場のような、戦場と言っていい忙しさです(もちろん、事業者によって差はあります)。

そうした忙しい状況にも関わらず、産官学からまんべんなく、ものすごい数のアンケート依頼が入ってきます。しかも、提出を催促する電話までかかってきたりもします。ちょっと大げさに言えば、現場にいる介護職の人々は「いい加減にしてくれ!」と感じています。

ただでさえ、少ない人数で仕事をしています。そもそも、要介護者の状況報告など、提出しなければならない書類の多い仕事です。その上に、似たようなアンケート依頼が多数入ってくるのです。ここは強調したいのですが、アンケート依頼の内容は、どれも本当によく似ています。

産官学の側からすれば、日本の介護をよくしたいという「善意」でのアンケート依頼なのでしょう。しかし、介護職の仕事は、アンケートに答えることではなくて、目の前にいる要介護者の自立を少しでも助けることです。人手不足でそのための時間もままならないのに、こうしたアンケートは余計な負担でしかありません。

アンケートの依頼をする人々にお願いしたいこと

まず、既存の文献(先行文献)をきちんと調査した上で、過去に行われていない調査に絞ってアンケートを作成してください。介護現場に関する「負担に感じること」「やりがいに感じること」「困っていること」といった調査は、山ほど結果が報告されています。それを読んで、自分の行おうとしているアンケートに新規性があるかどうか評価してください。

次に、介護事業者の都合を聞いた上で、忙しくないときを狙って、アンケートを依頼してください。介護職がアンケートに答えるための時間は、本来は、要介護者(およびその家族)のための時間です。その時間を奪っているという自覚をもった上で「それでもなお、このアンケートには新規性がある」というときに、アンケートを依頼してください。

最後に、たとえそれが「善意」の行動であるとしても、その結果が「悪」になることは多々あるという事実を理解してください。介護職の貴重な時間を奪うのですから、本来であれば、こうしたアンケートは、お金を支払って依頼すべきものです。市場調査をする会社などは、アンケートに答えてもらうために、なんらかの対価を支払うことはよくあることです。

介護現場だけでなく、日本中の書類仕事を減らそう

無駄な書類仕事は、介護現場だけでなく、日本全体の生産性を落とします。無意味というよりも、害悪です。きちんと文献を調べれば、すでに結果がわかっているようなことを、再度調べたり、新たに図表にしたりする仕事は、本当に無駄で、意味がありません。

それが、自分一人で完結することであれば、ただ自分の社会的な評価が下がるだけのことですから、自己責任です。ただ、そうした無知からくる行為に他者を巻き込み、他者の時間を無駄にするような場合は、その存在が社会悪になってしまいます。

その無駄なコストがなければ、介護現場においては、もっと多くの介護職を雇えるかもしれません。介護職の待遇も改善できるかもしれません。社会的に見たら、失業者を減らせたり、日本の国力を向上させることにもつながります。

まとめ

・厚生労働省も、介護現場における書類仕事を半分にするという目標を立てている
・たとえ「善意」からでも、介護現場へのアンケート依頼はよく考えてからにすべき
・特に、先行文献を調べないで、すでにある調査と似たようなものは意味がない
・介護現場に限らず、日本全体の無駄な書類仕事を減らすべき
・自分一人が非生産的になるのは自己責任だが、それに他者を巻き込むと害悪になる

※参考文献
・時事通信, 『介護事業所の業務文書、半減へ=負担軽減で人材確保-厚労省』, 2016年1月12日
 

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