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生活保護の受給世帯数が過去最高に・・・ダメなことなのか?(マクロな視点から)

生活保護の受給世帯数が過去最高に

生活保護の受給世帯数が、過去最高を更新しました。この事実だけを聞くと、悪いニュースのように思えます。しかしこれは、究極的には失業率100%の未来に向かう「旅の途中」として見ることもできます(何年かかるかはわかりませんが)。生活保護の受給は、高齢者世帯が全体のおよそ半数です。ここが、これからも大きくなっていくことは間違いありません。介護という文脈からも、これは大きな問題なのですが、同時に、抜本的な解決策は(おそらくは)ありません。

生活保護が増えていくという流れについて

駅の改札では、切符を切る駅員が消えて自動改札になりました。銀行の窓口はATMになり、本屋の本探しは書店員ではなくてタッチパネルのナビゲーションに従います。

ITの進歩は、費用対効果という効率化を求める人類社会に、大きな前進を与える一方で、人間の仕事を奪うという性格をもっています。アベノミクスと呼ばれる好景気の中、生活保護の受給世帯が増えていき、とうとう、過去最多を更新というニュースが入ってきました。以下、TBS NEWSの報道(2016年1月6日)より引用します。

全国で生活保護を受けている世帯が、去年10月の時点で163万世帯を超え、過去最多を更新したことがわかりました。(中略)母子世帯や現役世代では減少傾向にありますが、65歳以上の「高齢者世帯」で生活保護を受けているケースが増加していて、80万2492世帯と全体のおよそ半数を占めています。厚労省は、「貯蓄や年金だけでは暮らせない一人暮らしの高齢者が増えている」と分析しています。

母子家庭や現役世代で、生活保護を受給世帯が減っているのは、単に、その年代の人口が減っているということでしょう。これから、生活保護を受けているのは、実質的に高齢者の世帯という時代になっていきます。

人間が食べるためだけの仕事をしなくてよい社会への転換点

一つの視点として理解いただきたいのですが、これは、究極的には、人間が食べるためだけの仕事をしなくてよくなる社会に向かっているということを示していると読むこともできます。ITが、どんどん人間でなくてもできる仕事を奪うということは、ある意味で、よいことです。人間が嫌々やる仕事というのは、存在しないほうがよいからです。

ただ、そうはいっても現代社会は、そうした理想的な未来への「旅の途中」にあります。本質的には、失業率100%というのは、悪いものではないはずです。人間が、自分がやりたいことだけをやって、それで誰もが生きて行けるなら、素晴らしいでしょう。

問題は、失業率が中途半端に高い時代を、どのようにクリアしていくかということです。そして、そうした苦しい時代はどれくらいの期間続くのかということです。

失業者が増え、生活保護が増えていくとき、それらは、本当は失業率100%の未来につながってはいるのですが、スナップショットとしてみると、悪いことのように見えてしまいます。それに、マクロにはともかく、ミクロには、個人的に失業したり、生活保護を受けざるをえなかったりすることは、悪いことです。

大転換の時代だからこその難しさ

これは社会的な大転換を示している可能性があります。しかし、ただでさえ介護でお金のかかる高齢者が、さらに生活保護を受けているとなると、現役世代の国民感情としては、沸点に到達してしまうのは目に見えています。高齢者からしても、申し訳ないと感じてしまうことでしょう。

繰り返しになりますが、本質的には、生まれてから死ぬまで、最低限のサービスは、誰もが無料で受けられるという状態に向かう「旅の途中」だと見ることが可能です。実際に北欧では「ベーシックインカム」という名前で、すでにこの実験がなされ始めています。

ただ、登山というのは、頂上においてのみ幸福があるのであって、その途中は苦しみの連続です。

私たちは、マクロな視点で見れば、正しい方向に向かっているように思います。ただ、その正しさというのは、頂上にいかないと理解できないものであり、そこまでの道のりは、ただただ苦しいのでしょう。とにかく、個人にとっては、厳しい時代であることは間違いなさそうです。

まとめ

・生活保護の受給世帯が過去最高になったが、これからも増える
・「食べるために働かなくてよい社会」への大転換である可能性がある
・「旅の終着点」においては良いことも「旅の途中」は苦しい
・大転換の時代は、スナップショットだけを見ていては間違う
・とはいうものの、個人レベルでは厳しい時代である

※参考文献
・TBS NEWS, 『生活保護受けている世帯、過去最多を更新』, 2016年1月6日
 

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