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高齢者を説得することが難しい本当の理由(人間の学習について)

高齢者の説得

介護においては、たとえば特定の介護サービスを受けることを勧めたりするなど、高齢者を説得しなければならない場面が多くあります。しかし、高齢者の説得は簡単ではないケースがほとんどでしょう。今回は、その背景について考えてみました。

高齢者は、豊富な知識と経験から、政治力を持っているという事実

高齢者は、現役世代よりも豊富な知識と経験を持っています。知識の中には、古くなっているものも少なくないものの、それらは一般に信じられている以上に、まだまだ有効なものも多いものです。

特に、人間関係の力学、すなわち政治に関する知識と経験は、あなどれません。政治というと、どうしても悪い意味にとらえられてしまうのは、日本の悲しいところです。ただ、個人的にそれが好きか嫌いかに関わらず、人間は政治的な生き物でもあります。

政治とは、すなわち、自分以外の他人を、自分に都合のよいように動かすための知恵です。別の言葉で言えば、他人の判断に影響力を持つということが、政治力を持つということでもあります。

たとえば、仲間と一緒に旅行にいくとしましょう。その旅行の行き先を決めるときは、それぞれに意見を聞くと思います。結果として決まる行き先は、しかし、必ずしも多数決の結果ではないでしょう。そこには他人を説得するプロセスがあり、それに長けている人が望む行き先となることも多いと思います。

そこに複数の人間がいて、それぞれに影響を及ぼすような決断が求められるとき、その結果には、政治力がからんでくるということです。長く生きるということは、こうした政治力の使い方や高め方について、経験を通して学んでいくということでもあります。

人間の行動は、自分の中に構築された「理論」によっている

ここで、一つ前提として理解しておくべきことがあります。それは、人間は、何かの行動をするとき、なんらかの「理論」を前提としているということです。行動を決めるときに、いちいち、その可否を吟味しないということでもあります。

もう少し砕いていうと、私たちは、日々自分の周囲で起こる様々な物事について「こういうときは、こうする」という「理論」に従って行動を決めています。たとえば「赤信号なら止まる」という「理論」は、多くの人が共有しているものでしょう。

人間が成長していくということは「こういうときは、こうすべき」という「理論」を、どれだけたくさん身につけているかということでもあります。また、こうした「理論」を修正することで、より優れたものにアップグレードすることもあるでしょう(実はこれが「学習」の定義だったりします)。

そして、政治力は、人生経験によって積み上げてきた「理論」の量と質に依存しています。「理論」の量と質が高ければ、それだけ、正しい判断ができる可能性があるということです。そうした人の言うことに従ったほうが、合理的な判断になる可能性が高いということでもあります。

高齢者は「理論」を簡単には変更しない

高齢者を説得するということは、高齢者の行動を変えるということでしょう。つまりこれは、高齢者が長年積み上げてきた「理論」の一部を修正してもらうということです。しかし、高齢者には人生の先輩としてのプライドもありますから、この修正は簡単ではありません。

この修正を実現するには、まず、高齢者がどうして今の「理論」に行き着いたのかという経験を聞き出す必要があります。そこにはそれなりに合理的な判断が必ずあります。その経験を十分にリスペクト(=敬意を払うこと)した上で、政治的に、その高齢者の「理論」に影響力を及ぼすというのが、おそらくは最も成功しやすい方法です。

このとき、政治力を発揮するのは、なにも自分自身でなくても構いません。むしろ、その高齢者に対して影響力を与えられる人がベストです。そうした政治力を持っている人が誰なのかを特定することのほうが、直接説得をするよりもずっと早いこともあります。

本当に難しいのは、もはやその高齢者が影響を受けるような政治力を持った人がいない場合です。この場合は、ロジックによる直接対決しか方法がないため、説得の難易度はぐっと高まります。この状況にある場合は、周囲の助けも借りて、堅固なロジックを作り上げる必要があるでしょう。

まとめ

・高齢者は、豊富な知識と経験から、政治力を持っている
・政治力とは、他人を自分の都合のよい方向に動かす技術
・政治力は「こういうときは、こうする」という「理論」の蓄積に依存
・高齢者の説得には「理論」の修正(=学習)を起こす必要がある
・このためには、より高い政治力を持っている人を探し出すのが有効
 

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