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介護事業者が消えていく・・・倒産、廃業、休業(ニュースを考える)

介護事業者の倒産

倒産件数だけ見ても過去最多

介護に関わっていれば、一般に、介護サービスはまだまだ足りていないというのが実感だと思います。にもかかわらず、今年は、介護事業者は、過去最多の倒産件数となってしまいました。以下、NHKの報道(2015年12月27日)です。

ことしに入ってから先月末までに倒産した全国の介護事業者は66件で、年間の倒産件数としてはこれまでで最も多くなったことが分かりました。調査を行った信用調査会社は「ことし4月の介護報酬の引き下げや労働力不足による人件費の上昇が影響しているとみられる」と分析しています。(中略)

事業別で倒産が最も多かったのがデイサービスやショートステイを提供する事業者で、去年の同じ時期の2倍にあたる26件に上っています。従業員の数別では、4人以下の事業者が全体のおよそ6割を占めるなど小規模な事業者の倒産が目立つということです。

倒産の裏で、休業や廃業も多数出ている

倒産の数字だけ見ていると、なんとなく大したことがないようにも感じられます。報道によれば、多くは小型の事業者なので、全体への影響も小さく思えるかもしれません。しかし、倒産だけでなく、休業や廃業まで含めると、この問題はもっと深刻に見えます。毎日新聞の報道(2015年12月29日)は、以下のような報道を行っています。

人手不足や経営難で施設を閉じる通所介護事業者が相次いでいる。4月からの介護報酬引き下げの影響もあり、今年度、施設の廃止や休止を届け出た通所介護事業所は九州・沖縄・山口で288件(11月まで)に上った。安倍晋三政権は「1億総活躍社会」を旗印に介護サービス拡充を掲げるが、事業者は「絵に描いた餅」と懐疑的だ。

根本原因は、採用費と人件費の高騰にある

先の介護報酬の改定では、実は、通所介護事業者にとって有利な加算もありました(認知症・要介護度が中程度の要介護者を受け入れた場合)。ですから、国としては、現在広く報道されているように多くの介護事業者が消えている現実は、想定外だったと思います。

介護報酬の加算があったにも関わらず、倒産、廃業、休業が増えてしまった根本原因は(1)人材の採用費の高騰と(2)離職防止のための人件費の高騰が大きくなってしまっていることにあると考えられます。

介護事業者は、人材を採用するために、ハローワークだけでなく、採用のための広告宣伝費や、紹介会社への採用報酬などを支払っています。ただでさえ足りない人材を、介護業界内で取り合っているので、こうした採用費が高騰してきています。

仮に運良く人材を採用できたとしても、待遇が悪いとどんどん人材は辞めてしまいます。人材を維持するためにも、介護事業の経営者は、無理をしてでも給与(人件費)を高めに設定しないとなりません。結果として、人件費が高騰してしまっています。

ただ、人件費が高騰しているとはいえ、介護業界の待遇は、全産業の平均と比較して、年収ベースで100万円以上低いような状態です。こうして、人件費の高騰が起こることは、需給バランスをめぐる、普通の経済原理ではあります。

介護職の人件費分まで含めた介護報酬の改定が必要

売り上げ部分は、介護報酬によって決まっています。これに対して、コスト部分は採用費も人件費も高騰してきています。これが、介護事業者が倒産、廃業、休業となっている理由です。

ということは、介護報酬部分(特に、介護職の人件費部分への手当て)を見直さないと、日本の介護はダメになってしまうというのが結論です。このための財源としては、増税、公務員の人件費抑制、介護保険料の増加、自己負担分の増加でしか、まかなえません。

ただ、日本の場合は、おそらく、もっと大変なことになってからでないと、こうした抜本的な動きはできないでしょう。そこが、本当に残念なところです。倒産も含めて、もっと多くの悲惨な話が出てこないと、動けないということですから・・・

※参考文献
・毎日新聞, 『通所介護閉鎖急増 九州・沖縄・山口、廃休止届け出1.4倍 報酬引き下げが影響』, 2015年12月29日
・NHK NEWSWEB, 『介護事業者の倒産 過去最多に』, 2015年12月27日
 

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