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認知症が引き起こす行動・心理症状(BPSD)について(4つの大分類)

認知症のBPSD

認知症が引き起こす行動・心理症状(BPSD)

これまでに何度も取り上げてきましたが、認知症は、記憶の障害をともなう判断力の低下など、多くの課題を引き起こすものです。特に、在宅介護において認知症があると、介護者(家族)の対応は、本当に大変になります。

こうした認知症が原因(と考えられる)行動上の障害のことを、国際的には「BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」と言います。日本では「認知症の行動・心理症状」と翻訳されることが多いようです。

「BPSD」の現れかたは、認知症の高齢者ごとに異なり、なかなか一般的な対応が生まれてこないことが、とても難しい問題として認識されています。多くのひとが「こうすればいい!」と発信しますが、それが、すべての認知症に効果があるというケースはなく、これもまた混乱の原因となっています。

対処法はともかくとして、まずは「BPSD」を分類することから、認知症の理解を深めてみたいです。研究者が、これを大きく4つに分類している論考(高橋, 2011年)があるので、それを参考に、以下まとめてみます。

1. 易刺激性(いしげきせい);ちょっとしたことで不機嫌になるなど

ちょっとしたこと(刺激)で、不機嫌になるような「BPSD」です。これは、アルツハイマー病の初期や、認知症にはいたっていない軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)にもみられます。本人が、物忘れのひどさなどを自覚し、将来を悲観したり、不安になったりして、そうした焦りから、ちょっとしたことで怒るような状態になるようです。ここで、物忘れを指摘されたりすると、易刺激性から病的な焦りや興奮へと発展してしまいます。さらに悪くなると、身体に触れられることを嫌がったりして、興奮から暴言(大声で叫ぶ、ののしる)、暴力(叩く、蹴る)、拒絶、介護への抵抗までいたってしまいます。

2. 精神病症状の要素の関わる症状;妄想、幻覚、夜間行動異常など

自分に異常があるという認識がない(病識がない)状態で、矛盾や異常性に気がつくことなく、行動してしまうという「BPSD」です。アルツハイマー病の場合、記憶障害や、時間感覚の誤認などを背景にしていることが多いようです。徘徊などにつながることも多いようです。特に、自分の大事にしているものが何者かに盗られたという「もの盗られ妄想」は、よく見られるものです。病状が進行すると、テレビと現実の区別がつかなかったり、配偶者などが他人と入れかわっているように感じられたりと、様々な妄想が出現します。パーキンソン病の場合、本来は、身体の緊張が低下している睡眠時に、こうした緊張の抑制が起こらず、夢の精神活動が行動に表出されてしまい、寝言、叫び声をあげる、激しく体を動かす、壁を殴る蹴るといった行動が見られます。

3. 感情障害が関わる症状;不安、同じ質問の繰り返し、うつ病など

アルツハイマー病における不安は、自らの記憶障害を自覚するとすぐに出現します。軽度認知障害(MCI)の段階でも、約15%で不安が認められているそうです。記憶の障害によって、過去と現在、現在と未来のつながりが失われます。また、自分自信の言葉に矛盾を感じ、自信を失い、そして不安になり、なんども同じ質問を繰り返すといった状態になります。進行すると、不安感から、介護者(家族)から一時も離れようとしなくなる例もあります。将来への不安、焦りから、うつ病にいたってしまうこともあります。ただ、病気が進行すると、自分が認知症であるという認識も消えるため、うつ病も減少していくそうです。

4. アパシーが関わる症状;感情がなくなる、食行動異常など

アパシーとは、感情が消えてしまったように見えることです。興味や意欲が極端に低下した状態です。アルツハイマー病では、初期段階からすでによく見られる症状とされます。趣味や社会活動への関心が薄れるだけでなく、自分の周囲に対しても興味を失います。高齢者においては、アパシーとうつ病は、その区別が難しいことがあります。現実には、この両方が混在していることも多いようです。これが、食行動異常として、食べられないものを食べる異食や、異常な量を食べる過食、逆に食べないという拒食といったことにつながることもあります。

※参考文献
・高橋智, 『認知症の BPSD』, 日本老年医学会雑誌48巻3号(2011年)
 

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