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医療費・介護費の抑制が、女性を痛めつけている。

看護師

若手の看護師が過労死している現実から

日本の医療費・介護費は、高騰し続けています。これを受けて、厚生労働省は、診療報酬や介護報酬の改定を行ってきています。ご存知のとおり、こうした改定の多くは、医療や介護の事業を担う主体の経営を圧迫する方向になっています。

結果として、医療や介護の業界におけるプロの待遇が悪くなるというだけではありません。本来は、もっと人数が必要な仕事が、人件費抑制のために、少ない人数で行われているという事実があります。人数の確保がある場合でも、経験の少ない、若手の人材(人件費が安い)に採用の人気が集まります。

ここから、忙しいだけでなくて、難易度の高い仕事を、経験の少ない若手人材が担っている姿が見えてきます。経験が少ないと、同じ仕事であっても時間がかかるし、また、仕事から受けるストレスも多くなるでしょう。

これを裏付けるように、若手の看護師が2001年、2007年と連続して過労死(認定はいずれも2008年)する事件が起きています。この事件を受けて、日本看護協会が行った調査結果では、交代制勤務における23人に1人が過労死危険レベル(月60時間を越える時間外勤務)になっていることがわかりました。

さらに、日本医療労働連合組合連合会(医労連)の調査結果(2013年)では、看護職員の7割以上が疲労を慢性的に感じていることもわかりました。この結果は、1988年の調査開始以来、最も悪い数字だそうです。

看護師の流産に関する調査結果から

まず、日本においては、看護師および看護師志望者の約90%が女性です。介護業界で働くのも、現場に近いところでは女性の割合(ヘルパーの約90%、介護施設職員の約75%)が高くなります。

働く女性の職場環境は、考えたくないですが、流産の数字に表れます。各種調査によれば、一般の女性労働者の切迫流産率が17.2%(2007年調査)であるのに対し、看護師の看護師の切迫流産率が34.3%(2010年調査)と、ほぼ倍の数字になっています。比較年次が違うとはいえ、この数値はおかしいと感じられます。

医療費・介護費の抑制は、女性を痛めつけている

ここまで述べてきたことから明らかなとおり、この問題を単純化すると「医療費・介護費の抑制は、女性を痛めつけている」と結論づけられます。

もちろん、男性への影響がないと言いたいのではありません。そうではなくて、本来は社会全体に平等に行き渡るべき「しわ寄せ」が、看護師と介護現場の女性に大きく偏って分配されてしまっているところが問題なのです。

日本における看護師と介護現場は、それと意図していないにせよ。女性側に大きく「ジェンダー化」されている職場です。未だに堅固な男性社会を守る日本の中で、こうした女性側に「ジェンダー化」された職場に「しわ寄せ」が行っているという事実は、広く認められないとなりません。

にもかかわらず、日本はこれから、要介護者が爆発的に増える「2025年問題」を迎えます。これだけの現状から、さらに今後も状態が悪化していく可能性が高いのです。

抜本的な改革がない限り、増税、公務員の総人件費抑制、医療・介護の質の低下は、避けられないでしょう。

※参考文献
・佐藤典子, 『2025年問題と看護師の過労・離職の現状 ―ジェンダー化された職業に関する一考察―』, 千葉経済論叢, 第52号
 

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