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アメリカの介護と、女性の社会進出

アメリカの介護と女性の社会進出

アメリカの介護に対する考え方

まず、日本とアメリカの介護における最も大きな違いは「高齢者の介護はその家族が責任をもつべきという規範(=家族規範)」のあるなしです。ご存知のとおり、日本には堅固な「家族規範」があります。

これに対して、アメリカは「家族規範」がゼロとは言えないものの、それを前提としない点に違いがあります。そうしたわけで、アメリカでは(州によって大きな違いもあるものの)介護施設の充実が第一となっているようです。

しかし、アメリカでも介護の財源問題が発生しており、在宅介護が進められるというケースが増えているのは、日本に似ています。ただ、アメリカには「家族規範」がないために、在宅介護自体は「好ましい状態ではない」という認識があります。

ここから、アメリカでは、在宅介護をしている家族のために「レスパイト(介護する人の負担を軽減するサービス)」が法制化されたり、そこへの財源がついたりするあたりは、日本とは大きく異なっています。

家族による介護労働の価値がわかっている

以上のような背景から、アメリカの場合、家族による介護労働は「本来であれば国や民間が担うべきもの」という位置付けで、その労働価値を算出しています。アメリカにおいて家族が無償で行っている介護を金銭に換算すると、年間で1,960億ドル(約23兆円相当)にもなるそうです。

この金額が、介護施設の経済規模(830億ドル=約10兆円)や在宅介護サービスの経済規模(320億ドル=約3兆円)を上回ってしまっていることが課題とされています。

アメリカにおいて、このように、家族による無償の介護が問題とされるのは、女性の高い就業率(女性の7割がフルタイムで働いている)があります。こうした女性が、仕事をあきらめて介護をする場合、それによって失われる収入は、昇進機会なども考慮すすると、生涯を通して659,000ドル(約7,900万円)にもなります。

アメリカがこうした試算を行っている背景

無償での介護を引き受けることになりやすいのは、アメリカでも女性のようです。アメリカは、こうした女性にも、無償の介護ではなくて、賃金を得る労働に従事してもらいたいと考えています。

ご存知のとおり、アメリカの社会福祉には問題が多く、そのまま日本の手本とすることはできません。ただ、介護問題とは、その一面において、女性の社会進出に直結するものでもあります。アメリカのほうが、女性の社会進出について真剣であることは、以下のグラフからも明らかだと思われます。

男女の賃金格差(日米比較)

アメリカでは、女性の活躍が、アメリカの国力にとって重要だと考えられている事実があるわけです。そのために、介護のプロの募集やトレーニングにとどまらず、家族による「レスパイト」活用が進むように国家予算が確保されているというのは、先述のとおりです。

日本との違いとして重要なポイントは、アメリカでは、介護サービスが、こうした介護サービスの利用を促進するための施策がセットになっていることです。ただサービスを充実させるのではなく、実際にそれが活用されて、女性が社会に出ていける環境を作ろうとしている点は注目に値します。

日本は、アメリカになにを学ぶべきか

もちろん例外も多くあるものの「家族規範」とは、事実上、女性の社会進出とは真逆にある発想です。繰り返しになりますが、アメリカの社会福祉には問題も多く、手本とすべきところは、決して多くないとは思います。

しかし、女性の社会進出や機会平等という点では、日本はアメリカに大きく遅れているという事実は認めないとなりません。そして、日本における介護問題とは、家族の介護をしている人の約7割が女性である(2011年の厚生労働省調査)ことを考えると、実は女性の活躍に関わる問題なのです。

先のグラフを見れば明らかですが、日本は、女性の社会進出については、全く成功していません。その上に、介護に「家族規範」を求めるとするならば、今後も日本では女性の社会進出は、どうしても掛け声だけのものになるでしょう。

※参考文献
・平山亮, 『アメリカの家族介護者支援:現状と課題』, 立命館大学(人間科学研究所)
・The Huffington Post, 『女性の年収、低すぎ? 日本はこの30年、男女の格差が埋まっていない【データ】』, 2014年5月7日
・小山泰代, 『女性から見た家族介護の実態と介護負担』, 人口問題研究(J.ofPopulationProblems)68-1(2012.3)pp.54~69
 

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