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勤続1年未満での離職が40%という介護業界(ザルで水をすくっているようなもの)

勤続1年未満での離職が40%という介護業界(ザルで水をすくっているようなもの)

介護業界の人手不足は深刻

介護業界の人手不足は深刻です。介護業界全体として、他の業界よりも厳しい状況です。特に東京都と愛知県では、有効求人倍率が5倍を超えていたりもします。介護業界は赤字経営が多いのですが、人材の採用費用もどんどん高騰しています。

こうした人手不足は、高齢者が増える中、これから、もっと顕在化していきます。厚労省の予測では、2025年には、日本全国で34〜38万人が不足すると考えられています。2035年くらいまでは、同じペースで要介護者は増え続けるので、こうした人手不足は、慢性化することになります。

介護業界で人手不足が発生するということは、介護をお願いできるプロがいないという状況に直結しています。そうなると、親の介護を子供が直接行う必要性が高まり、介護離職も増えてしまうでしょう。そうして介護離職が増えると、日本全体の生産性が悪化し、社会福祉が維持できなくなります。

ザルで水をすくっているようなもの

そんな介護業界は、なんとか人材を確保しても、その40%が1年未満で離職するという状況になっています。まさに、ザルで水をすくっているようなもので、人手不足は、もはや危機的な状況です。

こうした離職率の高さは、介護業界における経営を圧迫します。本来であれば、職員の給与として使いたいお金が、採用費に消えてしまうからです。介護業界の待遇の悪さは、そうして、なかなか改善しない負のループに入ってしまっているわけです。

介護業界の待遇は、平均として月収26.7万円(平均年齢41.1歳,勤続平均6.3年)です。これに対して、全産業平均は月収40.8万円(平均年齢42.2歳,勤続平均11.9年)です。この待遇では、人手不足の改善は、ほとんど不可能です。

異業種からの採用が前提となるのに・・・

介護業界の人手不足は、介護を必要とする人が増えているからこそ、顕在化しています。このため、介護業界の人材不足は、介護業界の内側での転職によって確保しても改善されません。介護とは関係のない、他の業界からの転職によってのみ、改善することが可能です。

しかし、介護業界の待遇は、全産業と比較しても最下位という調査結果があります。わざわざ、待遇を下げてまで、介護業界で働きたいという人が、数十万人という規模で存在しない限り、この問題は改善しないのです。

どう考えても、介護業界の待遇改善が必要であり、急務です。これを、生産性の向上によって実現しようとすることは、必要なことです。しかしまずは、生産性の向上の前に、待遇を改善しないと、ザルで水をすくっている状況が続いてしまいます。

生産性の向上では問題が解決しない理由

例えば、介護人材1人あたりで介護できる要介護者の数が2倍になったとします。そうなれば、単純に考えれば、介護業界の待遇は2倍になります。2倍の待遇は、40歳モデル賃金として、だいたい月収50万円くらいになり、良い目標だと思います。

ただ、介護現場を見れば明らかな通り、1人あたりで介護できる要介護者の数を2倍にするのは、実質的に不可能です。ロボット技術などが実用化されるまでには、楽に10年はかかるでしょう。

2020年時点で618万人いる要介護者は、10年後の2030年には805万人になると予想されています。国の財源が枯渇しつつあるので、介護報酬は、今後も下げられていくことは確実です。介護人材1人あたりで2倍の要介護者を介護したとしても、介護報酬が半分になっていれば、待遇は今と同じなのです。

すぐにでも大幅な待遇改善をすべき

生産性の向上を待っていたら、介護報酬の低下によって、実質的な待遇は改善されません。なんとしても、財源を確保し、介護業界の待遇を、すぐにでも改善することが必要です。そうしないと、親の介護によって、ただでさえ減っていく労働者が、さらに減ってしまうことになります。

労働者が減れば、企業の収益は2重の意味で悪化します。そもそも働く人がいないので企業収益が直接的に減るという意味が1つです。もう1つは、労働の対価としての収入を持つ人が減ることにより、企業が顧客を失うという意味での企業収益の悪化です。

そうして法人税と所得税が減っていきます。そうなれば、すでに不足している社会保障のための財源は、より深刻なレベルで不足することになります。生活保護や年金は実質的に減額され、私たち自身の未来が極端にひどいものになってしまうのです。どうしても、介護業界の待遇改善が必要なのです。

※参考文献
・田 栄富, 王 橋, 『日本における介護サービス業の現状と労働生産性』, 経済社会研究 = The journal of the Society for Studies on Economies and Societies 59(3), 25-44, 2019-01-25

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