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病院が消えつつある?地方の物価が安いことの背景を理解しておきたい

病院が消えつつある?地方の物価が安いことの背景を理解しておきたい

地方における医療機関の廃業がとまらない

帝国データバンクが、2015年に、医療機関の休業や解散の動向について調査しています。この調査結果として明らかになったのは、2014年に廃業した医療機関は347件で、当時でも、集計開始以来最高の数字となってしまっています。こうした廃業の多くは、地方において発生している点にも注目が集まりました。

地方の病院というと、過疎地で医師を募集しても来ないといった話題は昔からありました。しかし今では、人口が減ってしまった結果として、そもそも病院を維持できるだけの患者(人口)がいない地方が増えてしまっているのです。地方からは、高齢者もいなくなっているというのが実情です。

特に大きな病院は、過疎化が進む地方においては、高収入の雇用を生み出している重要な一流企業としての側面があることも忘れてはなりません。病院が廃業してしまうと、高収入の人材(人数的には看護師の影響が大きい)もまたその地域を離れることになり、地元経済は加速度的に悪化してしまうのです。

過疎化が進む地方では「なにもないけれど、医者と公務員だけはいる」と揶揄されることがあります。そうした地方から、医者がいなくなりつつあると考えると、いよいよ地域の消滅という現実と向き合う必要が出てくるでしょう。

地方への移住について考えておきたいこと

地方に移住した人が「給与も安いけれど、物価が安いから暮らしていける」という発言をすることがあります。これは、個人から見れば、嬉しい話であり、地方への移住を検討するときの条件に、物価の安さがあることは疑えないでしょう。

ただ、地方の経営という側面からすれば、給与や物価が安いということは、税収もまた安いということになります。そうして上がらない税収に対して、医療にかかる費用だけは上がっていくと、地方の経営は成り立ちません。

地方の物価が安いのは、その地方で得られる収入が安いからです。そうした地方を、経済的な側面からも支えてきたのが、各種医療機関であったことは、なんど強調してもしきれないほど重要な事実です。

現在は、そうして疲弊した地方から、給与の高い雇用先としての病院が消えつつあるのです。病院が消えてしまえば、安く物を買える商店なども消えていくことになります。そうなれば、その地方全体が買い物難民となり、物価という概念が通用しなくなるのです。

スローライフという言葉の罠

スローライフという言葉は、都市部で忙しく働いている人々には、魅力的なものです。ゆっくりとした時間の流れの中で、大自然に囲まれて暮らすことを夢に描いている人も少なくないでしょう。ただ、理想的なスローライフは、長期的には、心身の健康とお金が必要となる贅沢であるという認識は持っておきたいです。

少なからぬ地方は、すでに、ソフトランディングの体制に入っています。できるだけ悲惨なことが起こらない形で、人が暮らしていく場所としては消滅していくことを前提としはじめています。そうした地方で暮らすということは、買い物や病院通いのための交通費を、都市部に暮らす人よりも多く負担するということです。

近年、地方において水道代が大幅にアップするということが話題になりました。これは、水道代に限った話ではありません。医療や介護を含め、ありとあらゆるインフラが、地方では維持できなくなってきているのです。そこにあるのは、スローライフではなく、高コストな生活にすぎません。

スローライフという言葉には、地方の問題を隠してしまうという罪深い面があります。それは、多くの人にとって理想ですが、理想の実現が安いというケースは、資本主義社会においては、まず存在しないと考えておく必要もあるはずです。

※参考文献
・Business Journal, 『地方から病院が消滅する日…経営難で年3百件ペースで廃業等、路頭に迷う患者と看護師』, 2017年7月5日
・帝国データバンク, 『医療機関の休廃業・解散動向調査』, 2015年3月11日

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