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刑務所が、専門の介護スタッフを採用する時代になった

刑務所が、専門の介護スタッフを採用する時代になった

高齢化する刑務所の中身

高齢(65歳以上)の受刑者は、ここ20年(1995〜2014年)で、約4.6倍になっています。こうした高齢の受刑者は、出所しても、戻るところもなかったりします。こうした背景から、極端に言えば、刑務所が老人ホームになりつつあります

なんとも皮肉な話ですが、身寄りもなく独居状態になっている高齢者よりも、刑務所にいるほうが、社会性が維持され、それなりにケアも行き届いていたりするわけです。こうした逆転は、高齢者のみならず、多くの低所得者にも見られる現象です。

これは、日本における富の再分配の失敗を意味しているでしょう。刑務所は、基本的人権を、ギリギリの状態で保持しているにすぎません。それを下回る生活が、刑務所の外には普通にあるからこそ、こうした逆転現象が起こってしまっているのです。

専門の介護スタッフを採用する刑務所

そうした中、長野刑務所が、専門の介護スタッフを採用することがニュースになっています。刑務所の中にも社会があり、介護を必要とする受刑者がいることから、これは当然のことなのですが、モヤモヤします。以下、信毎ウェブの記事(2018年12月30日)より、一部引用します。

長野刑務所(須坂市)で60歳以上の受刑者の占める割合が17・2%、70歳以上の割合が6・5%に上り、ともに記録が確認できた2009年以降で最も高くなったことが29日、同刑務所への取材で分かった。(中略)

こうした受刑者に対応するため、同刑務所は新たに介護専門スタッフを採用した。食事や着替え、入浴といった日常的な動作が困難な高齢受刑者の介護を担当。ただ、専門スタッフは週に3日程度の非常勤のため、出勤日以外は刑務官による介護が必要になるという。

このほか高齢受刑者が作業に取り組む刑務所内の「養護工場」では、転んだ際のけが防止のために厚手のカーペットを整備。温水洗浄便座機能付きのトイレや、手洗い場の手すりを整備するなどバリアフリー化も進めている。(後略)

寝たきりの受刑者と孤独死

今後は、寝たきりの受刑者も増えていくでしょう。そうした受刑者は、最低限ではあっても、介護スタッフによるケアを受けることになります。そのかたわらで、世間では、誰にもケアされることなく、孤独死をしていく人々が急増していきます。

本来は、刑務所での生活は厳しいからこそ、犯罪の抑止力ともなるのです。しかし今後の日本においては、多くの高齢者にとって、刑務所は、自分の日常生活よりも豊かになってしまいます。そうなると、高齢者の犯罪は減るどころか増えて行ってしまう可能性もあります。

映画『ショーシャンクの空に』(1994年)でも、高齢の受刑者が、刑務所の外の孤独に耐えられず、刑務所に戻りたがる姿が描かれていました。いまから25年も前の映画ですが、高齢化する社会の未来を予見していたとみることも可能です。

日本の社会設計を考え直さないといけない

刑務所の中よりも貧しい生活を、真面目に生きてきた人々が強いられる社会には、問題があります。それは、いまから25年も前の映画でも描かれているとおり、いまにはじまった話ではありません。しかし、人類史上、類をみない高齢化にさらされている日本では、この問題が極端に顕在化してしまっています。

日本の社会設計を考え直さないといけないわけですが、理想的な枠組みだけがあったとしても、それが実際の社会に定着するかどうかは、別の話です。理想的な枠組みという意味では、すでに「地域包括ケア」というものが存在しています。

問題は、それが本当に実現可能なのかという部分です。社会設計は、政治家や官僚が設計し、それを一般市民が実現するという性格のものではありません。むしろ、一般市民の中で生まれた芽を、政治家や官僚が見つけて育てるという方向でしか、定着しないものです。

そうした視点から「地域包括ケア」の実現もまた、日本のどこかで生まれている優れた事例を見つけ、助成金をつけた上で横展開していくという活動が必要になるはずです。ただ、今の日本には、そうした活動の主体が誰なのか、まだ見えていないことが問題なのです。

※参考文献
・信毎ウェブ, 『長野刑務所 受刑者高齢化 介護スタッフを採用』, 2018年12月30日

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