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自己決定は、所得や学歴よりも幸福度に影響する(神戸大学)

自己決定は、所得や学歴よりも幸福度に影響する(神戸大学)

自己決定の原則

介護業界には、高齢者福祉の3原則(アナセンの3原則)と呼ばれるものがあります。それらは(1)生活継続の原則(2)自己決定の原則(3)残存能力活用の原則、の3つです。

この中で、人生の最後のところまで、ギリギリで維持できるのが自己決定の原則です。生活継続は、在宅での介護が困難になれば、維持できません。また残存能力の活用も、寝たきりになれば、ほとんど不可能になります。それでも、自分の人生を自分で決めるということは残っています。

小さなことかもしれませんが、たとえば、水が飲みたいのか、お茶なのか、コーヒーなのかといったことは、最後まで自分で決めることができます。そして、それを自分で決めることが、その人にとってとても重要です。少なくとも、介護の世界では、そう考えられてきました。

自己決定の原則が証明された?

神戸大学の社会システムイノベーションセンターが、アンケート調査(国内2万人)を行い、個人の幸福に対する影響力として、所得や学歴よりも自己決定が重要という結果を発表しています(神戸大学, 2018年)。

これは、要介護者の幸福(QOL)をずっと考えてきた介護業界としては、当たり前の話ではあります。ただ、当たり前の話に、こうして業界の外からエビデンスをつけてもらえることは、介護業界の外とのコミュニケーションが円滑になるという重要な効果があります。

それ以上に、自己決定を上手に維持拡大し、要介護者の幸福を上手に高められる人と、そうでない人の差が見えることが重要です。それによって、新人であっても、ベテランに近い介護ができるようになるからです。

エビデンス・ベースト・ケア(evidence based care)

介護の新人とベテランには大きな差があります。そうした差が、具体的にどういう場面で顕在化するのかといったことを定量化し、新人であってもベテランに近い介護ができるようにするといった考えをエビデンス・ベースト・ケア(evidence based care)と言います。

今後、急速に人材が増えていく介護業界において、こうしたエビデンス・ベースト・ケアが重要になってくることは疑えません。未経験者に近い人が、ベテランと肩を並べて仕事をすることが想定されるからです。

介護業界の労働者数は、ここ20年で4倍近くに増えています。これは、別の角度からみれば、ベテランはごくわずかで、ほとんどが新人という介護業界の特徴を示しています。当然、介護業界は介護の質を高めることに苦労しており、それが結果として、介護業界の生産性の邪魔をしているわけです。

エビデンス・ベースト・ケアは、ここに対して大きなインパクトを出せる本丸の考え方です。問題は、エビデンスを取得するのが非常に難しいという、介護業界ならではの特徴があります。そうした中で今回のニュースは、あくまでも介護の一部にすぎませんが、非常に意味のある視点になっていると考えられます。

※参考文献
・神戸大学, 『所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査』, 2018年8月31日

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