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リハビリの暗黒面、ゴッドハンドには注意が必要

リハビリの暗黒面、ゴッドハンドには注意が必要

石器におけるゴッドハンドという暗黒

「古代の石器が見つかった」というニュースを見ることがあると思います。そうしたニュースで示される、発見された石器は、どのように見えるでしょう。「本当に、石器なのかな?」「なんだか、ただの石コロみたいだな」と感じないでしょうか。

この感じは、実は、専門家でさえ抱くものです。なぜなら、石器かどうかの判断は、非常に曖昧なものだからです。基本的には、出土した地層の年代を基礎としつつ、石質、規則的な外観、他の石器との系統的なつながりといった「専門家でも断定できない要素の組み合わせ」で判断するしかないからです。

この曖昧さが、ニセモノの石器を作り、それを古代の地層に埋め、後で発掘するという捏造を生み出してしまいました。俗にゴッドハンド事件と呼ばれるもので、日本の考古学界を揺るがした大きな捏造事件(2000年10月に発覚)です。おそらくは、他にもこうした捏造があったと考えられても仕方がないでしょう。

もちろん、大多数の考古学者は、誠実でしっかりとした本物の科学者です。しかしこの事件があったせいで、本来であれば、調査研究のために使われるべき貴重なリソースが、世間からの信頼回復のために使われてしまっています。非常に残念なことです。

ゴッドハンドが生まれてしまう背景

曖昧な因果関係のある領域(考古学では本物の石器かどうかの判断)で、なんらかの価値のあること(考古学では新しい発見)が強く求められる場合、現代の科学では説明のつかないこと(考古学では特定の人物が大発見を繰り返した)で、周囲から権威付けされるゴッドハンドが生まれます。

こうしたゴッドハンドの中には、現代の科学では説明はつかないものの、本当に、なにか特別な才能によって、価値を生み出している人もいるでしょう。そうした人の才能は、後の調査研究によって、将来の科学の題材になっていきます。

同時に、自己重要感に飢えている人にとっては、こうした自らの権威を捏造しやすい環境は、毒にもなります。因果関係の曖昧さを利用して、偶然にすぎないことを、あたかも自分に与えられた特別な才能のせいであると主張できてしまうからです。

人間は弱い存在です。そんな人間には、自分が、この社会にとって重要な存在であるという認識(自己重要感)の奴隷としての側面もあります。ですから、こうしたゴッドハンドが生まれやすいところで専門性を維持する人には、高い倫理観と人間的な強さが求められるわけです。

リハビリにおけるゴッドハンドの危険性

実は、この危険性が、介護業界におけるリハビリの領域に存在しています。リハビリというのは、その技術と心身の機能回復の因果関係がとても複雑なものです。そのためリハビリ領域では、科学として成立しているものの、権威の捏造もしやすい環境ができてしまっています。

利用者(要介護者)の機能回復は、同じ人に同じ方法を適用しても、うまく行く時と、そうでない時があります。人間は、とても複雑で難しい存在だからです。リハビリの専門家は、日々こうした複雑さと向き合っており、誠実に、こうした「人間の不思議」を少しずつ紐解いているわけです。

ただ、こうした環境においては、偶然うまくいったことが積み上がり、リハビリのゴッドハンドが生まれやすいところが非常に危険です。本人にそのつもりがなくても、周囲から勝手に権威付けされ、困っている専門家もいるほどです。同時に「自分にまかせてもらえれば絶対に回復する」というゴッドハンドもいます。

怪我に苦しむスポーツ選手が、リハビリの専門家と称する詐欺師に引っかかり、マインドコントロールされてしまうというケースは、過去になんどもありました。こうしたケースは、スポーツ選手が有名なため世間に知られることになりましたが、実際には、世間には知られないままになっているケースのほうが多いわけです。

本物のゴッドハンドもいるかもしれないが・・・

そうした人の中には、本物のゴッドハンドがいて、後に、そうした天才の技が、科学によって誰にも使えるものになる可能性もあります。しかし、そのゴッドハンドが本物かどうかは、多くの人には見抜けないというところにこそ、捏造の危険性があることを忘れてはなりません。

そもそも利用者(要介護者)とその家族は、リハビリについての専門性を持ちません。自分に専門性がない場合、自分に合った先生を見つけるために利用できるのは「周囲の評判」だけになるでしょう。そうして「周囲の評判」を頼りにすると、ゴッドハンドに出会う可能性も高まります。

もちろん、そうしたゴッドハンドによって、心身の機能回復が達成されたら、それは素晴らしいことです。ただ、ゴッドハンドから、通常の医療や介護から逸脱した不思議な商品を売りつけられそうになったら、相当な注意が必要になります。

繰り返しになりますが、大多数のリハビリの専門家は、誠実に「人間の不思議」と向き合っています。必要以上に警戒するのは、かえって、正しいリハビリの進行を邪魔してしまいます。同時に、溺れている人にワラを売るという商売で儲ける人は、いつの時代にも多数いることも認識しておくことも大事でしょう。

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