閉じる

恥も外聞もない日本への階段(外国人実習生という欺瞞)

恥も外聞もない日本への階段(外国人実習生という欺瞞)

余裕がなくなり、なりふり構わない日本へ

日本では、農業や漁業といった食糧生産の現場から、メーカーの工場、そしてコンビニなどの小売まで、外国人労働者がいなければ、社会が回らないという状態が続いています。外国人が日本で働いてくれているおかげで、社会として成立しているという事実は、現代を生きる多くの日本人が実感していることでしょう。

しかしこれは、外国人に日本に来てもらって、日本の一員としてこの地で幸せに暮らす人を増やすという活動の結果ではありません。単に、余裕がなくなり、なりふり構わない日本が出現しているという話なのです。これは、国際社会から厳しく非難されている、日本が進める現代の奴隷制度の結果です。

なにげないニュースに取り上げられた、外国人を雇用している人々のコメントが、このおぞましい事実の一部を明らかにしています。むしろ善人が、それと気づかずに奴隷制度を進めてしまっていることが怖いのです。以下、朝日新聞の記事(2018年10月22日)より、一部引用します(段落位置のみKAIGO LABにて修正)。

工場では、日本人従業員と一緒にタイ人の技能実習生7人が白い火花を散らし、溶接作業に汗を流す。高齢で引退した熟練工に代わり、頼ったのが「日本で技能を学んで母国で生かす」名目で来日した実習生だった。品質の低下を心配したが、つきっきりで指導するとみるみる腕を上げた。

実習生の給与は1年目が最低賃金と同額。2年目から上乗せする。月給は残業代を合わせ15万円ほど。宿舎として2棟の一軒家を用意し、家賃は光熱費込みで、ひとり1万6千円。中韓との価格競争を考えれば、日本人より人件費が安い実習生は欠かせない。

「実習生に明日は逃げられるかも」と感じている現場の異常性

まず「ものづくり国家」とされる日本の熟練工に代わる人材を、地方の最低賃金で雇用するというところが、日本の本当の姿を明らかにしている点に注目しなければなりません。もはや「ものづくり国家」というのは、方便であって、真実ではないということは、広く認識されるべきです。

そしてこの、朝日新聞の記事のタイトルには「実習生に明日は逃げられるかも」という現場のコメントが入っています。まず、ここには逃げられるような条件で雇用しているという自覚があります。そして外国人実習生に、職業選択の自由が与えられたら困るということです。1862年アメリカの奴隷解放に怯える農場主と同じです。

「日本人より人件費が安い実習生は欠かせない」という現場ではなく、そうした奴隷労働がなければ成立しない現場を作っている経営者が非難されるべきところです。これは、あからさまな国籍差別です。国際社会は、こうした国籍差別と戦いながら、なんとか頑張ってきたわけです。

同時にこれは、現代社会における最低限のルールさえ、守っていたら生き残れないという現実を表してもいます。外国人を、日本人と同じように扱えば、私たちの生活が成立しないところまで、日本は行き着いてしまったということです。

当然ですが、安全地帯から、不当に安い賃金で働く外国人労働者がいないと成立しないビジネスを進める経営者を非難しても仕方がありません。私たち日本人が、そうした経営者が生み出すビジネスに依存しているわけですから、安くて良いものを求める私たちもまた、同罪なのです。

同じ構造が、介護業界にも存在していることは、広く知られるべきだ

介護業界もまた、不当に安い賃金が社会全体から求められている、奴隷労働の現場です。実際に、多くの外国人実習生が働いており、今後も、そうした外国人実習生は増えていきます。もちろん、こうした外国人実習生を、本気で、海外展開の基礎として活用しようとする優れた経営者もいます。ただ、それは少数です。

そもそも、外国人実習生という言葉でごまかしていますが、彼ら/彼女らは、外国人であるというだけの普通の労働者です。日本人の労働者との差別を隠すために、建前として実習生という言葉が用いられているだけなのです。介護現場では、先の記事と同じように「実習生に明日は逃げられるかも」という言葉が語られていることでしょう。

これは、そうした現場が悪いのではなくて、そのような現場になってしまう構造に依存している社会にこそ、罪があります。必要とされる労働に、十分な賃金を回すことなく、どこかで不当な中間搾取が存在しているのです。それが誰なのかは、トマ・ピケティが世界的ベストセラーとなった『21世紀の資本』で示したとおり、資本家です。

資本家に対して、課税強化を行えば、資本家が日本から逃げてしまうという意見もあります。しかしもはや、逃げる人は逃げてもらって良いのではないかと思います。逃げた先でも、まともな社会であれば、奴隷労働がなければ成立しないような状態を好ましいとは考えませんから、時間の問題で同じ対策が取られるはずです。

従業員の扱いについて経営者をランク付けすべきではないか

社会レベルで考えたとき、経営者には、雇用を生み出し、社会を安定化させるという重要な役割があります。だからこそ、社会レベルから見た経営者は(1)生み出してる雇用の数(2)待遇を含めた雇用の品質、という2軸で評価されなければならないでしょう。

せめて、より多くの従業員を、よりよい待遇で雇用できている経営者は、国から表彰されてしかるべきです。国家にとってもっとも重要なのは雇用であり、それは天然資源ではありません。経営者が、リスクをとって生み出したものです。ただし、雇用であればなんでも良いわけではありません。

あまり気にすることはないかもしれませんが、日本の勲章が、どのような基準で与えられているかは、とても不透明です。その全てを透明にする必要はないかもしれませんが、より多くの雇用を、よりよい待遇で生み出した経営者には、最高レベルの勲章が与えられるべきではないでしょうか。

そうして、雇用の数と質を同時に多数生み出せる経営者を明らかにし、その経営者に資金を集めたり、場合によっては政治家になってもらうような施策が必要だと思います。これを夢物語とするのであれば、今後、奴隷労働をすることになるのは、外国人ではなく、私たち自身かもしれないのです。因果応報を恐るべきところです。

※参考文献
・朝日新聞, 『「実習生に明日は逃げられるかも」 SNSで都会の情報』, 2018年10月22日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由