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ユニバーサルデザイン(UD)タクシー、まだまだ問題があるようだ

ユニバーサルデザイン(UD)タクシー、まだまだ問題があるようだ

ユニバーサルデザイン(UD)とは?

ユニバーサルデザイン(UD)という考え方は、今後、高齢化がさらに進む日本において、非常に重要な考え方です。この概念を簡単に説明すると、障害者も健常者も区別することなく、同じ環境で生きることができる社会の構築です。社会福祉におけるノーマライゼーションの理想と親和性が高いことも特徴です。

たとえば、老人ホームのような介護施設は、介護が必要になった人を実質的に隔離しています。こうした隔離は、社会にユニバーサルデザインが浸透しておらず、特殊な環境を準備しないと、介護が必要になった人に対応できないことを意味しているでしょう。結果として、社会の維持管理コストも上がってしまいます。

もし、介護が必要になったとしても、普通に在宅で生きていける社会になれば、特殊な対応の必要性が減り、社会の維持管理コストを抑えることが可能になります。もちろん、そうなれば、介護が必要になったからと言って、慣れ親しんだ地域を離れる必要性もなくなるわけで、誰にとっても嬉しい状態になるはずです。

優先席のようなものも、ある意味で、ユニバーサルデザインではありません。特別に普通とは異なる座席を準備するのではなく、車内で座る必要がある人と、席を譲ってもいいと考える人がマッチングできればよいだけの話です。過去、それは難しいことだったかもしれませんが、今後は、ITによって簡単に対応できるようになるはずです。

これからの社会は、どんどん多様化していきます。多様化とは、個別性の高い多数のマイノリティーが共に生きていくということです。そうした社会では、それぞれに多様で専用の環境を準備するのは困難です。そうではなく、多様な人々の全てを1つで内包できるような社会のデザイン、すなわちユニバーサルデザインが必要なのです。

ユニバーサルデザイン(UD)タクシーがうまくいっていない?

近年、縦長の箱型をした、新しいデザインのタクシーが増えてきていることに気づいている人も多いでしょう。あれは、車椅子が必要な人であっても、そうでない一般の人であっても、区別することなく、誰でも使えるタクシー、すなわち、ユニバーサルデザイン(UD)タクシーとして、開発され、実用化したものです。

中は広くて快適ですし、機材も新しくて、どのような背景を持った人であっても、使いやすくて嬉しいデザインになっているでしょう。こうしたユニバーサルデザインは、今後、日本から世界に向けて発信され、輸出産業として発展していくことも期待されています。

ところが、このユニバーサルデザインタクシーが、どうも、うまくいっていないというニュースが入ってきました。その裏側には、どのような事情があるのでしょう。以下、NHK NEWS WEBの記事(2018年10月20日)より、一部引用します。

通常のタクシーよりも大型で障害者などが乗りやすいとして国が導入を進めている「ユニバーサルデザインタクシー」で、車いすの利用者が予約や乗車を断られるケースがあることが障害者団体の調査でわかりました。(中略)

ユニバーサルデザインタクシーの7割以上のシェアを占めるトヨタ自動車の「ジャパンタクシー」の場合、車いすの利用者が乗るためには座席を倒してスロープを乗降口に設置する必要があるうえ、乗ったあとには動かないようベルトで固定しなければなりません。

タクシー会社などによりますと、こうした手順を行った場合、15分から20分程度掛かるということです。また、スロープは車体の横に取り付けるため幅の狭い道路では設置ができず、乗り降りの場所を選ぶ必要もあります。(後略)

タクシーの運転手にとってユニバーサルデザインになっていない

日本ではまだ、本格的なユニバーサルデザイン化への取り組みは、はじまったばかりです。ですから、こうした問題が出てくるのは、今後のユニバーサルデザイン化にとって、重要なチャンスでもあります。新しいことにチャレンジして、問題が出てこないということはありえません。

今回のニュースも「タクシー会社がけしからん」と怒っても仕方のないことです。車椅子の顧客をタクシーに乗せるまで15〜20分もかかっているようでは、今のタクシー会社の収益構造からすれば、赤字になってしまいかねません。これには、少なくとも3つの対応が考えられます。

まず1つ目は、タクシー運転手に対する研修を徹底し、車椅子対応の上手な運転手を評価し、昇給させるというものです。これは、人事制度として当然の方向性ではありますが、時間もかかります。逆に言えば、時間が解決してくれる問題でもあり、ある程度までは、人事制度で解決が可能でしょう。

次に2つ目としては、自動車メーカーとして、15〜20分もかかってしまわないような技術開発を行っていくことです。海外への輸出を前提とした場合、ここが一番威力のある部分であり、メーカーの腕の見せ所でしょう。ここに対しては、車椅子メーカーからの歩み寄りも必要になってくることは疑えません。

そして最後の3つ目は、どうしても15〜20分の時間がかかってしまうのであれば、ここに対して、補助金を支給していくということです。車椅子の顧客対応を真面目にしているタクシー会社の収益が下がってしまい、乗車拒否をするタクシー会社が儲かるという仕組みは、望ましい状況ではないからです。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『ユニバーサルデザインタクシー 車いす利用者の乗車拒否も』, 2018年10月20日

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