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出羽守(でわのかみ)として発信しても伝わらない

出羽守(でわのかみ)として発信しても伝わらない

出羽守(でわのかみ)という皮肉

出羽守(でわのかみ)とは、本来であれば、出羽(現在の山形県と秋田県)の長官を表す言葉でした。しかし現代社会では、これとは別に、皮肉をこめた意味を持つ言葉として定着しつつあります。出羽(でわ)という言葉にかけて「○○では〜」という発言を多用する人のことを指すようになったのです。

きちんとした語源は不明ですが、海外在住の日本人が増えてきていることも背景にあると推測されます。海外に暮らしていると、暮らしている国と母国の違いが目につくようになります。そうして、自分が暮らしている国の優れているところを「アメリカでは〜」「フランスでは〜」という具合に、日本の問題点として発言するようになりやすいのです。

しかし、海外の優れているところを知ったところで、日本の現状は簡単には変わりません。それに、そうして海外の優れたところを発言する海外在住の人は、そうした優れたところを生み出した人物ではないわけです。そうなると、ただ、優れた国に暮らしているだけで上から目線を獲得してしまうことの恥ずかしさも認識されるでしょう。

海外コンプレックスや右傾化も背景にある?

ただ、日本が良い国になっていくために、海外の優れた事例を知ること自体は、大事なことでしょう。国際比較はもちろん、国内であっても、業界比較や企業比較といったことは、むしろ実行することが当然の話であって、なんでもかんでも出羽守として無視されてしまっては、おかしなことになってしまいます。

「アメリカでは〜」といった発言に対して、脊髄反射的に「ここはアメリカではない」とやり返すのは、さすがに行き過ぎです。そこまでの脊髄反射が増えてくる場合、海外コンプレックスや右傾化を疑わないとなりません。特に右傾化は、貧困が深刻になってくると進んでしまうものでもあるので、これからの日本では注視する必要もあるでしょう。

同時に、比較をして日本の問題点を明らかにしようとする側も、それが、自分の優越感を満たすための発言にならないように注意する必要があります。比較対象となる優れた仕組みを持っているところが、どのような努力を通して、そうした仕組みを獲得したのかといった背景を伝えないと、無意味なものになってしまいかねません。

出羽守として無視されてしまうことを避けるには

この世界は、課題でできていると言っても過言ではありません。食糧問題、貧困問題、健康問題、情報格差、所得格差、地方問題、高齢化問題・・・課題を挙げればきりがありません。人々は、日々、こうした課題と向き合い、それをなんとか解決しようと、それぞれの立場で努力をしているわけです。

出羽守は、こうした課題を、他者との比較によって示すばかりの人に対する皮肉になっています。現代社会は、メディアも発達していますから、課題については把握されていることも多く、課題が示されるのはお腹いっぱいなのです。足りないのは、課題の把握ではなくて、その具体的な解決策でしょう。

「アメリカでは、こういう仕組みがあって助かるのに、日本は遅れている」といった発言では、出羽守になってしまいます。同じことを言うにせよ「今の日本のこの課題は、アメリカのこうした仕組みを導入できたら解決するが、その導入にはこうした困難があり、それを進めるにはこうした点に注意が必要」といったロジックが求められるのです。

介護業界をどうしていくのか?ここにも出羽守の危険性がある

介護業界でも、特に、北欧の優れた社会福祉の事例が出羽守になりやすいものです。たとえば、認知症ケアの手法(奇跡)として紹介されたユマニチュードは、介護現場では「そんな手法、昔から日本にもあったよ」と否定的に語られることがあります。こうしたネガティブな反応も、出羽守という言葉で説明することができそうです。

単純にユマニチュードを優れた手法として紹介してしまえば、過去に日本の介護現場で積み上げてきたノウハウの否定にしかなりません。そうではなくて、ユマニチュードと、日本の手法の違いを明確にし、それぞれに優れた点を評価した上で、お互いに学べるところはどこかのかを明確にしていかないと、伝わらない可能性も高くなってしまいます。

そもそも、ちょっとしたアイディアだけで、一気に解決してしまう課題は残されていないのです。そのアイディアを実装するには、具体的になにをすべきかを考え、誰かにそれをやらせるのではなく、自らがそれを推進する覚悟が必要です。出羽守は、誰の中にも存在しているからこそ、それぞれに注意する必要があるのだと思います。

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