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高齢者はすでに地位の確立されている安全・安心なブランドを選ぶ?

高齢者はすでに地位の確立されている安全・安心なブランドを選ぶ

高齢者の購買行動が注目されてきている

日本の高齢化にともない、日本市場は高齢者をターゲットとしたマーケティングであふれるようになってきました。しかし、高齢者たちの消費に、大きく食い込むことに成功したという事例は、あまり聞きません。まだまだ、高齢者マーケティングは黎明期であり、わかっていないことも多いのでしょう。

しかし、少しずつではありますが、しっかりとした学者による、信頼性の高いマーケティング理論も生まれつつあります。まずは、Agenda noteの記事(2018年10月19日)より、一部引用します(改行位置のみKAIGO LABにて修正)。

ブランドの捉え方には、さまざまな理論があるが、私が注目しているのが「ブランド・アドミレーション」の考え方である。(中略)今までのブランド論がどちらかというとマネジリアルな視点で示されていたのに対し、消費者の視点から構築されているため、消費者調査からブランド力を測定できることが大きな特徴である。具体的には、「ブランドの信頼」「ブランド愛」「ブランドへの尊敬」の3つから成り立っている。(中略)

高齢者は、一般の消費者と比べると、この3つの要素のうち「ブランドの信頼」の項目のウェートが非常に高いことがわかってきた。具体的には、ブランドの安心感・ブランドの安全性という「ブランドの信頼」を構築する項目が、評価する上で常に大事な項目としてあがってきて、その2つの項目が高くないブランドは好まないのだ。さらに、周りの評判がいいかどうかもブランドの評価では大事であり、高齢者が市場で地位を確立された同じブランドばかり購入し、新しいブランドをトライしない理由はここにある。(後略)

高齢者はブランドスイッチをしない?

マーケティング業界の経験則として、高齢者はブランドスイッチをしないというものがあります。ブランドスイッチとは、例えば、シャンプーとしてメリットを購入してきた人が、ある日、ティモテに乗り換えるということを指しているマーケティング用語です。

若い人であれば、気まぐれにブランドスイッチをすることも多いのです。しかし高齢者の場合は、まず、こうしたブランドスイッチを起こさないというのは、マーケティング業界では、ほとんど常識になっています。ただ、この常識に例外も見られることから、その心理的な背景の理解が求められていました。

先の、清水教授(慶應義塾大学)による調査結果を示した記事は、この心理的な背景について、一段掘り下げた理解を提供するものとして、非常に意味のあるものになっています。この調査結果から言えることは、高齢者であっても、安心感と安全性を主張するブランドであれば、ブランドスイッチもありえるということです。

あまり良い事例ではないものの、高齢者というのは、若者よりも詐欺事件に巻き込まれやすかったりします。これはすなわち、詐欺師たちは、高齢者にブランドスイッチを起こさせるノウハウを持っているということを示しているでしょう。とにかく、相手が高齢者であっても、ブランドスイッチを起こせるのは、事実なのです。

成長する高齢者市場の開拓における戦略の基本

あくまでも参考程度ですが、今後の大きな成長が見込める高齢者市場での新規開拓では、今回の話を前提とした基本的な戦略を描くことができそうです。まず、自社が高齢者に馴染みのあるブランドを提供しているのであれば、メッセージを安心感と安全性に寄せることが、ディフェンスの基本になるのは当然です。

問題は、新規で高齢者に認めてもらわなければならない立場にある企業の場合でしょう。競合となるのは、創業100年を超えるような企業によるブランドとなる場合が多く、そうした企業と正面から当たってしまえば、勝ち目がなさそうだからです。

ヒントとなるのは、先の記事にある「周りの評判がいいかどうかもブランドの評価では大事」というところでしょう。高齢者の世界にも、当然、インフルエンサーがいるわけです。ただ、そうしたインフルエンサーは、若手の場合とは異なり、ネットでは見つかりません。ここが難しいとこになってきそうです。

この戦略の基本的な型となるのは、高齢者には名前の知られていないブランドであっても(1)効果効能の科学的な証拠(エビデンス)をしっかりと示し(2)国や自治体からお墨付きを得る努力をしつつ(3)高齢者のインフルエンサーに是が非でもリーチする、といった3段ステップかと思われます。

当たり前のことですが、著名なブランドを持っていることと、商品の優劣は別の話です。ただ、いくら商品が優れていたとしても、名前が知られていなければ、高齢者市場では成功できない可能性が高まります。ここでは、新たな市場開拓のための戦略が求められるということです。

※参考文献
・Agenda note, 『高齢者が同じブランドばかり購入する心理的要因とは【慶應義塾大学 清水聰】』, 2018年10月19日

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