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選択できることは、QOLにとって非常に重要なこと

選択できることは、QOLにとって非常に重要なこと

自己決定の原則に科学的な裏付け

介護の世界では、高齢者福祉の3原則(アナセンの3原則)というものが長く語られてきました。この3原則のひとつは「自己決定の原則」と呼ばれ、いろいろなことができなくなっても、周囲が勝手に、本人の代わりに決めてしまってはならないことが大事とされてきたのです。

このたび、この「自己決定の原則」とQOLを結びつける科学的な裏付けが得られました。当たり前といえば当たり前のことなのですが、科学的な裏付けの存在は、とても大事です。以下、日本経済新聞の記事(2018年8月30日)より、一部引用します。

日本人が抱く主観的幸福感には所得や学歴よりも「選択の自由」が強い影響を与えていることが、国内約2万人へのアンケートで分かった(中略)所得(世帯年収)が増加するにつれて幸福感も高まるが、1100万円を境に上昇率が下がっていたことも判明した。(中略)

自己決定は健康や人間関係に次いで幸福感に影響を与えており、所得と比較すると、約1.4倍強い影響があった。学歴は統計的に有意な結果が出なかった。35~49歳では、他の年齢層に比べて幸福感が落ち込む傾向にあった。

それでも注意したいこと

先のニュースをきちんと読むと、自己決定は、健康や人間関係の次に重要ということがわかります。いかに自己決定が大事であっても、それによって、健康や人間関係が悪化してしまうようでは、問題もあるということでしょう。

高齢者福祉の3原則においても、生活が継続され、残存能力が活用されることが、自己決定の原則とともに掲げられています。自己決定は、QOLにとって非常に大事であることは間違いありません。同時に、それだけが重要というわけではないことにも注意を払う必要があるでしょう。

高齢者と関わっていると、相手から「放っておいて欲しい」と言われることもあります。それは高齢者の自己決定ではありますが、その言葉通り、本当に放っておいてもらいたいのか、それとも、本当ななにか別の意味があるのかは、簡単には判断できません。

一見、自己決定のように見えて、本当は、周囲の環境によっって他に選択肢がないということもありえます。そうした場合、人間は、周囲の環境を変えることよりも、あきらめることを選ぶ場合もあるでしょう。しかしそれは選べないだけで、本当の意味で自己決定とは言えないはずです。

今回のニュースのように、少しずつではあっても、科学は人間を明らかにしていきます。同時に、そうして理解できる部分は、人間のほんの一部であって、むしろ本当は、わからないことのほうが多いという事実についても、常に認識をしておく必要があるでしょう。

※参考文献
・日本経済新聞, 『「選択の自由」が幸福感に 神戸大2万人調査』, 2018年8月30日

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