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70歳までの雇用が義務付けられていく社会は、どこへ向かおうとしているのか

70歳までの雇用が義務付けられていく社会は、どこへ向かおうとしているのか

日本の解雇規制と増え続ける非正規社員

日本には、諸外国と比較しても、かなり厳し解雇規制があります。いかに仕事ぶりが悪くても、いったん正社員として雇用したら、通常は解雇することができない仕組みになっているのです。結果として、多くの企業では、正社員の数を絞り、人材が足りないときは、雇い止め(実質的な解雇)ができる非正規社員を活用するようになりました。

そうして、日本の労働市場においては、非正規社員の割合が年々高まってきています。2000年前後には30%を切っていた非正規社員の割合も、ここ数年は、37%前後で推移しています。今後も、この数字は高くなっていく可能性もあります。

こうした非正規社員の中には「そのほうが柔軟に働けるから」という理由で、自ら望んで、非正規社員として働く人もいることは事実です。しかし、働き方改革が進みつつあり、正社員であってもより柔軟な働き方が許容される社会が出現する中、これもおかしな話なのです。

おかしな方向に行っていないか?

本来であれば、解雇規制を緩和し、正社員と非正規社員の差をなくしていくことが大事なはずです。ただ、いまの日本は、これとは別の方向に進もうとしています。正社員の権利を、さらに強めようというのです。以下、毎日新聞の記事(2018年9月6日)より、一部引用します。

政府は高齢者が希望すれば原則70歳まで働けるよう環境整備を始める。現在は原則65歳まで働けるよう企業に義務付けており、年齢引き上げの検討に入る。2019年度から高齢者の採用に積極的な企業を支援する。(中略)

安倍晋三首相は3日の日本経済新聞のインタビューで「65歳以上への継続雇用年齢の引き上げを検討する」と述べた。現在の高年齢者雇用安定法は、希望者に対して原則65歳までを「継続雇用年齢」として働けるようにすることを義務付けている。政府は同法改正で年齢を徐々に70歳にまで引き上げたい考え。(中略)

同時に高齢者が働くインセンティブを高める。現在は、定年後に継続して働く場合でも、賃金が一律で大幅に下がるケースが多い。内閣府の調査では3人に2人は65歳を超えても働きたいと希望しているものの、賃金が大幅に低下するため年金生活を選ぶ人が多い。(後略)

もちろん、高齢者であっても、仕事を通して社会とつながることは、介護予防という側面からも重要なことです。ただ、それが正社員の優遇と、非正規社員や若手人材のチャンスを犠牲にするような形になってしまえば、国家の経営としては本末転倒です。

ますます不利になる日本の非正規社員や若手人材

簡単に言ってしまえば、これは、限られた人件費のための財源に対して、高齢の正社員が優遇されるという話です。それによって生産性が高まり、企業の収益が上がり、人件費のための財源も増えるのであれば問題ありません。しかし、そんな夢のようなことは起こらないでしょう。

そうなると、こうして優遇されることになる高齢の正社員のために必要な人件費のための財源は、非正規社員や若手人材のところから取ってくるしか手がありません。年金も、各種社会保障も、どんどん悪化していく日本にあって、これ以上、非正規社員や若手人材を痛めつけるような施策が許されてよいのでしょうか。

それでも、近未来に出現する、悲惨な社会を先送りするためには、こうした施策を打つしかないという部分に、絶望を感じます。それが一部の正社員であっても、少しでも高齢者を優遇しないと、破綻し、生活保護を受けながら、介護と医療にどっぷりという高齢者が激増してしまうのです。

日本のいまの制度は、かなりの局面において破綻しています。本当は、できるだけ早く、ベーシックインカムの導入に代表されるような、抜本的な構造改革が必要なのです。問題は、そうした認識は、より危機的な状況が顕在化してこないと、広がっていかないというところです。もはや、ハードランティングしか残されていないのでしょうか。

※参考文献
・毎日新聞, 『70歳雇用 努力目標に 政府、多様な働き方へ検討』, 2018年9月6日

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