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若年性認知症の人と社会のつながり

若年性認知症の人と社会のつながり

若年性認知症の人と社会のつながりの現状

「若年性認知症」とは65歳未満で発症する認知症のことを言います。多くの場合、まだまだ働ける世代であることが多く、その途中で認知症になることは、心身の健康面での課題はもちろん、経済的、社会的な課題を抱えることになります。一家の大黒柱が本人であった場合、世帯全体の生活が大きく変化することは容易に想像がつくと思います。

「高齢者特有だと思っていた認知症が現役世代にも起こりうる」という、若年性認知症への認識は、当事者の方々の発信で少しずつ広がってきていると思います。しかしながら、そうした状態になった本人や家族を支援する法制度や企業内での仕組みは十分に追いついていないのが現状ではないでしょうか。

こうした中、障害者総合支援法による就労支援や、地域に配置された若年性認知症支援コーディネーターによる支援がありますが、まだまだ全国的に当事者のニーズにマッチした内容と実態にあるとは言い難い状況です。

そもそも、現役世代の若年性認知症ご本人たちの真のニーズがあるとしたら、やはりきちんとした雇用契約の元、継続して働ける環境というものであるはずです。そこにはまだまだ大きな壁があるようです。

当事者の声

都内の若年性認知症家族会の女性は10年以上前の夫の介護生活を振り返って次のようにお話しくださいました。

「夫を介護していた時は若年性認知症なんて言葉は知られていませんでした。お年寄りの病気だと思っていましたからね。たまたま大きな会社だったので労働組合がしっかりしていて、定年まで籍を置かせて下さいましたが、運がよかったですね。今は組合も体力が落ちているし、企業の中で労働者を手厚く守ってくれる時代ではないかもしれませんよね」

若年性認知症の方が日本型雇用の中で培われた仕組みによってかろうじて守られた時代もありましたが、今の時代もそれが全国的に通用するかと言えば難しいかもしれません。企業も、親の介護に直面する労働者を支援する介護離職防止にようやく動き出している中、当の労働者自身の介護支援までは手が回っていないのが実情でしょう。

そんな中、各地で例え認知症になったとしても、本人が持つ特性や能力を活かすための取り組みが注目されています。学校法人国際大学の「若年性認知症を含む認知症の人の能力を効果的に活かす方法などに関する調査事業(厚生労働省平成29年度老人保健健康増進等事業)」の報告書では、下記の図「若年性認知症を含む認知症の人の特性や能力を活かすためのフレームワーク」に示されているように、4つの領域からそれぞれ社会とのつながりを分析しています。

若年性認知症を含む認知症の人の特性や能力を活かすためのフレームワーク

領域Aでは、認知症の当事者として体験や経験を語ったり、社会の課題について当事者として意見を述べたり、本人としてピアサポートを行うことがイメージされています。

領域Bでは、ボランティアや新しい取り組みを立ち上げたり、介護保険制度内で有償ボランティアとして仕事を行うことがイメージされています。


領域Cでは、地域の趣味活動や、居心地の良い居場所に行き、図書館など公共的なサービスを使って勉強するなどがイメージされています。


領域Dでは、介護保険等の社会サービスを受けたり、認知症であるからこその合理的配慮のあるサービスを受けたりすることがイメージされています。

フレームワークで考える新しい領域の取り組み

これまではややもすると、認知症になったら領域Dだけという認識が、企業や家族、社会そして本人も思っていたかもしれません。しかしながら、本人、家族、介護福祉などの支援者、企業、地域住民などが連携して、本人の持つ特性や能力に応じた領域ごとの取り組みを積極的に後押ししていくことが必要ではないでしょうか。

こうした取り組みは、当事者である本人や家族にとっては社会参加を継続する生活の質につながりますし、企業や地域にとっても、活気溢れる社会や貴重な労働力、新しいマーケットなど、多様な意味合いを持つ可能性があるものになると思います。

先の調査事業では、認知症の人の「はたらく」のススメという小冊子も公開しています。地域の中で、働きたい認知症のご本人と、地域や企業のマッチングやネットワーキングなどに取り組む事例なども紹介されています。認知症になったら終わり、という時代から、認知症と本人だけでなく、認知症と社会がともに生きるということを考える取り組みはすぐ近くですでに始まっているのです。

※参考文献
・学校法人国際大学, 『若年性認知症を含む認知症の人の能力を効果的に活かす方法等に関する調査研究事業』, 2018年3月
・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター, et al., 『認知症の人の「はたらく」のススメ 〜認知症とともに生きる人の社会参画と活躍〜』, 平成29年度

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