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生協の介護シフト、うまく行くだろうか?

生協の介護シフト、うまく行くだろうか?

生協の立場が変わってきている?

生協(生活協同組合)は、消費生活協同組合法(生協法)によって管理されている、消費者がお互いを支え合うことで成立する組合組織です。大学の売店が生協だったり、パルシステムという宅配サービスを使っている人も多いでしょう。生協は利益を追求する組織ではありませんから、一般に、生協は安いというイメージがあると思います。

しかし、民間のスーパーやネット販売業者(営利業者)にとっては、この生協の存在はずっと脅威でした。同じようなものであれば、生協のほうが安いということになると、営利業者として経営が成立しないからです。結果として、いまとなっては、商品によっては生協よりも営利業者のほうがお買い得ということも増えてきています。

消費者としては、こうした競争によって、よりよい商品が、より安く入手できるようになるので、この流れ自体は大歓迎でしょう。しかし、生協としては、これは存在意義に関わる事態であり、究極的には営利業者に負けてしまえば、生協という組織事態が存続できなくなります。

生協はこの危機を正しく認識している

こうした流れは、生協としてもよく認識しているようです。営利業者は、生協に勝つために、徹底的な効率化を進めてきました。結果として、一部ではあっても、生協が商品の価格で負けるということも起こり始めています。以下、朝日新聞の記事(2018年7月16日)より、一部引用します。

スーパーの売上高にあたる総事業規模が全国で2兆8千億円を超える地域の生活協同組合(生協)が、危機感を強めている。人口減少や組合員の高齢化に加え、配送の人手不足、ネットスーパーとの競争で劣勢を強いられているからだ。給食、介護、農業など新規事業の強化に乗り出した。(中略)

利用者の声をもとに改善を重ね、2010年に始めた高齢者への配食事業は6工場7500食まで広がった。工場を有効活用しようと、12年に幼稚園のお弁当にも参入、今や70園8千食を作る。昨年から病院や介護施設の給食調理の受託も始めている。(後略)

生協の介護シフトはうまくいくか?

過去にもKAIGO LABでは『パルシステム(生協)が介護に参入?』『生協が在宅介護サービスに本格参入、全国展開へ』といった記事で、生協の介護シフトについて注目してきました。安いのに品質が高いという生協のイメージが、そのまま介護に入ってくるならば、素晴らしいことだからです。

ただ、どうしても気になるのは、それが経営的に成立するかという部分です。すでに生協の経営は、かなり厳しい状態が想定されているようで、健康保険組合の解散まで決まっているような状態です。

営利業者でなくても、必要な経費が支払えなくなれば、解散を余儀なくされます。そしていま、生協が参入しようとしている介護という市場は、そうそう儲かるようにはなっていないのです。その証拠に、毎年、介護業界の倒産件数は過去最高という記録更新を続けています

生協ならではの介護サービスが求められている

介護業界において、生協が、普通の介護事業者と同じようなサービスを提供してしまえば、ただでさえ儲からない介護業界の競争が激化するだけです。結果として、仮に生協が勝利したとしても、その影響で、他の介護事業者が倒産してしまえば、日本の介護が大変なことになってしまいます。

いまこそ、生協は「生協とはなにか」を問い直し、生協ならではの介護サービスを構築してもらいたいところです。それは本来、地域包括ケアの考え方と親和性の高いものだと感じています。消費者同士が助け合うという発想は、これからの社会福祉にとって、どうしても必要なものに思えるのです。

仮に、介護事業に参入した生協が、そこで大きな赤字を出すことになれば、いよいよ、生協そのものが危なくなる可能性もあります。そうなってしまえば、営利業者への牽制もききにくくなり、賃金の上昇しないこの時代に、物価の上昇を招いてしまうかもしれません。なんとか、頑張ってもらいたいです。

※参考文献
・朝日新聞, 『生協に逆風、危機感強まる 子育て・介護対応にシフト』, 2018年7月16日

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