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介護の魅力を伝える前に、どうしてもやるべきことがある

介護の魅力を伝える前に、どうしてもやるべきことがある

日本全国で広がる介護の魅力を伝える活動

介護のプロが、まったく足りていません。2025年には約38万人の不足が見込まれていますが、すでに、首都圏やニュータウンでは介護のプロの不足が顕在化しています。結果として、介護事業者の採用コストや人件費が上がり、介護事業者の倒産が、過去最高のペースで進んでいます。

そうした背景を受けて、日本全国で、介護の魅力を伝える活動が続いています。セミナーだったり、作文コンテストだったり、写真コンテストだったりと、その形式は様々です。これらは、介護業界で働いてみたいと考える人を増やし、介護業界における人材の定着率にも寄与するでしょう。

ただ、どうしてもはっきりさせておきたい問題があります。それは、全63業界中でもダントツの最下位とも言われる、介護業界の待遇の悪さです。介護業界は、公費によって運営されている市場であり、こうして待遇が悪い状態は、そのように設計されていることが最大の理由になっています。

給与の高い業界から、給与の低い業界への転職?

現在でも、介護業界には人材が足りません。ですから、こうして介護の魅力を伝えるのは、他の業界で働いている人に、介護業界に転職してきてもらうことを意図しています。しかし、実際にそうした転職があった場合、本人は、給与のより高い業界から、給与の低い介護業界に入ることになります。

個人という視点だけからすれば、それは自分の選択でしょう。多少、給与が下がっても、よりやりがいのある仕事がしたい人がいても、個人という視点では、問題はありません。ただ、日本全体からすれば、こうした転職が増えれば、給与が下がる人が増えた分だけ、税収もまた減ることになります。

生産性が問題になっています。しかしこれは、個人がもっと効率的に働くことよりもむしろ、給与の高い業界で働く人が増えることが重要なのです。介護業界に転職する人が増えると、日本の生産性は低下することになってしまいます。

そうして税収が減れば、介護業界の売上に相当する公費は、さらに抑制されていくことになります。結果として、より悪い待遇で働かされる人が増えてしまうことにもなりかねません。どう考えても、これは正しくない国家戦略です。

順番が違うままに、官民の足並みがそろってしまってはいないか?

重要なのは、介護業界に流れるお金の総量を増やし、介護のプロの待遇を改善することです。その上で、広く日本中に介護の魅力を伝え、介護業界に「より高い待遇を求めて」転職してきてくれる人材を増やさないと、大変なことになります。

しかし、この流れは遅々として進みません。ただ、日本全体の生産性を下げるような方向に向かって、介護の魅力が伝えられてしまっています。また、それでは十分な人材が確保できないということで、世界から「奴隷労働」として批判されている外国人技能実習生の受け入れが加速してきています。

そもそも、外国人技能実習生が来てくれるのも、数年の話です。しかも、こうした安価な労働力は、世界で取り合いになっており、日本に来てくれる外国人技能実習生は、今後は確実に減っていくでしょう。そして世界的にみれば、途上国が本当に発展することで、安価な労働力自体がなくなってきています。

本来であれば、人手不足は、待遇を改善させるチャンスでもあります。しかし、そうした待遇の改善が進まないままに、人手不足だけが、付け焼き刃的に解消されようとしています。それが数年後に、どういう未来を出現させてしまうか、よく考えないとなりません。地獄への道は、善意で舗装されているのです。

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