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高齢者が元気になるバトラー博士の回想法;背景と話題例

バトラー博士の回想法

バトラー博士が「回想法」を生み出す背景

アメリカの精神科医ロバート・バトラーは「回想法」というカウンセリング手法の提唱者として有名です。彼の著作『Why Survive?: Being Old in America』は、ピューリッツァー賞を受賞している名著です。

バトラー博士は、高齢者が過去を懐かしく振り返ることが多い点に着目します。当時は、こうした高齢者の傾向は、現実逃避として否定的に捕らえられていました。バトラー博士は、これをむしろ「自然なこと」として、逆に応用しようとしたのです。

それが1963年に「回想法」として提唱されます。日本では主に認知症へのアプローチとして知られているのですが、もともとはは鬱病や不安神経症などの高齢患者が対象でした。そうした患者に自分の人生史を語ってもらうと、自己治癒力が活性化したということが背景にあります。

バトラー博士の「回想法」の効果

今では、この「回想法」は、堅苦しい治療という文脈を超えて、もっと気軽な交流などの場面でも広く利用されています。要するに、高齢者が「楽しいおしゃべり」を通して元気になるための方法論になっているわけです。

「回想法」の効果として知られているのは、認知症への対応や予防、自尊心の向上、意欲の向上や情緒の安定など、様々なものがあります。以下は、参考文献からの引用になります。あるグループホームで「回想法」を実施した後の、職員の感想です。

・普段は見られないような、いきいきとした表情で話をしていて、こんな一面もあるのだと気づくことができました。
・日常生活とは違い、笑顔で穏やかな表情で話している様子を見ていると、その人を受け止めている自分に気づきました。
・入居者と話しやすくなり、トイレやお風呂への誘導のきっかけもつかみやすくなり、気持ちが楽になりました。
・料理方法や天気に関する知識など、高齢者の生活の知恵に学ぶことがたくさんありました。

ただし、この「回想法」にもリスクがあります。それは、本来は「楽しいおしゃべり」になるはずだったものが、意図せずに悲しい話やネガティブな感情を呼び起こしてしまうこともあるということです。こうした場合は、なんとかまた「楽しいおしゃべり」に引き戻す必要が出てきます。

「回想法」で用いられる話題

「回想法」は、もともと、活動力が衰えて、社会との接点が減ってしまった高齢者にとって、話題といえば過去のことしかないことに注目して生み出されたものです。ですから「回想法」においては、その人の過去について傾聴(熱心に聞く)することが基本です。

とはいえ、高齢者が昔のことを語りやすいように、聞き手から質問をしてあげると良い場合も多いようです。話題に困った場合のために、以下、「回想法」において、よくテーマにされる題材を列挙しておきます(近藤勉『高齢者の心理』p140を参考にKAIGO LABが作成)。

ライフステージ
回想法の題材
就学前の子供時代 両親、兄弟姉妹、祖父母、生まれた家、住んでいた家、周囲の環境、山、川、海、台所、土間、いろり、五右衛門風呂、井戸、蚊帳、遊び、竹馬、幼稚園、下駄、ぞうり、馬車、キセル、駄菓子屋、紙芝居、動揺、おはじき、人力車、蛍
小学校時代 先生、友達、初恋、校歌、好きな科目、嫌いな科目、運動会、夏休み、お弁当、水泳、自転車、縄跳び、お手玉、あやとり、メンコ、喧嘩、いたずら、修学旅行、習字、汽車、田植え、正月、ひな祭り、花見、稲刈り、餅つき、雪だるま、テレビ番組、ラジオ番組
中学・高校時代 旧制中学校、女子校、旧制高校、大学、入試、セーラー服、バンカラ、初恋、茶道、華道、親友、恋人、就職、初任給、そろばん、結婚、プロポーズ、好きな映画俳優、好きな歌手、ダンスホール、映画館、テレビ番組、ラジオ番組
大人になってから 仕事、好景気、不景気、得意な仕事、一番大変だった仕事、ライバル、助け合った同期、お世話になった上司、よくついてきてくれた部下、結婚、プロポーズ、子供の教育、子供の入学、子供の結婚、定年、孫、趣味、余暇の過ごし方

※参考文献
・国際長寿センター, 『精神科医としてのバトラー博士 発展し続ける回想法』, 2010年8月5日
・須田行雄, 『回想法 実施マニュアル』, 2013年3月
・後藤宏, 長野恵子, 『学齢超過者の訪問教育授業における回想法の試み』, 西九州大学子ども学部紀要(第6号)57‐78(2015年)
 

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