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東京オリンピックのボランティア要請にみえる危険性について

東京オリンピックのボランティア要請にみえる危険性について

東京オリンピックのボランティア募集について

東京オリンピックのボランティア募集がこの9月よりはじまります。交通費や宿泊費の支給はなく、事前の説明会と研修に2日間の出席が求められ、大会中は延べ5日間以上、1日5時間程度の無償労働になるとのことです。この条件で、11万人ものボランティアを募集しています。

もちろん、せっかくのイベントですから、みんなで盛り上げよいうという気持ちは理解できます。同時に、オリンピックはあくまでも商業イベントであり、それで収益を出す企業も少なからず存在するという点についても、確認しておく必要があります。ある特定の人々が大きく儲けて、それ以外の人々は大赤字というのはフェアではないでしょう。

背後には「学生を集めればよい」といった安易な発想があるように思えてなりません。また、結局は、スポンサー企業の従業員が駆り出され、大変な思いをすることにもなりそうです。こうしたイベントは、最後には「なんとかなってしまう」ものなのかもしれませんが、やはり、学ぶべきところは学びたいです。

同時期に介護のボランティアはどうなるのか

特にパラリンピックにおいては、介護の専門性を持った人材のボランティアが各所で求められるでしょう。オリンピックのボランティアの多くが実質持ち出しでのボランティアをすることになりますから、パラリンピックも同じ扱いになる可能性があります。

しかし、専門性というのは、その獲得に大きなコストがかかっており、それを無償で提供することは、大きな不利益があります。そもそも人手不足の介護業界から専門性の高い人材を無償で集められるのでしょうか。仮に集められたとして、期間中は、通常の介護サービスが犠牲にならないでしょうか。

そしてもっとも恐ろしいのは、そうした介護の専門性が、ボランティアでできるという誤解を世間が持つことです。介護職の待遇改善が叫ばれて久しいわけですが、その背景にあるのは、世間が介護職の専門性について無知であることです。なお、医師については、別途、採用ということになっているようです。

誤った活用をすれば日本のボランティアが失われる

ボランティアというのは、本来、サービスの受けてに支払い能力がない場合に発動するものです。実際、サービスの受け手に、十分な資金力があるところで、ボランティアは必要とされないでしょう。しかし本来、ボランティアとは労働であり、対価が必要とされるものです。

東京オリンピックには、スポンサーから4,000億円以上が集められているとのことです。この運営には、本当に、支払い能力がないのでしょうか。もしそれが「やりがい搾取」というイメージになってしまった場合、後でそれと知った人々は、今後、ボランティアはしないという意識にもなりかねません。

困っている人がいたら助けたいという、人間の本能に備わっている善意を正しく活用できない社会が、長続きするはずはありません。ちなみに今のところ、運営サイトでは「積極的に応募していただきたい方」という項目の中に、介護の専門性に関する条項はありません。本当に、それで大丈夫なのでしょうか。

※参考文献
・毎日新聞, 『20年東京五輪・パラリンピック ボランティア11万人 中高生枠、新設も検討 9月から募集』, 2018年3月28日
・産経ニュース, 『東京五輪パラへ8万人ボランティアを募集 要項案公表 9月中旬から』, 2018年3月28日
・朝日新聞, 『東京五輪・パラ、ボランティア11万人募集 要項案公表』, 2018年3月28日

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