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介護事業者の中学校区シフトが本格化していく

介護事業者の中学校区シフトが本格化していく

これからの介護は(より)中学校区で動き始める

高齢者の約65%は、介護が必要になっても、住み慣れた地域で暮らしたいと考えています。そこで政府が打ち出しているのが「地域包括ケア」というものです。医療や介護など、それぞれに異なる高齢者の支援ニーズを、地域全体として柔軟に提供していこうとしています。

背景には、老人ホームなどの施設が、介護の必要な高齢者の増加に追いつかないという事情もあります。老人ホームの建設にはお金がかかりますし、逆に、老人ホームに入居できるだけの十分なお金を持っている高齢者も多くはありません。

高齢者の希望を満たすことも大事ですが、どう考えても、自宅での介護(在宅介護)が主流になるわけです。だからこそ「地域包括ケア」を強化することが、実質的に唯一の取り得る戦略になっています。

ここで「地域包括ケア」は、おおむね30分以内に、高齢者に対して必要な支援を届けることができることを設計の前提としています。政府は、これを日常生活圏域として定義しています。よりわかりやすく言えば、中学校区を戦略立案の基本単位としているのです。

介護事業者も中学校区

もちろん、過去の介護事業者も、中学校区を意識して経営してきています。特に、競合分析をするときは、中学校区で考えるのが普通です。とはいえ「地域包括ケア」となると、自分とは異なる介護サービスを提供するところも意識しなければならなくなります。

現実には、複数の介護事業を行っている企業の場合、各事業所単位での経営がなされていることが普通です。本格的な「地域包括ケア」の実現に向けて、これを、中学校区のエリアで最適化していく必要性が高まっているのです。以下、日本経済新聞の記事(2018年3月26日)より、一部引用します。

介護から医療まで地域で一体となって高齢者らを支えることを目指して政府が掲げる「地域包括ケア」に対応するため、介護大手が体制を整備する。SOMPOケアグループは全国を100超に分け、各エリアに専門の責任者を配置。ツクイも全国80カ所を重点エリアに指定し、集中的に介護施設を新設する。(中略)

SOMPOケアグループは2018年度から全国を128に分け、エリアごとにスーパーバイザーという専門職を設ける。域内にある全事業所の運営や管理に責任を負い、各種の介護サービスを一元的に管轄する。(中略)

デイサービス(通所介護)事業所大手のツクイは4月から約1200の市区町村のうち80カ所を「多層化エリア(仮称)」に指定する。現在はデイサービスが中心だが、3年かけて集中して同エリア内に有料老人ホームなどの新設を進める。在宅系や施設系など、複合的な介護サービスを同一地域内で提供できるようにする。(中略)

学研ホールディングスは日本政策投資銀行と提携。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の新設数を年10カ所程度から15カ所前後まで増やすなどして、地域包括ケアの体制づくりを進める。武田薬品工業は4月1日付で営業所を8割増の154に増やして医療機関や介護施設などのニーズを探り出し、収益拡大につなげる。

中小の介護事業者が買収されていく

先のニュースのように、大手の介護事業者は、中学校区レベルでの戦略策定に入っています。その分析結果には、それぞれの中学校区で、足りていない自社の介護サービスが見える化されているはずです。そうなると、大手としては、その中学校区における買収ターゲットが明らかになるでしょう。

介護事業者の多くは厳しい財務状態にあり、毎年過去最高の倒産件数を記録しているような状態です。この状態であれば、大手にとっては、自社で新たに介護サービスを開始するよりも、買収したほうが早いということになります。特に人材の採用が困難なので、買収することで、採用コストを下げるというのは合理的な戦略です。

介護業界は、上場大手10社の売上を合計しても、介護市場の1.4%程度にしかなりません。それだけ、介護業界は戦国時代にあるということです。これが「地域包括ケア」の実現を前に、激化しようとしているわけです。この流れにどう乗るかが、介護事業者の未来を変えていくはずです。

※参考文献
・西野 辰哉, et al., 『一中学校区を基本とする日常生活圏域設定の妥当性検討』, 住総研, 研究論文集No.40, 2013年版
・日本経済新聞, 『介護、地域できめ細かく 利用者情報を共有』, 2018年3月26日

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