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介護職による高齢者の虐待が過去最多に

介護職による高齢者の虐待が過去最多に

介護職による高齢者の虐待よりも・・・

厚生労働省によると、2016年度の、介護職による高齢者の虐待は452件となり、過去最多となりました。介護職による虐待は、調査をはじめてから毎年ずっと増加し続けています。ただし注意したいのは、家族や親族による家庭内の虐待は、同年度の調査結果として16,384件と、ケタ違いに多いということです。

そもそも介護を必要とする高齢者の数が増えていくのですから、虐待の数も増えていくのは創造に難くありません。本当は発生率のモニタリングが必要なはずですが、虐待は密室で発生するため、その実態が把握しにくいという特徴があります。本当のところはわからないということです。

それでも、介護職による高齢者の虐待は、観察眼のある介護のプロ(同僚)が発見するため、家庭内の虐待よりも多く見つかるはずです。そう考えると、16,384件という家庭内での虐待の数字には驚かされます。介護職による虐待のほうがニュースになりやすいのですが、本当は、家庭内での虐待のほうが深刻と考えるべきでしょう。

誤解を避けるために付け加えておきますが、介護職による高齢者の虐待も大きな問題です。それへの対処も求められます。同時に、ニュースになりにくいのですが、家庭内における家族や親族による虐待は、ケタ違いに発生しており、そちらへの早急なる対応が必要なのです。

真面目に一生懸命の介護をしている人ほど危ない?

高齢者の虐待が発生しやすい環境に関する研究によれば、虐待をしやすいのは(1)息子か夫である(2)要介護者と同居していたりして常時接触している(3)介護に関する知識が不足している(4)介護を助けてくれる人がいない(5)要介護者と過去になんらかの軋轢がある、という人です。

周囲からの助けのない中、要介護者と同居をして、ひとり奮戦している男性ほど危ないということです。真面目に一生懸命というのは、仕事では良いことかもしれません。しかし介護においては、それはかえって危険なことかもしれないのです。過去に要介護者との軋轢がなくても、介護をする中で、それが生まれてしまえば、本当に危険です。

自分が虐待してしまいそうな場合は(1)介護のプロにそれを打ち明けて助けを求める(2)介護に関する知識を得るための無料セミナーなどに参加する(3)家族会を紹介してもらって参加する、といった対応が必要になります。

とはいえ「抱え込まないで!」というアドバイスは残酷です。精神的に余裕がなくなってしまっている人に対しては、ただアドバイスするのではなく、積極的に連れ出すなど、周囲からのアプローチもまた不可欠になってきます。

社会インフラとしての介護事業者

もちろん、介護職による高齢者の虐待についても、対策が必要です。しかしそれ以上に緊急性が高くなっているのが、家族や親族による虐待という認識が求められます。介護職による虐待に対しては、介護事業者の多くが予防やチェックのための体制を整えています。しかし、家族や親族による虐待についてはどうでしょうか。

「地域社会による見守り」というと、耳障りはよいものです。しかし、隣に暮らす人とも交流がなくなり、地域社会が衰退したと言われる日本において「地域社会による見守り」というのは、実質的には「なにもしない」ということに近くなってしまっているでしょう。

では、虐待の予防とチェックのための体制を、密室になりがちな家庭内に、どう持ち込めばよいのでしょう。唯一、その可能性になり得るのは、虐待について訓練を受けているプロの介護職が、より多くの高齢者と関わっていくということだと思われます。

国としては、介護福祉士などの資格を持っている介護職には、一段上の権限を付与し、積極的な虐待のチェックを行えるようにすべきだと思います。介護職として一番困るのは、家族が拒否して、要介護者に会えないという状況です。そうした状況を、現場任せにしていたら、手遅れにもなりかねません。

※参考文献
・TBS NEWS, 『高齢者が介護職員から虐待受けた件数、過去最多に」, 2018年3月9日

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