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【保存版】介護未満の高齢者に注目する「フレイル評価」をしよう(+5)

介護未満の高齢者に注目する「フレイル診断+5」をしよう

「まだ大丈夫かな?」という素人判定が一番危ない

周囲で、親の介護がはじまる人が増えてきました。ただ、こうして介護に近いところで仕事をしていると、どうしても気になることがあります。それは、親に介護が必要かどうかを、介護について知識のない人々が判断しているということです。

よく「うちも心配なんだよ」「そろそろ危ないかなと思ってる」「よく自宅で転んでるみたい」といった発言を耳にします。ですが、この段階で実際に要介護申請をして、認定を受けるといったアクションをする人は多くないという印象です。親が子供に心配かけまいと「まだ大丈夫だ」と強気な発言をすることも原因かもしれません。

そうして、いきなり重たい介護がはじまってしまうのです。当たり前なのですが、何事も早期発見と早期対応が重要でしょう。介護もまた、早めに対応することで、重たい介護になること自体を防ぐことが可能です。介護未満の高齢者ほど、周囲に専門家がいないため、注意が必要だという認識が求められます。

まずはフレイル評価をしよう

健康診断は、病気を放置して大変なことにならないためのものでしょう。介護もまた、健康診断のようにして、介護が重たくならないような対策を打つことで、大変なことになる前に対処できるのです。問題は、介護には健康診断に類する、一般的に統一された診断が(まだ)ないというところです。

ここで注目したいのが、健康な状態と、要介護の状態の中間にあたるフレイル(Frailty)という概念です。詳細はリンク先を見ていただくとして、要点は、この中間の状態であれば、健康な状態に戻ることもできますが、同時に、要介護の状態にもなり得るということです。

世界的に参照されるフレイル評価であるFriedらのphenotypeモデルを、国立長寿医療研究センターが使いやすくしたものがあります。以下の5項目について3つ以上に該当する人はフレイルであり、すぐに対応する(たとえば地域包括支援センターに行きましょう)必要があります。3つ未満であれば、要注意ですが、フレイルとは言えません。

評価項目
評価基準
1. 体重減少 「6か月間で2~3kg以上の(意図しない)体重減少がありましたか?」に「はい」と回答した場合
2. 倦怠感 「(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする」に「はい」と回答した場合
3. 活動量 「軽い運動・体操(農作業も含む)を1週間に何日くらいしていますか?」及び「定期的な運動・スポーツ(農作業を含む)を1週間に何日くらいしていますか?」の2つの問いのいずれにも「運動・体操はしていない」と回答した場合
4. 握力 (利き手における測定)男性26kg未満、女性18kg未満の場合
5. 通常歩行速度 (測定区間の前後に1mの助走路を設け、測定区間5mの時間を計測する)1m/秒未満の場合

握力は、測定器がないと自宅ではわからないので、判断は少し難しいかもしれません。ただ、歩行速度1m/秒(1秒間に1mの速度で歩ける)というのは、信号機が青のうちに横断歩道を渡りきれる速度として設定されています。ですから「横断歩道を渡りきる前に、信号が赤に変わってしまうことがある」と読み替えれば、簡単です。

フレイル評価以外に特に注意したい5つのこと(+5)

フレイル評価だけだと、どうしても見落とすこともあります。そこで以下は、フレイル評価以外にも注意しておきたいことを5つ、KAIGO LABとして、以下簡単にまとめます。少しでも心配があれば、なんらかのアクションをするようにしてください。

1. 聴力の衰えはないだろうか?

「耳が遠くなった」というのは、老化にともなう仕方のないことではあります。ただ、そうして聴力が衰えると、他者とのやりとりが面倒になります。会話が聞き取れずに、恥ずかしい思いをするくらいならと、外出が減ってしまったりすると、そのままフレイルの世界に向かってしまう可能性が高まるのです。補聴器もかなり進歩してきていますから、聴力が衰えたら補聴器をつけるという当たり前のことを徹底するのが大事です。

2. 歯周病は進んでいないだろうか?

歯周病は、歯茎の病気というだけでなく、そこから全身に病原菌を運んでしまう入り口としても怖い病気なのです。また、歯周病は認知症の原因とも言われています。色々と注意することも多いのですが、他者から観察する場合は(1)歯を磨いた時に出血する(2)口臭が気になる(3)食べ物がかみづらい、といったことがチェック項目の一部になります。

3. 家事代行サービスを使いすぎていないだろうか?

親孝行だと思って、親の生活に家事代行サービスを導入したら、要介護状態になってしまったというケースがあります。年老いた親にとって、家事もまた、運動のひとつだと考えると、その原因も推測できるでしょう。介護の世界では、残存能力活用の原則というものがあります。本人が自分でできることは、できるだけ自分で行うようにすることが大事という意味です。

4. 家の中でつまづいたり転んだりしていないだろうか?

転びやすくなっていると、それだけで、外出が強くなり、外出が減ってしまうことがあります。外出が減ると、運動不足になり、さらに転びやすくなるという悪循環にも入りやすいのです。家の中で転んだという話は、意外と、親は子供にしないものです。「転んだくらいで子供に心配をかけるなんて」と考える親も多いのです。しかし室内での転倒は、要介護状態になる骨折につながりやすい、非常に怖いことなのです。

5. 自分が物忘れをすること自体を忘れていないだろうか?

「牛乳を買ってきてと頼まれたのに、それを忘れて帰ってきてしまった」というのは、まだ認知症ではない可能性が高いです。しかし「牛乳を買ってくることを頼まれた」という事実を忘れている場合は、認知症を疑う必要があります。自分で自分の物忘れを気にしている段階であれば、まだ大丈夫である可能性も高いということです。もちろん、あまりにも頻繁な物忘れなど、疑いがあれば、専門家によるテストを受けてみる必要もあります。

※参考文献
・国立長寿医療研究センター, 『フレイルの進行に関わる要因に関する研究(25-11)』, 長寿医療研究開発費 平成26年 度総括報告書
・日本老年医学会, 『フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント』, 2014年5月
・佐竹昭介, 『虚弱(フレイル)の評価を診療の中に』, 長寿医療研究センター病院レター49号, 2014年3月25日
・朝日新聞, 『聴力低下と社会的活動の減少で、要介護リスク2倍に』, 2017年11月2日
・松下健二, 『アルツハイマー病修飾因子としての歯周病の可能性に関する研究』, 長寿医療研究開発費(平成24年度)総括研究報告
・関 龍太郎, 『デンマークの高齢者福祉政策をささえるもの』, 海外社会保障研究 Spring 2008, No.162
・NHKスペシャル, 『認知症800万人時代 認知症をくい止めろ ~ここまで来た!世界の最前線~』, 2014年7月20日

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