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横須賀市の人口が40万人を下回ることの意味を考察する

横須賀市の人口が40万人を下回ることの意味を考察する

横須賀市の人口が40万人を下回る

横須賀市は、1977年には人口が40万人を超え、1992年に43万人のピークを経験しています。この横須賀市の人口が、今年の2月に、40万人を下回ったというニュースが入ってきました。以下、NHK NEWS WEBの記事(2018年2月14日)より、一部引用します。

造船業など地域産業の衰退によって人口が減り続けている神奈川県横須賀市では今月、人口が41年ぶりに40万人を下回り、市は住民の流出を食い止めるため子どもの医療費の助成拡充など子育て支援策に力を入れることにしています。(中略)

また、総務省のまとめでは去年1年間に横須賀市からほかの自治体に転出した人の数は転入者を1112人上回り、全国の自治体の中で8番目に多かったということです。横須賀市は住民の流出を食い止めるため、子どもの医療費や保育料の助成拡充など子育支援策に力を入れることにしています。(後略)

横須賀市といえば、スカジャンや海軍カレー、新鮮な魚介類が入手できるポートマーケット、和菓子の老舗や洋菓子の有名店など、文化的にも十分魅力のあるところです。それにも関わらず、人口の流出が止まりません。

人口が40万人を切るということ

国土交通省は、人口の減少とその影響について、かねてより多角的な分析をしてきています。そうした分析の中で、誘致圏人口(日常的に誘致できる人の数)と、生活を支える各種サービスの経営の関係性に関するものがあります。

まず、大型小売店は、62万人の誘致圏人口がいないと経営が苦しくなります。人口がこれに足りない地域では、はじめから超大型の駐車場を併設することで経営を乗り切ります。これに対して、百貨店は77万人の誘致圏人口が安定的な経営には必要です。大型小売店があっても、百貨店のない地域があるのは、このためです。

高度医療施設の場合が39万人、地域医療支援病院は32万人を下回ると、撤退を考えないとならなくなります。大学は微妙なところで、32万人5千人を下回ると、存続確率が80%になります。横須賀市には防衛大学をのぞいて大学が2つ、短大が1つありますが、そろそろ危なくなってきているかもしれません。

もちろんこれらは、あくまでも誘致圏人口であって、直接的に、自治体の人口ではないことに注意は必要です。とはいえ、そもそも自治体の境界は、歴史的な変更を伴いながらも、誘致圏と似た考え方で決まってきたはずです。ですから、なんらかの参考にはなるでしょう。

本質的に人口を支えるものはなんなのか

先にも述べたとおり、横須賀市には、日本全国と比較してもレベルの高い文化的な魅力があります。しかしそれでも、人口の減少が止まらずに悩んでいるのです。大雑把に言ってしまえば、人口の増減に対して、文化的な魅力というのは、それほど影響力がないということです。

当たり前すぎて忘れられているのですが、本質的に地域の人口を支えるのは、条件のよい働き口(雇用)です。条件のよい働き口があれば、他の地域から人口が流入してきます。そうして底堅い人口があればこそ、地域の文化的な魅力も高まっていくのです。

文化的な魅力というのは、条件のよい働き口の結果にすぎないということです。いかに「こういうところに暮らしたい」という魅力があっても、働き口がなければ、誰も移住してこないでしょう。逆に、本当は地元にいたくても、よりよい働き口が他の自治体にあるのなら、後ろ髪をひかれても、人は出ていってしまいます。そして文化が廃れます。

特にインターネットが発達した現代において、廃れた地域の文化を取り戻しても、人は帰ってきません。文化は、人の結果であって、原因ではないからです。人の原因になるのは、繰り返しになりますが、条件のよい働き口です。

自治体はなにをしなければならないのか

それにも関わらず、日本の多くの自治体は「魅力の発信」を行っています。しかも、どこの自治体も判で押したように「美しい自然と、美味しいもの」を宣伝しているのは滑稽です。日本は、そもそも美しい国ですし、食べ物は世界一美味しいところです。そうした環境(レッドオーシャン)で頑張っても、差別化が効くはずもありません。

「うちの自治体には、他よりも条件のよい働き口がありますよ」という宣伝ができない限り、その自治体は長期的には滅びます。これも当たり前ですが、条件のよい働き口のあるなしと、自治体の税収は相関するのです。そして、潤沢な税収があってはじめて、より優れた公共サービスの提供が可能になります。

自治体は、表面的な魅力の発信をやめて、そこで暮らす人々の平均年収を指標(KPI)としなければなりません。地元から起業家が生まれ、そうした起業家の足を嫉妬から引っ張らず、より多くの条件のよい働き口を作っていかないとならないのです。

個人の幸福は、必ずしも、経済的な豊かさとは関係がありません。しかし、人間の集団としての幸福は、経済と密接に関係しています。「お金じゃないよ」というのは個人の価値観として自由なのですが、自治体レベルの人間の集団の経営はお金の問題なのです。お金だけで全ては解決しませんが、それがなければ衰退は止まりません。

※参考文献
・NHK NEWS WEB, 『横須賀の人口40万人下回る』, 2018年2月14日
・国土交通省, 『メッシュ別将来人口推計を活用した分析の展開(第3章)』, 2016年6月
・国土交通省, 『国土のグランドデザイン2050 参考資料』, 2016年7月4日

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