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介護職の高齢化も止まらない?合成の誤謬を越えるべきとき

介護職の高齢化も止まらない?合成の誤謬を越えるべきとき

上がり続ける介護職の平均年齢

介護職(介護労働従事者)の平均年齢は上がり続けています。2009年度に44.4歳だった平均年齢(全国)は、2016年度には46.8歳まで上がっています。介護には、身体を酷使する労働もありますから、介護職の年齢が上がると、介護サービスの質にも影響しかねません。

若手が入ってこない、入ってきても辞めてしまうという問題もあるのでしょう。しかしこれは、日本の未来にとって深刻な問題です。以下、長崎県の話ではありますが、長崎新聞のニュース(2018年2月11日)より、一部引用します。

厚生労働省所管の公益財団法人介護労働安定センターが実施した2016年度の実態調査によると、長崎県の介護労働従事者の平均年齢は45・8歳で、全国と同様に高齢化が進んでいる。

職種ごとの平均年齢は都道府県別で算出していないが、国全体では訪問介護を担うホームヘルパーが53・3歳で最も高い。また60歳以上がヘルパー全体の37%を占め、10年前の15・2%と比べて倍以上に増えている。(後略)

そもそも日本全体の平均年齢が47歳に近づいていますから、これは介護業界だけの問題ではありません。ただ、介護の仕事には肉体を酷使する側面もありますから、他の業界よりも人材の高齢化は大きな影響を持ちます。

「神の見えざる手(invisible hand of God)」には逆らえない

「神の見えざる手(invisible hand of God)」とは、イギリスの経済学者であるアダム・スミスが『国富論』で示した考え方です。背景にはいろいろあるのですが、現代的には、市場における自由競争が、その社会が持っている資源を最適に分配するという意味で使われています。

社会にとって、もっとも需要な資源とは、労働者となる人材です。とくに若者は、より長い期間にわたって富を生み出す存在となるため、社会にとっては貴重なとくに資源です。そうした貴重な資源は、より多くの富を生み出す業界に、選択的に配置されなければなりません。そうしないと、税収も減ってしまうからです。

このままでは、日本の高齢者福祉は大変なことになります。その危機感から、若者を介護業界に配置させようと動くことには、理解できる部分もあります。しかし、介護業界が、今のような日本でも最悪の待遇という状態にある限り、そこには「神の見えざる手」が働き、若者はやってきません。

「待遇は重要ではない」という考えが業界を破壊する

個々の人材レベルでは、働く意義について「待遇は重要ではない」と考えるのは自由です。しかし、そうして待遇を求めない人が業界の多数になってしまうと、その業界には新人が入ってこなくなります。結果として、そうした業界は淘汰されてしまうのです。

個人といったミクロなレベルでは理想的なことであっても、業界といったマクロなレベルからは最悪の結果につながってしまうことは少なくありません。こうした状況をさして、特に「合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)」という言葉が与えられているほど、人間が陥りやすい罠なのです。

今回のニュースにあるように、介護業界で働く人材の高齢化が止まらないのは、よくないことです。しかしだからといって、今の介護業界の待遇が改善されないままに、小手先の「魅力の発信」などでは、若者は集まってきません。それは「神の見えざる手」への挑戦であり、むなしい結果になることは自明なのです。

※参考文献
・長崎新聞, 『若手の確保困難 介護職員平均45.8歳』, 2018年2月11日

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