閉じる

85歳のドライバーが登校中の女子高生2人をはねる(前橋事故)

85歳のドライバーが登校中の女子高生2人をはねる(前橋事故)

85歳のドライバーが登校中の女子高生2人をはねる(前橋事故)

高齢ドライバーの運転問題は、KAIGO LAB でも過去になんども取りあげてきました。もちろん、いちばん良いのは、自動運転の実現が早まることです。誰もが自動車による移動の利益を享受しつつ、事故のない社会が実現されるのが理想だからです。とはいえ、自動運転の実現には時間がかかり、これを待っていることもできません。

そこで、緊急の論点としては(1)高齢者のほうが運転に自信を持っているという事実をどうするか(2)免許返納しやすいように買い物難民化対策を急ぐべき(3)(自動運転の実現までは)自動車の運転サポート機能を充実させる、という3点があります。

そんな中、1月9日朝8時半ごろ、85歳のドライバーが登校中の女子高生2人をはねるという痛ましい事故が起こりました。新聞各紙はもちろん、テレビでも大きく報道されたので、記憶に新しい人も多いと思います。この事故について振り返り、あらためて、高齢者の運転について考えてみます。まず、この事故について以下にまとめます。

事故の状況について

・見通しのよい直線道路(歩道なし)で、対向車線にはみ出し160m逆走した
・制限速度は40kmのところ「70kmは出ていたと思う」との目撃証言
・道路にブレーキの跡はなく、車は他の車や壁などに次々とぶつかって止まった

ドライバーの健康状態について

・ドライバーは健康で認知機能検査も通過し、昨年10月免許を更新していた
・ドライバーの家族は「この日は体調も良くなかった」と証言している
・事故後、ドライバーは「気がついたら事故を起こしていた」と供述した

事故の前兆について

・ドライバーは過去に「壁をこする」などの小さな事故を何度も起こしていた
・ドライバーを知る別の男性は「普段から危険な運転をしていた」とコメント
・ドライバーは、仲のよい知人女性の送迎を(ほぼ毎日)していた

家族の対応について

・家族は免許を返納するよう促していたが、ドライバーはそれに応じなかった
・事故の前日にも、家族はドライバーに対して「車の鍵を隠す」と宣言していた
・当日の朝も制止したが、家族の目を盗んでいつもよりも2時間早く出た

振り返りから言えること

あくまでも、各種ニュースの情報が正しいと仮定しての話です。まず、事故の状況については、もはや何も言うことがありません。最新のセンサーを搭載した自動車であれば避けられた事故でもあります。道路標識を読み取る技術、ぶつかりそうなら自動で減速する技術などは、すでに確立されています。

ドライバーの健康状態は、公的な認知機能検査ではとらえきれないリスクがあることを示しました。これを厳しくするという方向は、今後、具体的な議論になっていくことでしょう。特に、体調がよくないのに運転に向かったという、体調のばらつきへの対応は強化されるものと思われます。

今回の事故では、前兆が多く認められ、それが報道されている点が、他の事故に関するニュースと異なります。特に痛ましいのは、この事故を起こした高齢者にとっては、自動車の運転が社会とのつながりを維持するための必要条件であったことです。時間の問題で、いつかは起こってしまう事故でした。

そして、家族は、可能な範囲で、きちんと対応していたように思われます。家族と同居している高齢者が減っている現代にあって、ここまできちんと対応できている家族は少ないのではないでしょうか。それでも、今回の事故は起こってしまいました。

確かに「車の鍵を隠す」と宣言することは、結果としては悪手になってしまっています。しかし、事後ならなんでも言えるわけで、家族としては、それで精一杯という背景もあったはずです。ニュースでは報道されていない葛藤があって、その上での宣言だったと考えるべきかと思います。

考えなくてはならないこと

こうした事故は、自動運転が実用化されるまでは、残ってしまうと考えられます。しかし、これを少しでも減らすためには(1)高齢者による最新の安全装備を搭載していない自動車の運転禁止(2)免許返納をさせることに失敗している家族の積極支援(3)高齢者が運転している地域での自衛策の徹底、などを急がないとなりません。

自動車には、経済を牽引し人命救助に貢献する反面、世界で毎年120万人以上を事故死させているという「功罪」があります。日本社会は、この「功」に着目して発展してきました。また、警察や自動車メーカーは「罪」と戦ってきた歴史を持っています。

日本全体としては、1970年をピークとして、自動車による死亡事故の総数を減らしてきています。しかし、2015年ごろから、下げ止まりが確認されるようになりました。そして今後は、今回のような高齢ドライバーによる事故が続いてしまうと予想されているのです。

これまでと同じような対策では太刀打ちできないことは明白です。であれば、具体的に、新たにどのような対策を設計し、実行していくのかというところが問われています。とにかく、自主的な免許の返納を即すという対策では不十分と言わざるを得ません。

※参考文献
・読売新聞, 『女子高生はねた85歳何度も事故、免許返納促す』, 2018年1月10日
・NHK NEWS WEB, 『女子高校生2人重体事故 運転の85歳は逆走していたか』, 2018年1月11日
・産経ニュース, 『知人女性との交流楽しみ、運転に固執か 頻繁にセンター通い』, 2018年1月16日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由