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主介護者でないからこそできること

主介護者でないからこそできること

主介護者と介護生活

介護家族には様々な形態があります。同居している介護家族、別居・遠方に住んでいる介護家族、同居していてもほとんど介護に関わらない家族、別居していても熱心に通って介護をしている家族などです。

特に、同居、別居を問わず、主たる介護の担い手として関わる家族を、主介護者と言います。長年この主介護者は妻、嫁、娘という女性家族が担ってきており、男性介護者が増えてきたとはいえ、現代でも女性家族がその位置付けであることはあまり変わっていないのが実情でしょう。

さて、介護生活においてはこの多様な介護家族間での関係性が、介護を必要とする要介護者の介護生活はもちろん、全ての介護家族、孫世代や甥・姪という直接の関わりが少なそうな家族にまで影響を及ぼします。

突然やって来る介護生活、できれば先延ばしにしておきたい介護生活に対して、利害関係者である家族が集まって、さてどうしたものか、と役割分担や金銭管理まで明確に決めて合意形成をする家族会議が行われるケースなど見た事がありません。

家族会議が開かれるのは、揉め事や決め事が大きくなったりもつれたりした事後がほとんどです。そして、多くの場合、しわ寄せがこの主介護者に来てしまうのが散見される日常です。

主介護者を悩ませる種は、要介護高齢者本人との関係や介護それ自体の負担がほぼ1番です。しかし、それと同じくらい大きいのが家族間の関係性ストレスです。この関係性ストレスは、主介護者ではない他の家族のあり方で変わってきます。以下、エピソード(本人が特定できないように一部真実とは異なる記述があります)で考えてみます。

認知症介護をするある姉妹のエピソード

Aさんは80代女性の認知症の方です。5分前に説明したことを何度も繰り返し、週に1回以上は失禁があり、半年に1回くらいは家に帰れなくなり保護されることを繰り返しています。Aさんには二人の娘さんがいます。そのうち、50代で看護師の仕事をしている独身の次女と同居して、二人で暮らしています。

長女は、隣県で家庭を持ちながら正社員として事務の仕事をしています。週末には介護の手伝いをしに来てくれる長女ですが、日々Aさんの介護をしている次女との溝は深まっていきました。

当初、看護師である次女がAさんの介護を「私しかできないでしょ」と引き受けたのですが、介護生活は次女にとって想像以上の負担だったようです。介護のストレスは次女を蝕み、それを、週末にやってくる長女にぶつけるようになりました。

「姉さんには私の苦労はわからないのよ」「姉さんみたいに家族がいるわけじゃないし、どうせ独り身の私がやるしかないじゃない」「姉さんが一緒に暮らしてみればいいじゃない」

長女から相談を受けた私たちは、長女と一緒に考えました。その場で、ちょうど1ヶ月後に、Aさんの夫、姉妹の父に当たる方の3回忌があるとのことでした。それを聞いた私たちは、親戚が集まるその場で、Aさんと長女から日頃の思いを記した手紙を次女に渡すことを提案しました。

長女ははじめは戸惑っていました。まずAさんが手紙を書けるわけがないので無理だと言いました。しかし、私たちが実際にご本人に説明をして次女への想いを聞いたところ、ご本人は意外なほど達筆に次女へのメッセージを書いてくれたのです。

その中には「私の子供に生まれて来てくれてありがとう」という記述がありました。それを読んだ長女も、母が書けたならと、次女への手紙を書きました。

法事が終わった後に、私たちは次女のほうから連絡をもらいました。手紙をもらって驚いたけれど、母と姉からの手紙に書いてあった想い、素直になれなかった自分などを振り返り、沢山泣いたそうです。そして、数十年ぶりに姉妹で色々なことを話したそうです。

二人ともAさんがまだ字を書けることにたいそう驚いたと言います。Aさんは手紙を書いたことはもちろん忘れていましたが、泣き顔の次女を見て心配して声をかけたそうで、次女はそのAさんの純粋な母性に触れてまた泣いたと言います。

主介護者でないからこそできること

介護家族は色々な携わり方ができますが、分類すると、気を使うか、お金を使うか、体を使うかです。主介護者はこの全てを使っています。ならば、主介護者を支える他の介護家族は何を使えばよいのでしょう。

体を使うのが一番かもしれません。しかし、それが実際にはできない事情があるから別の人が主介護者なのです。それではお金を使いましょうか。援助できるだけの資金があればそれも良いですが、万人の策ではありません。それに、こうしたことにお金だけ渡されても満足しきれないのが人間でもあります。

ならば、先のエピソードのように、気を使うことを、一段丁寧に考えてみてはいかがでしょうか。日頃思っている感謝や労いの気持ちを、主介護者に対して改めて口にするのは家族ならば恥ずかしさもあるでしょう。ましてや、実の親兄弟ではない嫁や婿義兄弟などの関係であればなおさらです。

しかし、だからこそ、お互いに気が届きにくく、お互いの想いがすれ違って行ってしまい、取り戻せない関係になってしまいます。そうなる前に、日頃の想いを手紙にすることはアナログですが、インパクトがある方法です。

あなた自身が主介護者に手紙を書くことはもちろんですが、要介護者の声を代筆することは、主介護者ではない家族だからこそできることでもあります。要介護者本人と主介護者、主介護者とそうではない家族の関係を良好に保ちながら進む事が、長い介護生活には大切な要素です。

年末年始、親戚中が顔を合わせる機会も多い時期です。是非この機会に、要介護者になっている親の話を聞いて手紙を代筆したり、主介護者への想いを伝えてみてはいかがでしょうか。家族の絆を深める機会、介護生活を乗り切る為に、できることは少なくないはずです。

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