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要介護者と年賀状(たった1枚の支援)

要介護者と年賀状(たった1枚の支援)

年末における年賀状の話題

年の瀬が迫ると、何かとイベントや行事に追われますね。忘年会、クリスマス、大掃除、そして年賀状です。近年はメール文化の普及や時候の挨拶が廃れてきたせいもあり、年賀状の発行枚数も年々減少の一途をたどっています。

あなたはどうでしょう。PCを駆使した手作り年賀状を作っているでしょうか。送られてきた人にだけ返しているでしょうか。最近は、メールに画像だけを添付という方法も増えてきていますね。

年賀状に関する捉え方は人それぞれです。とはいえ、世代別にある程度の傾向はあるように思います。そこで今回は、要介護高齢者の年賀状事情について考えてみます。まず、私が、10年以上、彼ら/彼女らの年賀状に関する日常会話を聞いてきた一部を少しご紹介します。

「年賀状書くのが忙しいから、今月(12月)半ばからはデイサービスは全部お休みにさせて下さい」

「年賀状はだんだんと少なくなってきますよ。去年送られてきた人からこなかったり」

「毎年年賀状書くことだけで繋がっている人もいますからね。年賀状で生きていることをお互い確かめ合っているんですよ」

「もう面倒くさくって、ほとんど書いてないね。兄弟親戚も、友人もみんな死んじゃったし」

「年賀状よりもだんだん喪中のお知らせが増えてくるのよね」

「もう去年で年賀状は最後にしたんです。最後の挨拶も全部したしね。逆にお友達なんかは今年で最後にしますっていう年賀状もきますよ」

「もう手(眼)が悪くなっちゃったから書けないんだよね。だから書くのやめちゃったよ」

これらは年末の12月に多く聞かれる言葉です。年賀状を書くことに文字通り命をかけている方も少数います。しかし、大半は、同年代の友人や親戚の死別によって、または加齢や、心身の不調によって年賀状を書くという作業自体の負担が増えて、書くことを半ば諦めている方ばかりです。

本当は、年賀状を書きたいし、もらいたい?

要介護高齢者は、一言目では「もう歳だから仕方ない」と言います。しかし、私たち若い世代に比べて、文化として長年年賀状を書いてきた彼ら/彼女らは、その二言目には「書ける(元気がある)なら書きたい」「(書く相手がいるなら)書きたい」と付け加えるのです。

つまり、書きたいけど、心身の不調で書く力がなかったり、労力に見合った返事が(相手も老齢で)来ない場合も多いため書く意味がないと思ってしまっているからこそ書かないのです。

この気持ちは例えるならばバレンタインデー前夜の男女に近いかもしれません。「どうせチョコ(年賀状)もらえないし」と自分に言い聞かせたり「チョコ(年賀状)もらっても迷惑かな、嫌がられ(負担になっ)たらどうしよう」と思いを形にできない・・・そんな心境です。

インターネットで「高齢者 年賀状」と検索するとほとんどヒットするのは「年賀状の丁寧な辞め方」です。これを参考にするのは、想像ですが、インターネットを駆使して自分の時間を自由に使えるアクティブシニアでしょう。

要介護高齢者は自ら辞めたくて辞めたのではなく、辞めざるを得ない状況になっていったというのが介護現場職にいる私の肌感覚です。そして、そこに意思があるなら、それを支援したくなるのは、介護職である私たちのクセとも言えるものです。

年始における年賀状の話題

さて、要介護高齢者が新年を迎えると、年賀状をめぐる日常会話は以下のように変化します。

「あなた(介護職・施設など)から年賀状きたわよ」

「ケアマネさんもくれたのよ」

「昔っからの友達からきたんだよね。ひ孫が出来たってさ」

「年賀状のお年玉番号が当たったの」

「うちは喪中なのに毎年来るから送ってきたんだよ(笑)」

「子供たちがお正月に帰省してきてね。直接孫が渡してくれたのよ」

「いらないって言ったのに送ってきてくれたから返事書かなきゃいけないわ(笑)」

「デイサービスからだけだけど久しぶりに年賀状きたよ。ありがとう」

「お返事書きたいから、あなた書くの手伝ってくれる」

「ポスト見てきてくれない。年賀状入ってないかしら」

「返事書かなきゃいけないから大変なのよね(笑)」

本当に肌感覚ですが、おそらく、今どきの若い人たちよりも、要介護高齢者の皆さんはたくさん年賀状をもらっているのが実情だと思います。全盛期のそれと比べれば少ない枚数かもしれません。しかし、それでも年賀状は年末年始で要介護者の生きる力に大きな影響を与えるものだと毎年痛感します。

たった1枚の支援

年末にはネガティブな言葉を発していた皆さんが、とても嬉しそうに年賀状やそれにまつわるエピソードを語ってくれるのです。そして、少なからず、お返事を書くという意欲的行動に繋がる方もいます。

介護施設・事業所からしか届かない方もいます。しかし、その1枚が来ることが要介護高齢者の方々にとってはかけがえのない喜びであり、その1枚に一筆を書いた職員の手を握って涙しながらお礼をされる方までいます。

彼ら/彼女らが過ごしてきた年賀状文化は、年末の大仕事であり、箱根駅伝を見て、餅を食べながらニヤニヤとめくって眺める年始の日常生活であったようです。そんな高齢者に年賀状を書くという作業は、たしかに負担です。しかし、年賀状をもらうということは、多くの高齢者にとって、とても嬉しいことなのです。

この時期には、要介護高齢者につながりのある人ならば誰もができる「たった1枚の支援」があります。高齢化が進む日本では、もはや年賀状は、年始の挨拶ではなくて、年始の支援になりつつあります。今年も残りわずかとなりましたが、この「たった1枚の支援」を考えてみてください。

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