閉じる

外国人技能実習制度を現代の「奴隷制」にしないために必要なこと

外国人技能実習制度を現代の「奴隷制」にしないために必要なこと

日本の外国人技能実習制度そのものが問題視されている

国際人権規約(自由権規約)は、2015年8月時点で、世界168か国が批准しています。日本もこれを、1979年に批准しています。この国際人権規約は、これを批准した国家を法的に拘束する多国間条約であり、よくある努力目標ではありません。

自由権規約委員会は、1980年代より、非政府組織(NGO)などとの協力をもって、批准国の人権状況を把握し、その改善に対する勧告などを出す機関です。2014年7月15〜16日、ジュネーブの国連欧州本部において、この国際人権規約にもとづく日本政府報告書審査(第6回)が開催されています。

この結果、自由権規約委員会が日本政府に求めている改善について、日本弁護士連合会が資料としてまとめています。その資料(2015年8月)より、以下、外国人技能実習制度についての改善要求を引用します(改行位置のみ、KAIGO LAB にて修正)。

総括所見16項では,人身取引の一形態として技能実習生制度を取り上げました。外国人研修・技能実習制度は,外国人に対し技能・技術等の習得を援助・支援することによって,わが国の有する汎用性の高い技術を移転し,国際社会に貢献することを目的として開始された制度でしたが,実態として,外国人研修生・技能実習生が,最低賃金を下回る手当によって長時間労働を強いられたり,逃亡防止のために旅券や通帳等を取り上げられたりするなど人権侵害を受けている事例が数多く報告されてきました。委員会は,2008年の第5回政府報告書審査に対する総括所見においてもこの問題を取り上げています。

2010年7月施行の出入国管理及び難民認定法改正(以下「改正入管法」といいます。)により,外国人研修・技能実習制度は,公的研修及び非実務のみの研修の場合を除き,入国当初から労働関係諸法令が適用される技能実習制度に一本化されるようになりましたが,改正入管法施行後も,技能実習生が,「最低賃金を下回る低賃金にて割増賃金も支払われることなく長時間労働を強いられている」「性的搾取の対象となっている」「過労死が疑われる」等,数多くの問題事例が報告されていました

委員会は,日本政府に対し,事業所への立入調査の回数を増やすこと,独立した苦情申立制度を設置すること,労働搾取の人身売買事案やその他の労働法違反事案に適切な制裁を課し,処罰することを勧告するとともに,技能実習制度を,能力向上に焦点をあてた新しい制度へ改めることを検討すべきとしています。この勧告の根拠とされている規約8条は奴隷制と強制労働を禁止している条項であり,最低賃金以下で働き,多くの実習生が健康を害し,自殺や過労死を引きおこしている状況を深刻な人権侵害と捉えているのです。

世界から「奴隷制」として指摘されている制度が拡大する

こうして、世界からは「奴隷制」として指摘されてしまっている外国人技能実習制度は、本来であれば、外国人が日本の技術を学ぶための制度です。しかし、その実態は、人材確保がままならない低賃金労働となっている業界にとっての人材確保の手段になっているというのは、多くの日本人が知っていることです。

よく、この外国人技能実習制度の話題になると、掲示板などでは「現代の奴隷制」という言及があります。しかしその多くは、あくまでも比喩(たとえ話)として使われていたり、比喩として理解されているかもしれません。しかしこれは比喩ではなく「奴隷制」を禁止した国際人権規約の規約8条に該当する世界からの勧告なのです。

本来であれば、権力の監視を行うという責務を持っている大手メディアは、もっとこの点について、政府を糾弾しないとならないはずです。しかし、どうも本格的な非難にならないのは、特に3K(きつい、汚い、危険)と言われる職場における労働力不足の現実があり、その解決策が見えないからでしょう。

介護業界は、これから多数の外国人技能実習生を受け入れるが・・・

すでに25万人もいるという日本の外国人技能実習生ですが、違法な状態で働かされている人は、このうちの7割にものぼることが、厚生労働省の調査でわかっています(テレ朝news, 2017年)。これから、国の監視が強化されることが決まっていますが、数十万人規模の労働者の監視が可能とは思えないのです。

介護業界への外国人労働者の大幅な導入に向けて、法案が可決しています。この理由は簡単で(1)介護業界の待遇が悪く日本人が確保できない(2)ますます高齢化が進み介護業界の人手不足が止まらない(3)国に財源がなく介護業界の待遇問題が解決できない、というものです。こうした根本的な部分にメスが入らないまま、国の監視が強化されればそれでよいのでしょうか。

どうしても、まずは、財源を確保し、介護業界の待遇を改善する必要があります。介護業界は、日本人でも働きたいと思えるような職場環境を整えた上で、外国人技能実習生を迎え入れないとなりません。それがなされないと、日本人よりも安い賃金で働いてくれる外国人ばかりが、介護業界で採用されるようになります。

これは世界から指摘されているとおり「奴隷制」になってしまう可能性の高いものです。そしてそれは、奴隷として「隷従」させられる状況を許さないとした日本国憲法において憲法違反にもなり得ます。どう考えても、許されてはならない状況なのです。

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。(日本国憲法前文より)

※参考文献
・日本弁護士連合会, 『自由権規約委員会は日本政府にどのような改善を求めているのか』, 2015年8月
・テレ朝news, 『外国人技能実習生25万人の“現実”』, 2017年12月6日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト