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高齢歩行者の死亡事故に関する考察(自動車ドライバーの注意点)

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高齢者の歩行中の死亡事故

日本における交通事故死者数4,117人のうち、高齢者の死亡事故は全体の54.6%にもなります(平成27年)。年齢階層別の人口を考慮すると、高齢者は、非高齢者(高齢者ではない人)の3.4倍も死亡事故に巻き込まれやすいという計算になります。そして、この倍率は年々高まっているのです。

こうした高齢者の死亡事故の約54%は、横断歩道以外のところを横断しているときに発生しています(柴崎, 2016年)。これは、横断歩道の横断中の死亡事故の2倍以上の割合になります。しっかりと横断歩道を渡っていれば、少なからぬ死亡事故は避けられた可能性が高いのです。

横断歩道のない道路(正確には単路)での死亡事故は、なんと全体の70%を占めています。これに、信号機のない交差点での死亡事故を加えると、全体の95%が、信号機のないところで発生しているのです。横断歩道や信号機の設置が、非常に重要であることがわかります。

高齢者の死亡事故の深堀り

一般的には、歩行中の死亡事故は、自動車ドライバーの視界の悪くなる(コントラスト感度が低下する)夜間に発生しやすいのです。しかし高齢者の死亡事故の場合は、16〜21時に集中しており、ここで約46%の犠牲者が生まれてしまっています。これは、そもそも高齢者は、夜間、あまり出歩かないからだと推測されます。

実際に、高齢者の死亡事故であっても、早く暗くなりやすい冬季(10月〜1月)に死亡事故が集中しています。さらに冬季には、夏季と比較しても暗めの色が主流であるコートなどを着用することが多いため、自動車ドライバーからは見えにくくなるので、さらに危険です。

曜日という視点からは、家族などと一緒に行動することの多い日曜日には、死亡事故が減ります。逆に月曜日は、高齢者の単独行動が急に増えるため、そのギャップからか、死亡事故がもっとも多くなります。

高齢者の道路横断における課題

高齢者の歩行中の死亡事故は、70%が、自宅から500m以内のところで発生しています。よく知っている場所なのに、死亡事故に巻き込まれてしまっているのです。これには、よく知っている場所だからこその油断もあるでしょうが、やはり高齢者の横断にも原因がありそうです。

高齢者の死亡事故の多く(71.8%)は、普通の道路を、垂直(横断の最短距離)に横切っているにも関わらず、発生してしまっています。特に、横断の終盤に、左側から走ってくる自動車に衝突される形が多く(61.4%)なります。高齢者の歩行速度が遅く、渡りきれていないところに、自動車ドライバーの不注意が重なっているのです。

同時に、高齢者のほうも、安全確認が不十分という事例が全体の51%になります。また、自動車の速度の見誤りや、自動車のほうが譲ってくれると思ったという高齢者の判断ミスは、全体の12%になります。そもそも自動車ドライバーの不注意は問題なのですが、高齢者ならではの課題もあるということです。

高齢者の道路横断における認知パターンを理解したい

高齢者にも課題があるとはいえ、それらは加齢にともなうものであり、解決することは困難でしょう。そうなると、自動車ドライバーのほうが、高齢者の道路横断における認知パターンを理解しておき、より注意深い運転を心がけるしかありません。以下、高齢者の道路横断における典型的な認知パターンについて、簡単にまとめます。

1. 横断前の認知

高齢者は、道路の横断前に(1)道路の幅と障害物の有無を確認する(2)走ってくる自動車の位置と速度を確認する、といった認知を行います。この認知の段階でも、視力や聴力の低下が影響し、正確な認知になるとは限りません。道路の幅が本当よりも狭く見えたり、障害物を見落としてつまづいたり、走ってくる自動車の位置や速度の確認を誤ることがあるということです。そうした認知上のエラーを持ったまま、横断を決断し、横断を開始してしまうこともあります。

2. 横断中・前半の認知

横断を開始しはじめるときは、高齢者は、自分の近くを走る、右側から来る自動車を見ています。自分の近いところを走っている自動車のほうが怖く感じられるので、これは仕方のないことでしょう。このとき、1台目の自動車が自分の前を通過したことで安心し、後続の自動車に注意が向いていないことがあります。1台目が大きなトラックだったりすると、後続の自動車が見えないということもあるかもしれません。

3. 横断中・後半の認知

横断中の高齢者は、転ばないように、注意が足元に向かう傾向もあります。急いで横断しないと・・・という気持ちがある中で、少しでもつまづけば、パニック状態にもなりえます。持っていた小物を落としたりすれば、さらにこの状況は悪化するでしょう。そうして渡りきれないうちに、左側から自動車が来れば危険です。さらに、左側から複数の自動車が走ってきて、後続の自動車にまで注意を向けないとならなくなるとき、高齢者の危険は相当高まるのです。

※参考文献
・柴崎 宏武, 『高齢者の道路横断中の事故』, 交通事故総合分析センター, 第19回研究発表会, 2016年

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