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サクセスフル・エイジング(幸福な高齢者の研究);活動理論と離脱理論

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サクセスフル・エイジング:高齢者の幸福とは?

高齢者にとって生きがいとはなんでしょうか。どのように老いていくことが、幸福な人生と言えるのでしょうか。こうした疑問をテーマとする研究領域を特に「サクセスフル・エイジング」と言います(老年社会学)。

この研究には、大きく2つの派閥があって、それぞれに主張が異なります。しかし、こうした対立する2つの概念というのは、多くの生産的な学問領域に存在するものであり、異なる見かたについてそれぞれ理解することが大事になってきます。

介護という文脈でも、高齢者を考えていくことになります。そのとき「サクセスフル・エイジング」の知見も役に立つはずです。そんなわけで、今回はこの「サクセスフル・エイジング」について考えてみます。

派閥1;活動理論(activity theory)

高齢者になると、定年退職や子育ての終わりから、生活の中での活動量が減少します。こうした活動量の減少は、結果として高齢者の幸福度を下げるという主張をするのが、活動理論の派閥です。

活動理論においては、仕事や子育ては終わっても、それに代わる活動(ボランティアや趣味など)をすることで、活動量を維持することが大切だとされます。「忙しくしていること」が大事という発想ですね。

この活動理論の発展として、継続理論(Continuity Theory)というものもあります。これは、減少する活動量を、他のなにかで埋めようとするのではなく、むしろ過去の仕事を継続したり、過去に積み上げてきた強みをそのまま活かしていくべきだというものです。

活動理論の根幹となっているのは、人間は高齢になっても性格(パーソナリティー)の変化はなく、活動量と幸福度の間には相関があるという立場です。高齢者の5分類(ライチャード)から考えると「円熟型」や「装甲型」がこれに相当しそうです。

派閥2;離脱理論(disengagement theory)

高齢者になれば、社会的な活動量が減ること自体を「自然なこと」としてとらえるのが、離脱理論の派閥です。こちらは、高齢化にともなって、心身ともに活動量が減るのはあたりまえで、そこに無理をして新たな活動などを差し込む必要はないと考えます。

ただ、離脱理論だと、高齢者の社会的な排除を肯定することになってしまい、批判が多いです。高齢者の5分類(ライチャード)から考えると「安楽椅子型」になり、ここには「生活不活発病」のリスクがあるでしょう。

とはいえ、本質的には多様である高齢者に対して、一貫して「とにかく活動させようとする」ような社会も窮屈です。老いを受け入れ、静かに社会から退出していくような生きかたもあってよいはずです。そうした面では、離脱理論にも注目すべきところがあるのも事実でしょう。

特に、離脱理論には「高齢者が若者の道をふさがない」ことによる社会の活性化を目指す視点があります。日本の経営者や政治家の中には「さすがにもう引退して、後輩に道を譲ったほうがよいだろう」と感じることは誰にでもあるはずです。欧米の経営者や政治家が若い背景には、離脱理論の影響もあるわけです。

「サクセスフル・エイジング」に向けて

現在、「サクセスフル・エイジング」においては(1)長寿であること(2)生活の質が高いこと(3)なんらかの生産的な活動に関わっていること(4)本人が生活に満足感を抱いていること、の4つの点が必要であることが、老年社会学の世界では広く合意されているようです。

活動理論も、離脱理論も、どちらが正しいのかという争いは、学者の世界のことです。介護の実務的には、どちらにも聞くべきポイントがあり、高齢者とはいえそれぞれに価値観も異なるわけです。相手に合わせて、活動理論と離脱理論それぞれに視点から、先の4つの点について要介護者と対話していくことが重要です。

※参考文献
・近藤勉, 『高齢者の心理』, ナカニシヤ出版(2010年)
・佃亜樹, 『「サクセスフル・エイジング」の再定式化への一考察』, 立命館産業社会論集(第43巻第4号), 2008年3月
 

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