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介護業界における採用の現状について(これで良いはずがない)

介護業界における採用の現状について(これでよいはずがない)

介護業界は深刻な人手不足に悩んでいる

介護業界は深刻な人手不足に悩んでいます。具体的な数値としては、2025年には、37.3万人の介護人材が不足すると予測されています。これは、どこか別の世界のことではなくて、日本に暮らす全ての人の問題です。いざ、自分の周辺で介護が必要になったとき、それを支援してくれる人材がいないということだからです。

この人材不足の最大の原因は、介護業界における待遇がよくないことです。ストレスが大きいからとか、魅力の発信が足りないからという意見もありますが、それらは病気の症状であって、原因ではありません。

待遇の改善による介護業界の人材確保が、果たして2025年に間に合うのか、かなり心配な状況です。そこで今回は、介護業界における採用についての調査(三好, 2017)より、現状として見えてくる課題について他の参考文献からもデータをひきながら、簡単に整理してみたいと思います。

介護業界における採用全体の概要

まず、細かい数字を見る前に、介護業界における採用全体の概要を以下にまとめてみます。なお、この研究対象となった介護事業者の規模はまちまち(20〜490床)ですし、あくまでも平均から見える範囲での考察なので、そこは注意してください。

・来るものは(ほとんど)拒まれず採用されている
・新卒が来ないので中途の奪い合いが発生している
・中途人材はハローワークで条件のよいところを吟味している
・それに合わせて正規雇用が大盤振る舞いされている

これが、日本の未来を支える(と言われる)介護業界の実情です。こうした業界で、経営者として利益を出して行くことは、非常に困難です。実際に、世間では比較的景気が良いとされながら、介護業界では、毎年、過去最高の倒産件数の記録更新が起こっています。以下、もう少しだけ細かくデータを見ていきます。

採用予定6.8人に対して、エントリーは9.4人

介護事業者(54社)が採用を予定している人数の平均6.8人に対して、エントリー平均は9.4人でした。実際に、介護事業者の話を聞いていると「来る人は拒まず」という世界で、エントリーしてきた人はほとんど採用しているということが多いのです。

ただ、この数字からは、だいたい1.4人に1人が採用される(9.4/6.8)という現状が見えます。倍率1.4倍ということです。必ずしも「来るものは拒まず」というほどでもないような気がしてきますが、それは、実際の採用数を見てみないことにはなんとも言えません。

採用数は新卒2.5人、中途6.2人

先の採用予定数に対して、実際の採用数は新卒2.5人、中途6.2人ということでした。あくまでも平均ですが、合わせて8.7人を採用している計算になります。採用予定よりも多くとっており、それはむしろエントリー数である9.4人に近い数字です。ここから「来るものは拒まず」というのが、かなり実態に近いということがわかります。

また、これは全体の約3割が新卒、約7割が中途という計算になります。日本の主要企業における中途採用の割合は2~3割未満というのが普通(東洋経済, 2008年)ですから、介護業界が、いかに中途比率の高い業界であるかがわかります。

この背景には(1)そもそも新卒にとって魅力の少ない業界であること(2)新卒の教育費用を負担できないこと、という2つが考えられます。しかし、新卒よりも中途のほうが賃金が高いはずなので、どちらかというと新卒が来てくれないことのほうが大きな理由である可能性が高いかもしれません。

採用広報に活用されているのはハローワーク

エントリーを確保する方法として使われているのは順番に(1)ハローワーク=96%(2)自社ホームページ掲載=84%(3)縁故=70%とのことでした。これに対して、世間一般の就職・転職においてもっとも活用されているのは順番に(1)広告=約35%(2)ハローワーク=約20%(3)縁故=約20%です(厚生労働省, 2014年)。

介護業界においては、人材が就職先を決めるためにもっとも活用している広告が使われていないということです。ここから、採用広報にお金をかけることができない、苦しい台所事情も伝わってきます。同時に、介護は地域性の高い仕事であるため、広域に広告を打っても仕方がないという面もあると考えられます。

雇用形態は正規6.3人、非正規2.4人

世間一般には、非正規雇用は約37.5%です(総務省統計局, 2017年)。これに対して、介護業界では非正規雇用は約27.6%と、正規雇用が多くなっています。少しでも良い雇用条件を出さないと、人材が採用できないという介護業界の苦しみが反映されていると見ることが可能です。

これだけ採用が苦しければ、給与以外の面で、少しでも条件をよくしないと、辞めてしまうという事情もあるのだと思われます。非正規雇用をして教育をしても、その後、他社に転職されてしまうくらなら、正規雇用としたほうが合理的と考えられているのかもしれません。

※参考文献
・三好 貴之, 『介護職員の採用活動に関するアンケート調査の報告』, 岡山大学経済学会雑誌 49(1), 69-89, 2017-07-03
・厚生労働省, 『入職者の入職経路に関する分析』, 労働市場分析レポート, 第41号, 2014年9月30日
・東洋経済, 『「日本の主要企業における新卒採用と中途採用のウェイト」~採用担当者の本音をアンケートで聞く~』, 2008年3月19日
・総務省統計局, 『労働力調査(詳細集計)平成28年(2016年)平均(速報)』, 2017年2月17日

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