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あなたは、エコーチャンバー(echo chamber)の中にいませんか?その危険性について認識しておきたい

あなたは、エコーチャンバー(echo chamber)の中にいませんか?その危険性について認識しておきたい

エコーチャンバー(echo chamber)とは?

エコーチャンバー(echo chamber)とは、日本語では「反響する部屋」といった意味になる言葉です。先のアメリカの大統領選挙において指摘された危険性であり、過去にもサイバーカスケード(cyber cascade)、コクーン(cocoon)、フィルターバブル(filter bubble)や集団極性化(group polarization)といった言葉で説明されてきた人間の弱点です。

私たち人間は、自分と異なる価値観を有する人ではなく、自分と似た価値観の人とつながりたいと願う生き物です。SNSの登場によって、その実現可能性が高まった結果として、人間は、自分と価値観の似た人々とグループを形成しやすくなりました。そうしたグループの中では、反対意見に出会うことが少なくなります。

グループの中で主流となる意見に「おかしいかな?」と感じても、グループがまとまっていれば、そうした発言は心理的にもしにくくなります。そうした場、すなわちエコーチャンバーの中では、グループの主流派の意見がこだま(エコー)します。いつしか、自分自身も、そうした意見を自分のものとしやすいのです。

そこから「いじめ」が生まれることもよくあります。集団には馴染まない価値観を有していることが、集団を形成する他の人々に知られてしまうと、排除の圧力がかかるからです。「いじめ」を避けたいがために、集団に合わせて自分を変えてしまうこともあるでしょう。「いじめ」を見ても、見て見ぬ振りをしたくなる背景にも、同じ考え方があります。

SNSのパーソナル化アルゴリズムが状況を悪化させている

エコーチャンバーのようなものは「ムラ社会」や「縦割り組織」といった言葉を持ち出すまでもなく、日本でも昔からありました。この危険性を示す言葉が、英語でも日本語でも多数あるということにも注目したいです。それだけよくある話であり、かつ、危険だということです。

こうして同質性を高めることは、コミュニケーション効率を高めたり、チームとして仕事をするには良い効果もあります。しかし、それが行き過ぎると大きな問題につながる危険性もまた、認識されてきたのです。

そもそも人間は、自分にとって都合の悪いことや、自分の嫌いなことに関する情報は、無意識のうちにも遮断するようにできています。しかし、そうした遮断をやめないことには、新しくて、正しい情報もまた入ってくることはありません。だからこそ、多様性(ダイバーシティー)の推進は、意図して行わないとならないのです。

ご存知だとは思いますが、現代のSNSにおいては、見る人の価値観に合わせて、流れてくるニュースや情報が選択されるアルゴリズム(パーソナル化アルゴリズム)が採用されています。そしてこれが、エコーチャンバーの問題を悪化させる方向に働くことがわかっています(WIRED, 2017年)。

SNSは非常に便利です。SNSの登場によって、失われてしまっていた関係性が復活するときなどは、本当にありがたいと感じます。ただし、SNSを活用するときは、私たちは自分自身がエコーチャンバーの中にいることを認識し、無理やりにでも多様性に近づいていかないと危険なのです。

ハンチントン『文明の衝突』と介護の未来

20年以上前(原著)に出版された、故サミュエル・ハンチントン(Samuel Huntington)による『文明の衝突』(集英社/1998年)は、未来を予言している名著として、非常に有名なものです。この本は、冷戦後の世界は、統一ではなく、むしろ小さな集団がそれぞれに関心を持たず、先鋭化していくことを示しました。

エコーチャンバーの問題は、ある意味で、ハンチントンによる予言を加速化させるものです。世界規模で、エコーチャンバーが乱立する状態ができてしまっていることが、現代社会における多数の問題を生み出しているとも言えます。

まずは、自分自身もまた、なんらかのエコーチャンバーの中にいるという自覚が必要です。その上で、せめて、意見の異なる複数のエコーチャンバーを選んで所属するという防衛策が大事になってきます。そうしないと、私たちは、私たち自身とは異なる誰かになってしまうからです。それが、戦争に直結していることは、想像に難くないでしょう。

子供が親に反抗するというのも、もしかしたら、家族というエコーチャンバーから逃れようとする子供の本能なのかもしれません。介護という文脈でもまた、エコーチャンバーを観察することは容易です。「あるべき介護」というのは多様であり、これが正しいというものは存在していないからです。

本当に大切なのは、本当は自分自身はどう感じているのかを認識することです。「それはおかしい」と感じたとき、そうした発言ができない環境にあるとするならば、それはエコーチャンバーの中にいるという危機を示しています。そしてその危機は、人類全てが、今まさに経験していることに他なりません。

※参考文献
・WIRED, 『エコーチェンバーの責任はFacebookにある、そしてあなたにも』, 2017年2月28日

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