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入退院を繰り返す高齢者は、自己管理に問題があるのか?

入退院を繰り返す高齢者は、自己管理に問題があるのか?

入退院を繰り返す高齢者

高齢者が病気になりやすいのは仕方のないことです。ただ、健康で病院の必要がないような高齢者もいれば、逆に入退院を繰り返してしまう高齢者もいます。研究者たちは、この違いがどこから生まれてしまうのか、注意深く調べ続けています。

入退院を繰り返してしまう人に対して「自己管理がなっていない」という批判が向けられることがあります。近年、そうした言論によって社会的地位を追われる人もいました。それでもなお、社会保障のための国の財政が悪化し続けている今、いかに乱暴であっても、そうした言論にも一定の支持者が出てきてしまうのも事実です。

では、入退院を繰り返してしまう人というのは、本当に「自己管理がなっていない」のでしょうか。特定の病気を患っている高齢者に限定されており、かつ、データの数が(まだ)少ないので、統計的事実とは認められないものの、この仮説を検証した研究論文があります。

この論文によれば、研究対象となった高齢者の場合「医療者からの情報提供や体験に基づいた病気の理解」によって(1)水分量や食事量に注意して行う体重管理(2)血圧測定・体重測定の継続(3)治療の継続(4)身体に見合った活動の工夫などが行われていました(古市, 2017年)。

統計的事実とは(まだ)言えませんが、少なくとも「自己管理がなっていない」ということが原因ではないケースもあることが示されているわけです。こうしたケースもある以上、やはり「自己管理がなっていない」という言論は、乱暴にすぎると結論づけることができます。

「わかっていても、やめられない」こともあるが・・・

ただ、この論文においても、確かに、入退院を繰り返す高齢者の中には「わかっていても、やめられない」ことがあることも指摘されています。この指摘の存在を知ると、やはりこれは自己管理の問題のような気がするかもしれません。しかし、それはかなり大きな誤解です。

高齢者の場合は、長年の人生を通して、心身に染み付いた生活習慣があります。50年以上という長期間にわたって繰り返してきたことを、いきなり止めることは、誰にとっても難しいことです。それはちょうど、ギャンブル依存症のようなものだからです。

近年では、ギャンブル依存症を、単なる自己管理の問題に帰着させる人は減ってきています。脳科学的にも、それは中毒であり、自己管理の範疇を越えていることが指摘され続けてきたからです。高齢者にとっての生活習慣もまた、これと似たようなものだと考えることが可能です。

ギャンブル依存症に対して他者からのサポートが必要であるように、高齢者の病気に悪い生活習慣についてもまた、他者からのサポートが必要なはずです。それをただ「自己管理がなっていない」とする社会は、科学的な知見を無視した精神論だけの場になってしまいます。

入退院を繰り返す高齢者の課題とは?

同論文で指摘されている「わかっていても、やめられない」ということ以外の課題として注目したいのは「病状の悪化を予防する知識の不足」です。予防のための知識の不足であれば、すぐに解決策を展開することができそうだからです。

とにかく、入退院を繰り返す高齢者は、医師に言われたことは、しっかりと対応しようとしていました。しかし、それだけでは病状の悪化を予防する知識が足りていなかったのです。ただこれを、医師による説明が足りていないとすることは、解決策につながりそうもありません。

なぜなら、過労死ライン越えが3割という忙しすぎる日本の医師に、細かな病気の予防方法のレクチャーまで求めるのは実質的に不可能なことだからです。看護師もまた、大いに人手不足の業界ですから、医師がだめなら看護師で、というのも通用しそうもありません。

こうしたところにこそ、ICTが活用されていくべきでしょう。特定の病気の具体的な予防方法は、その全てではないものの、色々とわかっていることもあります。この情報不足によって繰り返される入退院があるならば、情報取得の効率性を高めることで解決できる入退院もあるはずだからです。

※参考文献
・古市 麻由子, et al., 『慢性心不全患者が再入院に至った生活行動における問題点:高齢者世帯の患者の自己管理に関する語りを通して』, 看護研究交流センター活動報告書 28, 59-62, 2017-04

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