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ベトナムから1万人の介護職候補者がやってくる

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介護職は全く足りていない

介護職(プロとして介護をする人材)の数が足りません。無医村の話題など、医療人材の不足のほうが深刻に受け取られがちですが、むしろ、介護職の不足のほうが地域社会へのダメージは大きいのです。なぜなら、医療というのは病気になったときだけ必要な非日常なのに対して、介護は毎日必要になる日常だからです。

寝たきりだったりすると、そもそも、介護職がいないと生きられなくなります。過疎地からいなくなるのは若者だけではなく、介護が必要になった高齢者もまたいなくなっていくのです。介護は、地域社会にとって、文字通り死活問題として認識される必要があります。

介護職が不足している根本原因は、手取りで20万円にも満たないことも多いという待遇の悪さです。待遇が悪くなってしまうのは、国の財源が少なすぎるからです。ですから、本質的には、国は税金の使いかたを見直し、介護のためにもっと税金を割り当てる必要があります。

根本原因は解決されないままだが・・・

介護職の待遇問題という根本原因の解決は、ずっと先送りされてきました。少しずつ改善はされているのですが、それも、焼け石に水程度の改善幅にすぎません。そうした中、足りない介護職を、外国人労働者によって補おうとする動きが強化されてきています。以下、日経新聞の記事(2017年6月13日)より、一部引用します(改行位置は KAIGO LAB にて修正)。

政府は11月から介護分野でベトナムの外国人技能実習生の受け入れを開始する。介護を学びたい外国人が日本に来やすいよう、日本語教育の環境整備から受け入れ先の選定まできめ細かにサポートする。高齢化が急速に進む新興国の人材育成を支援するとともに、国内で不足する介護人材の確保にも道をひらく。まずベトナムから3年間で1万人の参加を見込む。

政府は昨年、外国人技能実習制度の対象に「介護」を加えるよう法整備した。具体的な受け入れ計画を14日に開く健康・医療戦略推進本部の会議で発表する。(中略)国内では人材不足が深刻化しており、4月の有効求人倍率はバブル経済期を超える高さとなった。なかでも人手不足が目立つのが介護業界だ。政府が5月にまとめた「首都圏白書」は、25年度に介護人材が東京都だけでも3万5800人、全国では37万人足りなくなると推計した。(中略)

ただ、介護現場での外国人受け入れはこれまで経済連携協定(EPA)の枠組みに基づく制度のみで、対象国もインドネシアとフィリピン、ベトナムの3カ国に限られてきた。専門用語の習得など日本語の要求水準の高さも壁となり、受け入れ人数は過去9年弱の累計で2777人(昨年10月時点)にとどまる。政府は技能実習制度の活用で当面の人手不足を解消したい考え。実習生は最大5年で母国に戻るため、受け入れ人数の調整もやりやすい。(後略)

過去9年間で3,000人にも満たなかった外国人の介護現場への受け入れが、今後3年で1万人という規模になるということです。1年で、過去9年で受け入れた外国人の人数を上回るという計算なので、この速度感には驚かされます。介護人材の不足については、政府も(待遇改善以外のところでは)本気なのでしょう。

日本の介護事業者が海外進出しやすくなる未来につながる?

介護職の待遇を改善しないまま、外国人の介護職を増やすという方向については、大いに問題があります。ただ、外国人の介護職が増えるということ自体には、良い面も多数あるのは事実です。この流れは、日本語が使えて、日本の介護のやり方を理解している人材が、海外においても増えていくことを意味しているからです。

日本の現場で介護を学び、帰国していく外国人は、母国でも介護の仕事につきたいでしょう。しかし、母国には、日本のようなレベルで介護をする事業者は多くないはずです。そこにこそ、日本の介護事業者が参入するチャンスがあります。諸外国において、日系の介護事業者が好まれるような未来がやってくる可能性があるのです。

実は、日本の高齢者人口は、2040年にはピーク(3,868万人)となります。それ以降の日本は、高齢者も減るような、人口減少社会になります。高齢者が減ってしまうと、日本の介護職が職を失いはじめます。そのときに、海外で働くという選択肢があることは、日本の介護職にとってもありがたいことでしょう。

日本の介護職が世界で活躍することは、日本のホスピタリティーが国外に広がっていくことを意味しています。日本国憲法にうたわれている「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する」という理想に対して、日本の介護職たちが大きな貢献をするのです。

そうした未来を実現するためにも、介護職の待遇問題は、解決されていかないとなりません。これができないと、この流れ自体が、単なる、外国人労働者からの搾取になってしまうからです。今後の選挙の争点としても、介護職の待遇改善を公約とする政治家に注目していきましょう。

※参考文献
・日本経済新聞, 『介護技能実習に外国人、まずベトナム1万人』, 2017年6月13日

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