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介護関係の論文は質が低い?科学的根拠に基づいた介護に向けて

介護関係の論文は質が低い?科学的根拠に基づいた介護に向けて

再現性(reproducibility)の重要性について

人類社会は、科学の発展から多くの恩恵を受けてきました。それは、論文(または特許)として提出される研究の成果に、再現性(reproducibility)があるからです。ここで再現性とは「論文に書いてあるとおりにやると、同じ結果が出る」ということです。

論文に再現性があれば、その研究の成果は、人類全体の幸福に寄与することになります。そして、多くの論文には再現性があったからこそ、人類社会は、時間を超えて「こういうときは、こうすればいい」という知恵を受け継ぐことができたのです。

もし、再現性がないなら、その論文に記載されていることは「たまたま、そういう結果になった」ということにすぎません。その場合は「こういうときは、こうすればいい」という一般法則が通用しないので、ケースに応じて、それぞれが新しいやり方を考え出さないといけなくなります。

逆に言うなら、再現性さえあれば、それが科学的に見出されたものかどうかは、重要ではないのです。実際に、経験や直感から見出された法則であっても、そこに再現性が認められ、後に科学がその裏付けを行うというケースも多数あります。

しかし、たとえば雨が降らないときの「雨乞い(あまごい)」のようなものは、やはり否定されています。それらが否定されるのは、科学的な検証を行う以前に、そもそも再現性がないからです。今から2000年以上前に活躍した荀子(中国の思想家)も「雨乞いをしても、雨は降ったり、降らなかったりする」として、これを否定しています。

どうして「科学的根拠に基づいた介護」が必要なのか?

近年「科学的根拠に基づいた介護」という言葉が広がりを見せています。科学的根拠に基づいていないからダメということではありません。実際に、介護の現場では、どうしてそうなるかわからないけれど(まだ科学的とは言えないけれど)再現性の高いノウハウというものが多数積み上がっています。

大事なのは、まず、再現性のあるなしで、現場のノウハウを仕分けすることです。その上で、再現性の高いノウハウがどうしてそうなるのかを考えていく、ということです。先にも述べたように、後からでも、科学的な裏付けを行えばいいのです。そうして信頼性が保証されたら、世界中の人が、そのノウハウを共有できます。

「科学的根拠に基づいた介護」が必要なのは(1)限られた財源と介護人材不足の中で介護の効率が問題視されてきていること(2)介護を日本の輸出産業に育てていくためにも個別性ではなく一般性が求められること(3)包括的な社会福祉を目指して医療など異分野との連携を進めていくこと、などが重要になってきているからです。

介護関係の論文は質が低い?

ここで、リハビリテーション分野に限定されているものですが、介護業界の論文の信頼性を調べた研究があります(會田, 2010年)。こうした信頼性に関するチェックがどうなっているのか、より詳しく理解するには、この過去記事も参照してみてください。

この研究で指摘されているのが、介護業界におけるケーススタディー論文の多さです。ケーススタディー論文も重要なのですが、それは特定のケースにおいて「こうしたら、こうなりました」ということです。ある意味で、これは現場のノウハウと同じです。そのままでは、他の現場で使っても効果があるのか、科学的には(まだ)不明なのです。

科学的なエビデンス(証拠)に基づいた、質の高い論文であるためには、ランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial/RCT)という手法の適用が求められます。しかし、この研究で調査された論文の中には、このランダム化比較試験が実施されている論文は(残念ながら)ありませんでした。

とはいえ、これだけで、介護関係の論文の質が低いとは言い切れません。ただ、科学的根拠に基づいた介護を目指せているかというと、まだまだ改善点があるというのが実情のようです。少しずつではあっても、介護関係の研究が、より科学的になっていくことを、みなで後押ししていきましょう。

※参考文献
・會田 玉美, 『わが国における身体障害分野作業療法の効果 ─文献のシステマティック レビュー─』, 目白大学健康科学研究第3号, 2010年

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