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2016年、日本から約33万人が消えた。介護業界がもっとも厳しい状況になる?

日本から約33万人が消える人口減少。介護業界がもっとも厳しい状況になる?

約33万人の人口減少とは、どういう数字なのか?

日本が、人口減少社会に突入していることは、周知の事実です。そうした中、2016年の人口統計として、死亡者数から出生数を引いた「自然減」が、約33万人(33万786人)と、過去最大となったことがニュースになっています。

約33万人という数字は、人口規模でいうと、東京都新宿区(約33万4千人)がまるまる1つ消滅したのと同じです。市区町村ではなく、鳥取県の人口が約57万人であることを思えば、ほとんど県が1つなくなったのと同じような感覚です。以下、SankeiBizの記事(2017年6月3日)より、一部引用します。

2016年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は97万6979人(前年比2万8698人減)で、現在の形で統計を取り始めた1899年以降、初めて100万人を割り込んだことが2日、厚生労働省の人口動態統計(概数)で分かった。

女性1人が生涯に産む子供の推定人数「合計特殊出生率」は1.44(前年比0.01ポイント減)で2年ぶりに低下した。死亡数は130万7765人で戦後最多。死亡数から出生数を引いた人口の自然減も33万786人で過去最大となった。

今後の人口減少はどうなっていくのか?

残念ですが、今後の人口減少は、しばらく加速していきます。つまり、毎年、過去最大の減少を記録していくことになるということです。これが(ほぼ)確実に言えるのは(1)高齢化社会に突入しており死亡者数が増えること(2)人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代が出産適齢期を超えたこと、の2つがあるからです。

先のニュースでもそうですが、1人の女性が一生の間に産む子供の平均数としての出生率(合計特殊出生率)が話題になります。しかし、この出生率が上がったとしても、子供を産むことができる女性の数自体が大きく減っているわけですから、もはや、日本の人口にとって、出生率は問題ではないのです。

少子化対策は、これからも続くでしょう。しかし、いかに少子化対策を頑張っても、この人口減少を止めるレベルでの効果を期待することはできません。ずっと以前から言われていたことですが、いったんは、日本の少子化対策は失敗だったことを認めないとなりません。

ここで、少子化対策を失敗させたのは、政府だと考えると間違います。もちろん、政府の責任は大きいです。しかし、どういう政治家を当選させるかは、国民1人ひとりの責任です。また、子供を産み育てやすい社会を築くのは、政府というよりもむしろ、地域社会でしょう。

もちろん、人口減少社会だからといって、必ずしも、経済が悪化するとは限りません。グローバル化が進んでいますし、人口1人あたりが生み出す価値は、高まっていく可能性も十分にあるからです。しかし、間違いなく言えることは、人材の採用は困難になるということです。

人材不足が深刻な業界としての介護

日本において、極端に人材が足りない業界として知られているのが、介護、建設、外食、小売です。この中で、介護以外の業界は、経済原理で動いています。つまり、建設、外食、小売は、よりよい給与を出すことで、人材の取り合いを乗り切ろうとします。

しかし、この中で介護だけは、売上を国が管理している業界です。介護事業者は、国によって決められた介護サービス料金に依存している、労働集約型のビジネスで売上をつくっています。介護サービス料金を勝手に上げられないだけでなく、国の財源が枯渇しつつあることから、見直されるたびに減らされています。

つまり、介護事業の継続には、人件費を下げるしか手がないのです。人材不足から、建設、外食、小売が人件費を改善する方向で見直す中、介護業界だけが、人件費を下げながらも、経営改善をしようとしています。

介護事業者が取り得る生き残り戦略は(1)人件費の交渉力の高いベテランは雇わずに未経験の新人を増やす(2)介護以外のビジネスで稼いで介護からは徐々に撤退する(3)海外に進出して国内事業は縮小させる、といったことしかありません。

本当は、同じ時間内に、介護保険内のサービスと保険外のサービスを組み合わせて、1時間あたりの売上を高める「混合介護」が成立すれば、この状況は改善できるはずでした。しかし「混合介護」は、支払い能力のない高齢者の切り捨てになることから、実質的に見送られています。

介護業界は今が最高のときという認識が必要

介護業界には、まだまだ問題が山積しています。しかし、人口減少社会において、国が売上を管理するという状態が続く限り、今現在が、最高のときという認識が必要です。足りない人材に変わる「完璧な介護ロボット」が登場すればいいですが、今後10年は、それはないでしょう。となると、介護業界では人手不足が加速します。

人手不足が続くと、結果として、介護保険に頼らないでもお金を支払える富裕層だけが介護を受けられる社会が到来してしまいます。介護職からしても、同じ仕事であれば、より多くの給与を支払ってくれる、労働条件のよい事業所に転職するはずです。「混合介護」を避けた結果として、より極端な社会が登場してしまう可能性が高いのです。

すでに、建設、外食、小売といった業界の経営者は、介護業界からであれば、人材を採用しやすいことに気づいています。介護業界で働いていた人材は、今後、高齢者の顧客が増える外食や小売といった業界からしても、魅力的な人材なのです。

私たちは、少子化対策に失敗しました。そしていま私たちは、介護福祉の構築に失敗しつつあります。少子化対策の失敗の影響は、まだ生まれていない命がそれを被りました。しかし、介護福祉の構築失敗の影響を受けるのは、私たち自身です。介護もまた、見送り三振まで、あと1ストライクというところに来ています。

※参考文献
・SankeiBiz, 『16年の出生数、初の100万人割れ 出産適齢期の人口減影響』, 2017年6月3日

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