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首都圏において介護人材が足りないということ(首都圏白書)

首都圏において介護人材が足りないということ(首都圏白書)

首都圏(東京圏)の重要性について

日本の首都圏は、世界中の都市の中で、GDPランキング1位(1兆5,200億ドル/2012年)の都市です。実は、首都圏まで広げなくても、東京単体でもランキング1位です。いかに首都圏が経済的に重要な都市であるか、理解できると思います。

仮に、首都圏を国家として、世界中の国とGDPを比べた場合、首都圏は、世界第11位の国ということになります。人口が約5,000万人いる韓国のGDPを、首都圏だけで上回ってしまいます。また、首都圏の人口は約3,700万人であり、国として考えると、国別人口ランキングでは35位になります。

地方自治体の収入(主に税金による)の格差を小さくするために、国から自治体に付与される資金のことを、特に地方交付税と言います。日本の47都道府県の中で、地方交付税を受け取っていないのは、東京都だけです。実質的には、東京都が、他の都道府県に対して「仕送り」をしているということです。

よく、地方自治体の財政は「3割自治」と言われます。地方が自力で得られる税収は、必要なお金に対して3割程度にすぎないという意味です。当然、自治体によってばらつきはありますが、多くの自治体は、首都圏から上がってくる税金に依存しているというのが現実です。

もちろん、だからといって、日本において首都圏だけが重要ということにはなりません。地方における食料やエネルギーの生産があってこその首都圏です。ただ、経済的には、首都圏の重要性は際立って高いというところは疑えません。

首都圏白書(平成29年度版)

『首都圏白書』と呼ばれる、国土交通省が発行する重要な報告書があります。正確には『首都圏整備に関する年次報告』という名称を持つもので、首都圏の様々な整備計画の策定と、その実施に関する状況が報告されています(首都圏整備法第30条の2に従っている)。

先にも考えたとおり、首都圏の整備計画は、首都圏には属さない都道府県にとっても、非常に重要です。首都圏がダメになれば、地方交付税として得られるお金が減らされ、特に地方の財政難がさらに悪化してしまうからです。

そんな首都圏の未来が見えるのが『首都圏白書』なのです。そして『首都圏白書』の最新版(2017年)が、今月発表となっています。以下、日経新聞の記事(2017年5月26日)より、一部引用します。

政府は26日、2017年版の首都圏白書を閣議決定した。8年後の25年度に、介護サービス、建設業で労働力不足が深刻化すると推計。介護人材は東京都で全国最多の3万5800人が不足するほか、人材不足率で首都圏の各県が上位を占める。(中略)

介護サービス業は、関東圏での有効求人倍率が16年12月で約4倍と、全国平均より1倍程度高く推移している。

25年度の介護人材の需給推計では、全国で37万人、首都圏(1都7県)で14万人の需給ギャップが生まれる。東京都は24万3700人の需要に対し、供給は20万8000人にとどまる。人材不足率は首都圏平均で17.5%と、全国平均の14.9%を上回る。(後略)

首都圏で介護サービスが受けられなくなっていく

首都圏では、介護サービスを提供する人材が足りないだけでなく、今後ますます、そうした状況が拡大していくのです。そうなると、首都圏では、仕事と介護の両立が、より困難になっていきます。そして、首都圏における介護離職は、そのまま日本全体の財政難に直結してしまうのです。

この状況の改善策として可能性があるのは、日本版CCRCです。日本版CCRCが実現すれば、首都圏において、すでに引退している高齢者が、地方に移住していきます。税収の多くは、法人税や所得税といった仕事から生まれるものです。ですから、引退している人の首都圏からの卒業であれば、首都圏の税収にはそれほど大きな影響を与えません。

また、高齢者が元気なうちに地方に移住すれば、首都圏の介護人材不足が生み出してしまう介護離職も減るでしょう。とはいえ、地方でも介護人材が不足しているので、それですべてが解決するわけではありません。あくまでも、悪化していく日本の社会福祉の、その悪化の速度が遅くなるという話です。

本質的には、介護人材の人数を増やさないとなりません。そのためには、介護職の待遇改善がどうしても必要なのです。しかし、介護職の待遇改善は、あまりにもその速度が遅すぎて、効果を発揮できているようには見えないのです。

※参考文献
・国土交通省, 『首都圏整備に関する年次報告(平成29年版首都圏白書)』, 2017年5月
・We Are Top 10, “Top 10 Wealthiest Cities of the World by GDP”, 2015
・日本経済新聞, 「首都圏白書、介護人材の不足深刻に 建設技能者も離職』, 2017年5月26日

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