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地元に年老いた両親がいて、ついに、東京から地元に帰るということ

地元に年老いた両親がいて、ついに、東京から地元に帰るということ

増田にアップされた『辞世の句』

「はてな匿名ダイアリー」とは、誰かが、名前を隠して書く日記のようなものです。匿名ダイアリーを英語にすると「アノニマス・ダイアリー」になります。ここから「はてな匿名ダイアリー」は、通称「増田(マス・ダ)」と呼ばれます。ここに『辞世の句』という日記がアップ(2017年5月17日)され、話題になっています。

この増田の著者は、東京に14年暮らしていたそうです。そして、地元に残してきた両親が年老い、いよいよ、地元に帰るという決断をします。実際に、そうした決断をする場面になって、当事者として考えるところがあったのでしょう。増田に、それを書き残しています。

賛否両論ありますが、多くの人が向き合うべきことが書かれています。いつか、自分も地元に帰ることを覚悟している人であれば、目を通しておくべきものかもしれません。以下、この増田を一部引用しながら、思うところを書いてみます。

田舎暮らしは、生活コストが安い?

田舎のほうが暮らしのコストが安いとの意見を目にする。田舎で生まれ育った自分からすれば、自動車を持たねばならず、なにをするにも誰もが同じ量しか持っていない「時間」をコストとして払うのは金銭と異なり取り返しがつかない。

田舎のほうが、生活にかかるコストが安いというのは事実です。特に、家賃や駐車場代は、東京の半分とか、それ以下になることもあります。さらに食費は、地元のものであれば、美味しくて安い食材も手に入ります。親類縁者から食材のおすそ分けがあることも多く、場合によっては、食費がかからないということもあります。

しかし、この増田は、こうした考えには「自動車を持つコスト」と「時間」という概念が入っていないことを指摘しています。

まず、東京にいれば、自動車は必需品ではありません。地下鉄やバス、タクシーなど、交通網が世界でもっとも発達しているから、当然と言えば当然です。しかし、この指摘で注目すべきなのは、後者の「時間」という概念のほうでしょう。

この増田は、田舎での「時間」は、東京での「時間」よりも、その内容が貧弱だと考えているのです。以下に引用する考察が、この増田の中でも、もっとも批判を集めている部分になります。

両親が年老い、ついに私も時間切れとなった。実家とは、田舎とは、呪いだ。逃れられない。田舎暮らしについては今から億劫で仕方がない。おそらくもう私は死んだも同然だろう。そのうちに田舎になじみ、パチンコを楽しみに、飲酒運転を日常にとりこみ、他人の行動ばかり監視して、他人の話ばかりする人間に入れ替わっていくだろう。

そもそも、田舎とはいえ、パチンコをやる人ばかりではありません。それに、飲酒運転をする人は、少数派であり、大多数ではありません。さらに、他人の行動ばかりを監視する人というのは、東京だろうと、田舎だろうと、どこにでもいます。その意味で、この増田を批判するのは、難しくありません。

ただ、ではどうして、田舎からは若者がいなくなり、若者は都会を目指すのかという疑問は残ります。KAIGO LABでも、過去に『過疎化する地域が、介護職の確保に失敗する本当の理由』という記事をアップしています。批判も受けましたが、それなりに多くの人に読まれた記事でもあります。

この、本当の原因を特定することは困難かもしれません。しかし、田舎での暮らしが、若者にとっては決して魅力的なものではないというところについては、それぞれに考えていくべきことなのでしょう。

田舎の学問より京の昼寝

この増田は、最後に、この日記のタイトルとした『辞世の句』の意味について述べています。そこでは「田舎の学問より京の昼寝」という、日本のことわざが引用されています。このことわざは、田舎で真面目に学問をするよりも、都会(京都)で昼寝をしながらも、都会の刺激に触れているほうが勉強になるという意味です。

両親が死に絶え、田舎の軛が外れるころには私は別人だろう。田舎の学問より京の昼寝とは真実である。だから、これは私の辞世の句だ。もう、増田を書くこともないだろう。

このことわざが、現代の事実かどうかは、個別に異なる話だと思われます。しかし、この増田のように考える人もいるというのは事実です。インターネットの時代になり、都会から離れて暮らしていても、最新の情報は入手できます。しかし、若者にとって田舎にいて難しくなるのは「他の若者との生の交流」なのかもしれません。

今回の増田に集まる批判についても、十分に理解できるものです。同時に、たくさんの税金が注ぎ込まれている地域活性化というのは、決して成功していないと思います。そもそも、地域活性化に使われる税金が、本当に、効果を生んでいるのかという検証は、ほとんどなされていません。

こうした増田の意見に対しての批判もまた大事かもしれません。しかし同時に、私たちは、地域活性化の名の下に、税金が無駄遣いされている可能性についても検証し、そこに問題があれば、それを批判していかないとならないはずなのです。

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