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スーパーやコンビニのほうからやってくる?小売業のあらたな競争がはじまった(ニュースを考える)

スーパーやコンビニのほうからやってくる?小売業のあらたな競争がはじまった

高齢者の買物問題について

高齢者になると、買物をすることが難しくなっていきます。特に、自動車がないと、そもそもお店に行くことができないような地域に暮らしている高齢者は、今後、免許返納などの話も含めて、買物難民になっていくことが予想されます。

さらに、国の社会福祉財源の枯渇を受けて、介護保険がカバーしてくれる介護サービスは減っていきます。その中で、過去には介護保険内のサービスだった「買物への同行」が、将来的には、保険外になっていくことは確実です。

しかしそれでは、困っている高齢者に死ねというようなものです。ネットが使えればまだ、宅配サービスが受けられる可能性もあります。しかし、ネットを使えない高齢者もいます。また、宅配サービスのエリア外に暮らす高齢者もいます。

スーパーやコンビニが動き始めている

以前、セブンイレブンの動きについては、記事にしました。この記事は、読まれた数(PV)でこそ 1,500程度(現時点)にすぎません。しかし、この記事をきっかけとして「もっと話を聞きたい」という非公式なコンタクトが複数ありました。それだけ、この分野はチャンスだと思われているということでしょう。

そんな中、今度はイオンが、高齢者のための移動販売に乗り出しているというニュースが入ってきました。セブンイレブンが団地内への出店を考えているのに対して、イオンは店舗を持たない移動販売というところが面白いです。以下、日レテNEWS24の記事(2017年5月2日)より、一部引用します。

流通大手のイオンは遠くまで買い物に行けない高齢者らを支援しようと千葉県茂原市で移動販売を始めた。イオンの移動販売は遠くの店まで買い物に行けないいわゆる「買い物弱者」が首都圏でも増えていることに対応したもので、千葉県では2例目となる。移動販売の車には野菜などの生鮮食品から弁当などの加工食品まで約300品目が積み込まれ、週4日のペースで病院の駐車場や個人宅の前を巡回するという。

移動店舗だと、店舗の不動産コストがかかりません。そもそも、通常の移動しない店舗であっても、商品は必ず輸送されてこないとなりません。であれば、どうせなら、輸送をするための自動車自体を店舗にしてしまおうという発想です。そのほうが、商品はつねに新鮮というアピールにもなります。

「移動店舗なんて、昔からあった」という意見もあるでしょう。しかし、イオンほどの巨大な資本力を持った大企業が、本来は、小さな商店が行ってきたようなサービスに参入するというところが大事です。こうした小さな商店もまた、高齢化によって減っていきます。また、高齢者からすれば、移動店舗は馴染み深いものなので、受け入れやすいでしょう。

セブンイレブンの戦略は、店員となる人材に、高齢者のサポートまでしてもらうという高付加価値戦略です。これに対して、イオンの戦略は、店舗コストを削減しながら高齢者に喜んでもらうというコスト削減戦略(および新規チャネル獲得戦略)になっています。それぞれに、異なるポジションをとっているところもまた、興味深いですね。

課題は少しずつ解決されていく?

こうしたスーパーやコンビニの動きを見ていると、高齢者の買物問題は、いずれは解決されるように感じます。しかし、セブンイレブンの戦略でも、イオンの戦略でも、どちらも「そこに多数の高齢者がいる」ことを前提としています。どちらも、人口依存性の高いビジネスモデルになっていることがわかるでしょう。

そうなると、こうしたサービスが受けられるのは、あくまでも(そこそこの)都市部であって、過疎地ではないということになりそうです。過疎地というのは、そもそも、そういう場所だからこそ過疎地になっているという点は、忘れてはならない部分でしょう。

嫌な話ではありますが、今後も、都市部への一極集中は(短・中期的には)止まりそうもありません。それどころか、急速な高齢化の流れを受けて、それは加速していく可能性が高いものになっています。

国土交通省の予測によれば、2050年には、現在人が暮らしている居住地のうち、2割以上(21.6%)が誰もいない地域になります。6割以上(66.4%)の地域では、現在の人口は半分以下になります(国土交通省, 2011年)。

スーパーやコンビニの戦略担当者は、こうした予測を前提として戦略を描いています。今回のようなニュースは、確かに、とても嬉しいものです。しかし将来、この喜びを享受できるかどうかは、その地域の人口次第なのです。

※参考文献
・日レテNEWS24, 『イオン、高齢者支援の移動販売 茂原市』, 2017年5月2日
・国土交通省, 『「国土の長期展望」中間とりまとめ 概要』, 平成23年2月21日

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