閉じる

ドイツの介護保険制度では、介護労働をする家族にも給付金が支払われている?

ドイツの介護保険制度では、介護労働をする家族にも給付金が支払われている?

ドイツは日本に似た介護保険制度を有する数少ない国

ドイツは日本に似た介護保険制度を有する数少ない国です。ドイツの介護保険法は1994年4月に成立しており、日本に約6年ほど先んじています。このため、参考になる部分も多く、介護保険法の研究対象となっています。

ドイツの介護保険法には、介護のあり方について(1)在宅介護の優先(2)予防とリハビリの優先(3)行政・施設・介護財政の共同責任、という3つの柱が明記されています。このあたりは、日本の介護保険法にとても良く似ています。ドイツには、日本の介護休業に相当するものもあります(あまり利用されていないところまで似ています)。

制度上の違いの一つとしては、ドイツの介護保険は、医療保険との連動性が高いものになっていることでしょう。日本の場合は、介護保険は、医療保険とは独立したものとして管理・運用されています。医療との連携がうまく行っているとは言えない日本としては、ここはとくに参考とすべきところかもしれません。

財源に苦しんでいるのは、ドイツも同じです。要介護者の数も、今後、どんどん増えるというところも、日本と同様です。ただ、ドイツのほうが、日本よりも要介護認定の基準が厳しく、日本の基準からすれば、要介護者数は実際よりも少なく出てきます。このあたりは、今後、日本の要介護認定が厳しくなるときの根拠にされそうです。

ドイツでは介護家族にも介護労働の対価が支払われる!

ドイツの場合は、介護されている要介護者に対して支払われる給付金が、介護のプロ(介護事業者)を使っている場合だけではありません。ドイツでは、この給付金は、実際に介護をされていれば、親族や友人といった介護のアマチュアがそれを担っていても支払われています。

実際に給付金が渡るのは要介護者になりますが、世帯という単位で考えれば、これは画期的にも思えます。実質的には、ドイツでは、介護をする家族(介護家族)にも、介護労働の対価が支払われているということだからです。

ドイツでは、家族が介護をするということが公的に後押しされているのです。この部分はしかし、批判される可能性もあります。「介護の責任を家族ではなく社会に置く(介護の社会化)」という理想に反するからです。とはいえ、ドイツ国内では、この点に関する批判よりもむしろ、支払われる給付金が少ないという批判のほうが多いようです。

ただ、家族に介護をする金銭的なインセンティブ(動機付け)が与えられていますから、家族は、そうそう介護のプロに仕事を依頼しなくなるでしょう。そうなると、介護のプロは、本当に必要なところだけで活躍するようになり、介護保険の財源も(日本ほどには)痛まない可能性も出てきます。

日本もドイツのように介護家族に給付金を支払うべきか?

ここは難しいところです。介護家族は、給付金を支払われたほうが嬉しいでしょう。ただ、これは結果として、介護のプロの市場を小さくします。それは、介護を国の輸出産業として育成しようとする場合は、マイナスに働きます。新規参入が少なくなり、競争も緩やかになるからです。

また、介護家族に給付金が出てしまうと、介護離職も増加してしまいます。そうなれば、本来であれば、仕事をして税金を納める立場にあったはずのビジネスパーソンからの税金が国庫に入ってこなくなります。これは、国の厳しい財源のことを考えると、現実にはなかなか取れない戦略です。

そして不正受給の問題もあります。生活保護でも、不正受給の問題は根深く、貧困ビジネスに直結しやすいのです。ほとんど介護をしない人が、要介護者からお金を巻き上げるようなことも起こりかねません(違法の介護ハウスなどで、すでに一部起こっているようですが)。

結論としては、ドイツの介護保険制度は、参考になるところも多いのですが、そのままコピーするには問題もあるということです。ただ、医療保険と介護保険の連動については、見習うべきところかもしれません。ドイツではなく、デンマークのように、医療や介護に従事する人の公務員化(準公務員化)のほうが、検討に値するように思います。

※参考文献
・独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT), 『ヨーロッパの育児・介護休業制度/ドイツ介護保険制度における介護者の支援』, 資料シリーズNo.186, 2017年3月
・池田 心豪, 『イギリス・ドイツにおける仕事と介護の両立支援』, 厚生労働省雇用均等・児童家庭局, 平成27年3月20日

KAIGOLABの最新情報をお届けします。

この記事についてのタグリスト

PR