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高齢者によく見られる運動系のトラブル(病気)について

高齢者によく見られる運動系のトラブル(病気)について

骨格のはたらきについて

骨格は、私たち人間の外観の基本となるものであり、また、内臓を保護する役割も担っています。骨格は、骨、軟骨、靭帯(じんたい)、腱(けん)、関節からできています。また、骨格につながっている筋肉をとくに骨格筋といいます。人間は、こうした骨格と骨格筋によって、様々な運動を行っているのです。

ここで、人間の運動系のトラブル(病気)につながるのは、とくに骨格の部分であるという認識が求められます。もちろん、全身の筋肉がなんらかの病気に犯されるということもありますが、それらは比較的まれな病気です。多くの運動系のトラブルは、骨格で発生しているのです。

骨格は外観をつくるものであるだけに、なんらかの病気がある場合、それが外から観察しやすいという面があることは重要です。歩き方がおかしい、歩行速度に変化があった、立ち上がるのが辛そう、といったことが認められる場合、医師への相談が必要になります。

高齢者によく見られる運動系のトラブル(病気)

こうした骨格に関連する、高齢者によく見られる運動系のトラブルについて、以下、参考文献(黒澤, 2013年)をみながら、簡単にまとめてみます。なお、ここでの記述は、KAIGO LAB にて、内容を一部改変、修正、追記しています。気になる場合は、原典をあたってください。

病名
特徴
心がけるべきこと
骨粗鬆症 栄養的要因(カルシウムやビタミンDの不足)と身体的要因(運動不足)、疾患(腎臓病や肝臓病)などが複合的に重なって進行してしまう。 乳製品(カルシウム)を含む食事、適度な日光浴(ビタミンD)、日常的な運動などをしつつ、転倒しないような工夫に努める。
大腿骨頸部骨折 ほとんどが骨粗鬆症のある高齢者が転倒することで発生する。倒れたときに、大腿部(ふともも)の側面を打ってしまうと、骨折の危険性が極度の高まる。 若年者の骨折とは異なり、痛みがなく、本人にははっきりと骨折が自覚されないことがあるので注意。骨折した下肢は外側を向く傾向がある。
転倒 筋力やバランス力の低下、視聴覚のおとろえ、床面や室温といった住環境が原因となる。また、転倒を頻繁に起こす病気もある。 まったく同じ動作であっても、体調や気分、時間帯や室温といった条件のわずかな違いによっても危険性が変わってしまうところが難しい。
変形性関節症 加齢にともなって関節の変形がおこり、関節を動かせる範囲が正常ではなくなる。関節面が接触する場合は、痛みがおこり、それを避けるようにして、さらに関節が動かせる範囲が異常になる。 気温や湿度といった環境要因によっても、症状が変化する。体重増加や筋力低下などにより、痛みが悪化することも多い。
変形性頚椎症 加齢によって、首の骨や神経でできている頚椎(けいつい)に異常が生じて、様々な運動障害が現れる。 症状が悪化してきたら、変形した骨を削ったり、スペースを広げるような手術が必要になる。
腰部脊柱管狭窄症 加齢によって脊柱(背骨)の変形がおこり、長く歩いたりすると痛みが自覚されるようになる。 腰痛、足のしびれ、足の痛みといった形で症状が見られる。ここから重大な病気に発展することは少ないが、痛みが強すぎる場合は、整形外科における手術が必要になる。
関節リウマチ 組織を自分で破壊してしまう物質が生産される、免疫系の異常が原因。手の指や膝(ひざ)などの関節の痛みをともない、関節の変形なども見られる。 朝に手がこわばったり、運動すると関節が痛くなるといった症状が見られる。進行すると、関節、軟骨、骨までも異常をもつようになり、生活全般に影響を与える。

運動系のトラブルは死に直結しないからこそ

こうした運動系のトラブルは、直接的には、死に直結するような病気ではありません。そのため、周囲が、こうした運動系のトラブルを疑っていても、本人が痛みを訴えない限り、放置されやすいという特徴があります。

しかし、運動系のトラブルは、長く放置されていると、悪化するものです。しかも、痛みをともなうため、QOLそのものを低下させてしまうのです。

人間は、生きてさえいればよいものではありません。生きていても、ずっと痛みとともにあるのは、あまりにも苦しいものです。そして、痛みの感じ方には個人差もあります。死ぬことよりも痛みのほうが辛いというケースさえあるのです。

痛みというのは、本人にしかわからないし、周囲からは想像しにくい典型的なものです。また、特に男性の場合は、痛みを訴えるのは恥として、我慢してしまうこともあります。その結果として、出歩くこともできなくなり、要介護度が上がってしまえば、困るのは本人だけではありません。

たとえ、本人が嫌がったとしても、なんとか医師に診断してもらう必要があります。放置しておけば将来どういうことになるか、先の表などを参考にしつつ、本人と話しあってみることが、突破口になるかもしれません。

※参考文献
・黒澤 貞夫, et al., 『介護職員初任者研修テキスト』, 中央法規, 2013年

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