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少子高齢化社会では、本は売れなくなる?読者ではなくなった高齢者が、著者になる未来に向けて

少子高齢化社会では、本は売れなくなる?高齢者が著者になる未来に向けて

少子高齢化社会で進む読書離れ

日本では「1ヶ月に1冊も本を読まない」という人が、2002年度では37.6%だったのが、2013年度には47.5%にまで高まっています(文化庁の調査結果)。ほとんど半数の人が、1ヶ月に1冊も本を読まない状態にあるのです。特に高齢者の場合は、この割合が高くなっているようです。

この背景としては、当然、読書以外にも楽しめるエンターテインメントが増えていることもあるでしょう。しかし、高齢者という視点からすると、老眼などの影響によって、そもそも読書することが厳しいということもあります。

出版業界は、こうした読書離れを食い止めるための努力をしています。しかし、読書離れにつながる老化という現象は、止めようがありません。少子高齢化社会というのは、本が売れない社会でもあるのでしょう。出版業界は、これまでと同じビジネスモデルの通用しない未来に向けて、大きな変化を求められているのです。

時代の変化というのは、残酷なものでもあります。移動手段として馬が使われていた時代には、馬の専門家が多数必要でした。しかし、そこに自動車社会が登場したことで、馬の専門家の多くは、職を失ったのです。これと同じようなことが、今、出版業界に起ころうとしています。高齢化と電子書籍の登場です。

本を書く側も変化しつつある?

アメリカでは、電子書籍の台頭によって、既存の大手出版社を「中抜き」にした出版が急成長しているようです。以下、NewSphereの記事(2017年3月26日)より、一部引用します(改行位置のみ、KAIGO LABで修正)。

(前略)2016年2月までの23ヶ月で、アメリカ大手5社は電子書籍の冊数・販売金額ともにシェアを下げ、インディーズ出版(個人に近い著者の出版物)のシェアが金額で25%程度にまでに高まっている。

その背景にはAmazonのKindle(電子書籍リーダー)があり、「Kindleダイレクト・パブリッシング」が個人の電子出版の受け皿になっているようだ。同サービスは、パソコンで作成した文章をKindleのフォーマットに変換する仕組みを提供しており、全世界のAmazonで販売することができる。

価格は著者が自由に決められ、売上の最大70%が著作料となる。従来の自費出版は版下作成・印刷費を含め百万円を超える投資となるので、リタイアした世代など資金的な余裕のある人達に利用は限られていた。電子書籍の自費出版は広く門戸を広げることになるだろう。(後略)

長期的には、既存の大手出版社は、その存在意義を失っていくと思われます。過去には、著者と読者の間に、優れた編集者がいることで、本の信用が高まった時代もありました。しかしこれからは、本の信用は、人工知能などが判断していくようにもなるでしょう。

読者は減るが、著者は増える未来へ

本の読者が減っていく流れは、そもそも、人口が減少する社会では必然です。老眼に悩む高齢者でも楽しめるエンターテインメントも増えていく流れの中では、既存の大手出版社の経営は、加速度的に悪化していくことでしょう。

これは、既存の大手出版社にとっては厳しいことです。しかし、本をめぐる文化という目線から考えたとき、これは、必ずしも悲観的なことではありません。読者は減りますが、著者は増えていく方向に変わっていくからです。

そもそも、文化への貢献という視点で考えてみると、受け身(消費者)であるよりも、作り手(生産者)であるほうが良いはずです。ゆっくりとしたペースであっても、日本でも電子書籍が台頭してくれば、アメリカのように、作り手が増えていくのです。

間に立っていた出版社がいなくなることで、現在では10%を下回る著作料が、最大で70%にまで高まるという点も見逃せません。著者としては、7分の1の読者数さえ確保できたら、これまでと同じ利益が得られることになるからです。また、自動翻訳の技術が進めば、日本人だけが読者になるわけではありませんから、読者の数も増える可能性があります。

老眼が進んでいたとしても、音声認識の技術が発展していけば、人工知能が「聞き書き」をしてくれるようになります。そうなれば、少なからぬ高齢者が、気軽に、著者として本を出版できる時代がやってきます。これは、介護という文脈からしても、かなり高度な社会参加であり、とても良いことでしょう。

そもそも出版とはなにか

そもそも出版とは、コピー技術の発展によって、それまでは富裕層だけの楽しみだった読書というエンターテインメントを、一般にまで広めることでした。ですから本来の出版社は、コピー技術の発展を進めることで、コピー単価(コピーにかかる費用)を下げていくという使命を担っていたのです。

コピー単価が実質的にゼロである電子書籍は、その究極の形です。ですから、この大きな流れは、出版がなくなっていくというものではありません。単に、紙に印刷されてきた本というメディアが、その形を変えつつあるというだけのことです。

これによって、古いビジネスモデルに依存した出版社は無くなっていくのかもしれません。しかし、出版それ自体がなくなることは、未来永劫、ないでしょう。そう考えたとき、出版社の中には、生き残るどころか、より大きな利益をあげる会社も出てくると考えられます。ここで鍵になるのは、読者が著者になっていくという変化をとらえることができるか、という視点ではないでしょうか。

※参考文献
・NewSphere, 『1ヶ月に1冊も本を読まない人は約半数、進む読書離れ…電子書籍市場は拡大も』, 2017年3月26日

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