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東京の医療が崩壊する?それが「日本版CCRC構想」の実現を後押しする可能性について

東京の医療が崩壊する?それが「日本版CCRC構想」の実現を後押しする可能性について

病院の経営について

病院の経営は、そのコストの50〜60%が人件費です。これに対して病院の売上は、その品質によらず(治療の内容のみに応じて)全国一律で決められています。医師1人あたりの売上には(専門性による差異はあるものの)全国で大差ないと考えて差し支えありません。

となると、病院の経営成績を決めるのは、コスト削減だけということになります。このとき、東京は、地方よりも不利になります。理由は、東京の地価が高いことと、東京における看護師の人件費が高いことにあります。

まず、地価が高いと、病院のスペース確保のためのコストが高くなります。また、人件費の面からは、人数的には看護師が多い(常勤医師の4倍程度)というところが大事です。そして、東京における看護師の人件費は、地方よりも10〜20%高いという事実があります。

看護師を確保できないと、病院になりません。ですから、地価と人件費のしわ寄せは、医師の給与に跳ね返ってきます。大学病院に勤務するベテラン医師の給与が、手取りで40万円というケースも珍しいものではないと言います。

消費税率を上げると、東京の病院が倒産する?

東京における病院の経営は、すでに非常に苦しい状態にあります。大きな病院は、のきなみ赤字です。この状態で消費税率を上げると、東京において、病院の倒産が急増する可能性があります。

ここは意外と盲点なのですが、病院の経営において、医薬品や医療機器の購入には消費税がかかります。しかし、患者に適応される診療費には、消費税がかかりません(今後かかったとしても、全国一律であることは変わらない)。このスキームでは、消費税率を上げると、病院は支出が増えるだけで、収入は変わらないことになります。

そして、医薬品や医療機器の単価は、技術革新とともに、上昇を続けています。すると、消費税のインパクトもまた、大きくなってしまうのです。このままいけば、今のところはお金を貸し付けてくれている銀行が、東京の病院への貸し付けをやめるのも時間の問題なのです。

地方の病院のほうがリソース的に有利?

逆に考えると、医師としては、地方のほうが待遇がよいことになります。地方であれば、医薬品や医療機器も、最先端のものを購入することが可能です。医師としても、最先端に近いところにいれば、病理研究もはかどるでしょう。

それでも、東京に医師が残っているのは、パートナーが東京にいることを望んでいたり、子供の教育だったり、周辺の事情があるからです。しかし、今後もさらに病院経営が悪化していくとするなら、医師の東京離れも加速するでしょう。

すでに東京では、病院の経営に余裕がないので「どんな病気でも診療します」という状態になるか、逆に「診療単価の高い病気しか診療しません」という極端な状態が生まれています。その点でも、地方のほうが、リソース(ヒト、モノ、カネ)に有利な病院の経営ができるのです。

地方の病院は、こうした状態をよく知っています。そのため、東京からの医師の引き抜きも盛んに行われています。東京への一極集中と言われて久しいですが、少なくとも医療という切り口からは、地方への人材の分散が起こっているのです。

日本版CCRCにおける隠れた合理性

介護もまた、医療と同じように、報酬は(ほぼ)全国一律で決められています。地価と人件費がコストの大半である点も同じです。であるならば、介護においても、東京から地方への人材の分散があるとみて間違いありません。

高齢者になって、病気がちになったら、東京を離れたほうがよいかもしれないのです。ここに、東京に暮らす高齢者に、地方に移住してもらうことを前提とした日本版CCRC構想がはまる可能性があります。

当然ですが、高齢者にとって、住み慣れた土地を離れるのは、簡単なことではありません。慣れない土地で暮らすことで、閉じこもりがちになるというリロケーション・ダメージもありえます。それでもなお、医療や介護からすれば、地方のほうがよいという状態は、日本版CCRC構想の実現に対して、追い風になる可能性もあります。

※参考文献
・全国公私病院連盟, 『平成26年 病院運営実態分析調査の概要』, 平成27年3月11日
・上 昌広, 『東京の医療が崩壊の瀬戸際 看護師不足、病院赤字で報酬カット…医療事故増加の懸念』, Business Journal, 2015年10月10日

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