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認知症の「早期診断・早期対応」は正しく遂行されているのか?(ニュースを考える)

認知症の「早期診断・早期対応」は正しく遂行されているのか?(ニュースを考える)

認知症の早期診断について

認知症は、誰もに発症する可能性のあるものです。ですから、認知症になっても、本人やその家族が、少しでもそれまでの生活を維持できるように、認知症の「早期診断・早期対応」が重要になってきます。これは、国が進める「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」の中でも、大切な柱としてかかげられているものです。

認知症であっても、初期状態のうちにきちんとした診断を受けると、本人の意志を反映した適切な医療や介護がアレンジできます。認知症とともに生きる生活を整えることで、BPSD(認知症に伴う行動心理症状)がおさえられます。また、その家族も、認知症に対する正しい知識をもって、本人との生活を描くことができるようにもなります。

しかしながら、この「早期診断・早期対応」について、その理想がきちんと遂行されるかどうか、心配されるニュースが入ってきました。以下、朝日新聞の記事(2017年2月18日)より、一部引用します。

高齢ドライバーの認知症対策を強化した改正道路交通法が来月12日、施行され、医師の診断が義務づけられる人が一気に増える。安全対策が一歩前進するが、認知症診療拠点の医療機関を朝日新聞社が全国調査したところ、回答した73機関の8割超が受診者急増による「診断の遅れ」と「専門医不足」に懸念を示した。診療体制の整備が進まないと、認知症のドライバーの免許取り消しが遅れるだけでなく、一般の人を含む患者の診断・治療が遅れるおそれがある。(中略)

認知症は症状進行を抑えるため、早期発見・早期治療が大切とされるが、受診者増の影響で診察を受けるまでの予約待ち期間が長期化し、診断が遅れることについて、84%の計61機関が「懸念がある」「やや懸念がある」と答えた。新規患者の予約待ち期間は、29%の21機関が現状も平均1カ月程度かそれ以上かかっているとした。(後略)

医療職も介護職も足りていない

高齢ドライバーの交通事故が相次ぐ中、認知症の診断を高齢ドライバーに課すことは大切なことでしょう。ですが、それにより、すでに認知症の疑いが有り、早期診断が必要な人たちに、大きな影響が出てしまっているのです。

つまり、せっかく家族や地域の人々が、本人の認知症に気づいたり、本人自ら診断を受けようとしても、長期間待たされる可能性があります。この背景には、激増する高齢者に対応するには、医療職の数が足りないということがあります。

また、仮にきちんと診断ができたとしても、介護職も不足しているため、理想的な対応ができる状態にはありません。それでも、超高齢化、認知症の増加、老々世帯・単身高齢者世帯の増加は、待ったなしで進んでいくのです。

認知症ケアの理想は共有されているのか?

国は、地域包括ケアシステムの名のもと、住み慣れた地域で暮らし続けることができる日本社会を築こうとしています。この理想はすばらしいものですし、実現可能性もあると考えています。しかし、今の日本の社会は、本当にこの理想に向かっているのでしょうか。

選挙では「特養(特別養護老人ホーム)と保育所を増やす」という公約をかかげる政治家が増えてきています。政治家が介護に興味を持つことは大切なことです。しかし、多くの人(7割以上)にとっての介護は、特養のような施設の中で行われるものではなく、自宅(在宅)で行われるものです。

一見、特養を増やすのは良いことのように思えるかもしれません。しかし、このために自宅で介護サービスが受けられるようにするための整備が後回しにされてしまうなら、問題です。要介護者だからということで、住み慣れた自宅から切り離して施設に入れるというのは、あまりにも短絡的です。

もちろん、特養も必要です。ただそれは、地域包括ケアシステムの理想とは別の話です。社会福祉におけるノーマライゼーションの理想からも乖離しています。日本の政治家は、それを理解した上で、公約をつくっているのでしょうか。どうしても疑問に思ってしまいます。

※参考文献
・朝日新聞, 『高齢ドライバーの認知症診断の診断、体制脆弱で懸念の声』, 2017年2月18日
・厚生労働省, 『認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン) ~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~』

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